小菅努の商品アナリスト日記

マーケットエッジ(株)代表/商品アナリスト・小菅努の公式ブログです。コモディティ市場をカバーしています。

金融機関、商社、事業法人、ベンダー様向けにマーケット分析情報の配信業務を行っています。コモディティ市場のレポート配信サービス(法人向け)、寄稿・講演のご依頼などは、下記E-Mailまでお問合せ下さい。

マーケットエッジ株式会社 https://www.marketedge.co.jp/
E-mail  kosuge.tsutomu@outlook.com

OPEC

OPECは需要見通しの修正せず、IEA事務局長は原油価格の安定見通し

【原油】
石油輸出国機構(OPEC)月報が公表されましたが、2024年の世界石油需要見通しの修正は行われませんでした。23年が前年比で日量246万バレル増だったのに対して、24年は225万バレル増になっています。また、今回は初めて25年の見通しも発表されましたが、185万バレル増となっています。需要が過去最高を更新し続ける見通しですが、原油需要の伸びは徐々に鈍化する方向性が想定されています。


無題

少なくとも産油国の増産対応が間に合わなくなるようなリスクは限定されそうです。非OPECの産油量見通しは、23年が208万バレル増、24年が134万バレル増、25年が127万バレル増の予想です。徐々に増産ペースは鈍化する見通しですが、それでもOPECが減産解除(=増産)を行うことが可能な余地は限定されそうです。OPECにとっては、なかなか政策調整を止めることができない厳しい環境が続くことを示唆する報告内容になっています。


一方、国際エネルギー機関(IEA)のビロル事務局長はダボス会議において、今年の石油需給が均衡化することで、原油価格の大きな変動は起きないとの見方を示しました。あくまでも中東情勢がエスカレートしないとの前提条件付になりますが、今年は極端な需給の歪みが想定されていません。


石油市場、今年は「より均衡」 紅海の混乱でも=IEA事務局長

「市場には十分な原油があるため、原油価格に大きな変化はないと想定している」

この辺の認識が正しければ、今年の原油相場はボックス傾向が強い展開になりそうです。




プラチナ市場の内部要因環境に変化、ファンドは底入れ判断か

【プラチナ】
プラチナ市場で、ファンドの買い圧力が強くなっていることが確認できました。米商品先物取引委員会(CFTC)のCOTレポートでは、12月26日時点で買いポジションが前週比4,019枚増の4万4,404枚、売りポジションが同2,645枚減の2万0,742枚となっています。

無題
(出所)CFTC

最近のプラチナ相場の傾向としては、反発してもショートカバーのみであり、新規で買いポジションを構築することは躊躇されました。高値を売り込み、安値でショートカバー(買い戻し)というのがこれまでのパターンでした。

しかし、950ドルの抵抗を上抜いたことで、ファンドが底入れの可能性を意識して買いポジションを構築し始めた模様です。その後、プラチナ相場は950ドルに続いて1,000ドルの節目馬上抜きましたが、これまでの戻り売り再開のパターンが崩れると、本格的な上昇期待が強まります。

チャート環境と連動して内部要因環境の改善も確認できるデータになりました。

無題


無題
NYMEXプラチナ先物相場(日足)


【原油】
2023年は、石油輸出国機構(OPEC)加盟国の減産、非加盟国の増産と世界は二分しました。OPECにとっては、非OPECの増産を眺めて逆に減産対応を迫られる厳しい環境になりました。

Reutersは、2024年前半のOPEC産原油の市場シェアが27%弱と、2020年以来の低水準になるとの見通しを示しています。アンゴラのOPEC離脱とOPECプラスとしての協調減産の影響が指摘されています。

2024年もOPEC加盟国の減産、非加盟国の増産が続くのであれば、程度の違いはあってもOPECの市場シェアは低下し、それが石油市場への支配力を低下させる悪循環に陥ります。

OPECの世界石油市場シェア、24年前半に4年ぶり水準に縮小の見通し

「世界の石油需要が加速するか、OPECが原油価格低下を容認しない限り、減産緩和に踏み切るのは難しい情勢だ」

需要が拡大してOPEC加盟国と非加盟国がともに増産可能な環境が理想的ですが、そうならない場合には、1)原油価格の下落を容認する、2)減産で市場シェアを更に失うと、どちらにしてもOPECにとっては受け入れがたい不都合な未来しか存在しません。

OPECとしてはOPECプラスの枠組み拡大も選択肢になりますが、敢えて協調減産に参加しようとするような国はありません。11月30日の会合でブラジルがOPECプラスの協力憲章に参加することが表明されましたが、ブラジルはあくまでも対話と意見交換のためとしており、協調減産には参加する義務がないことを確認しています。

ブラジル、OPECプラスの協力憲章に参加へ-拘束力なし
2024年の原油需給バランスを安定化させるためのハードルは高くなっています。これは、価格に対して下振れリスクとして機能することになります。


【お知らせ】
大阪取引所のウェビナーの動画がYoututeで公開されました。12/16(土)開催分です。金、原油、トウモロコシ相場について、初心者向けの内容で構成しています。よろしければご覧ください。

コモディティ ・ マーケットの分析と2024年の展望
https://www.youtube.com/watch?v=auB2uLG2yDM


アンゴラがOPEC脱退を表明、産油国カルテルOPECはどうなる?

【原油】
アフリカの産油国、アンゴラが石油輸出国機構(OPEC)からの脱退を表明しました。

アンゴラ、OPEC脱退-原油生産枠に反発し16年の連盟見限る
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-12-21/S60O71DWLU6800

アゼベド鉱物資源・石油相は、OPEC加盟の利益がないと指摘しています。OPECの協調減産体制に対してアンゴラは不満を強めており、生産協定に縛られないフリーハンドを確保したことになります。

Several OPEC+ countries announce additional voluntary cuts to the total of 2.2 million barrels per day

36th OPEC and non-OPEC Ministerial Meeting
11月30日の会合で協調減産の強化ではなく自主減産に留まったことで、OPEC内に不協和音が発生していることは躊躇されていましたが、決め手になったのはアンゴラの2024年の生産枠引き下げでしょう。第三者機関のアセスメントによるものですが、アンゴラの不満が爆発しました。

アンゴラに大規模な増産能力はないとみられるため、短期的な需給環境に影響はほとんどないでしょう。将来的にアンゴラが本当に増産能力を有するのかは、今後の投資状況に依存します。

それより問題なのは、アンゴラの脱退をきっかけにOPECに亀裂が走ってしまうことでしょう。幾ら減産しても原油価格が上昇しないことで、減産の「コスト」と「利益」のバランスが取れているのか疑問視される状況になっています。第二、第三のアンゴラが出てくると、OPECはその歴史的役割を終えてしまう可能性もあります。


アンゴラ、OPEC脱退 「自国の利益にならず」と石油相
https://news.yahoo.co.jp/articles/61c54d02ff8bb24b7ba0b85afd66dd3668f69337
 
Yahoo!ニュースのこの記事には、Expertコメントを書きました。


【銅】
2023年の銅相場は、値崩れこそ起こしませんでしたが、上値の重さが目立ちました。脱炭素社会の重要な貴金属として注目度は高かったものの、中国経済が予想外の停滞を迫れたこともあり、価格は総じて年前半にピークを付け、その後は上値の重さが目立ちました。

無題
LME銅相場(3ヵ月物)

日本経済新聞に資源大手BHPグループの最高商務責任者(CCO)パント氏のインタビュー記事が掲載されましたが、銅相場の現状と将来を考える上で参考になります。

銅価格の見通しは 需給ミスマッチで上昇も
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO77165310R21C23A2ENG000/

現状については、「銅は今後2~3年はやや供給過多になると見ており、現状の軟調な推移も驚きはない。」としています。一方、将来については「その後は脱炭素関連需要が増えて構造的な供給不足に陥り、解消されないとみる。」としています。

つまり足元の需給緩和、将来の供給不足を見込んでいます。現状では中国経済の停滞もあって需給バランスは緩和状態にありますが、これから脱炭素関連の需要が増えれば、一時的ではなく構造的な供給不足に移行するとの見方になります。

このため、BHPは「我々はここに商機があると判断し、銅資産へ投資してきた」と、現在から投資を行っている訳です。構造的な供給不足状態に陥ってから投資を開始しても間に合いません。その時の需要にしっかりと応えるための投資が現在行われている訳です。過剰投資のリスクには注意が必要ですが、最近の価格低迷状態を見る限りだと、寧ろ投資の遅れが警戒される状況です。長期目線での銅・銅関連資産投資は有望でしょう。

銅関連株だと、総合商社以外にもアルコニックス(3036)、三菱マテリアル(5711)、住友金属鉱山(5713)、DOWAホールディングス(5714)などがあります。また、銅価格に直接投資するものとしては、WisdomTree 銅上場投資信託(1693)もあります。

月別アーカイブ
記事検索
 
QRコード
QRコード
プロフィール
小菅 努(こすげ つとむ)

1976年千葉県松戸市生まれ。筑波大学第一学群社会学類卒。商品先物・FX会社の営業本部、ニューヨーク事務所、調査部門責任者等を経て、現在はマーケットエッジ(株)代表取締役。商品アナリスト。貴金属、金属、エネルギー、ゴム、農産物などの商品先物市場全般が主なカバー対象です。商社、事業法人、金融機関向けに分析レポートを配信しています。為替、株価指数などもカバーしています。

【URL】
マーケットエッジ株式会社

【E-mail】
kosuge.tsutomu@outlook.com

【SNS】
Twitter

【連絡先】
E-mailでお願い致します。相場動向に関する質問への個別対応は行っていませんのでご了承下さい。
小菅努のコモディティ分析
小菅努のコモディティ分析 ~商品アナリストが読み解く「資源時代」

会員制の有料メルマガです。コモディティの基礎知識から専門的な分析まで提供しています。1,944円/月、週2回以上の発行です。

詳細や購読のお申し込み方法は
https://foomii.com/000255
をご覧下さい。
寄稿/出演
【東京金融取引所】
原油ETF証拠金取引ウィークリーレポート

【ゴム報知新聞】
「マーケットアナリティクス」

【ラジオ日経】
マーケット・トレンドDX

【ストックボイス】
JPXデリバティブ・フォーカス

【Youtube】
ウィークリーゴールド

寄稿/出演/講演等のお問い合わせはマーケットエッジ株式会社まで
Twitter