小菅努の商品アナリスト日記

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大豆

アルゼンチンで熱波、安値修正を打診する穀物相場

【穀物】
ブラジルの降雨報告で急落していた穀物相場が下げ一服となっています。単純な売られ過ぎ感もありますが、とうもろこしと大豆相場がともに切り返しています。

新たな売買材料として浮上してきたのが、アルゼンチンの熱波です。

アルゼンチンで40℃超の猛暑続く
23日(火)には42.6℃の記録的な高温

エルニーニョ現象の影響でブラジルでは干ばつ傾向が報告されていましたが、ブラジルに関しては降雨によって緊張感が薄れています。このタイミングで、アルゼンチンで熱波が発生しています。

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【CBOTとうもろこし先物相場(日足)】

アルゼンチン産が不作になれば、当然に国際需給見通しは大きく変わります。アルゼンチン産の調達を予定していた需要家が、米国産の調達に切り替える可能性も浮上するでしょう。天候相場期のため、アルゼンチンの天候リスクが本物か否かが問われています。
 

穀物相場の低迷、ブラジルの降水量予報はどうなっている?

【穀物】
シカゴ穀物相場の低迷が続ています。とうもろこしは2020年12月以来、大豆は21年12月以来の安値を更新しています。最大の要因は、ブラジルの降雨見通しです。今季は干ばつ傾向が強いものの、降雨によって土壌水分環境が改善していけば、作柄へのダメージは限定できるとの思惑があります。

GRAINS-Corn, soy hit multi-year lows as oil sinks, rains aid Brazil crops

"After dryness in Brazil in November and December, Brazil's crop weather is improving and the debate will be about how much larger the crop will be," said Matt Ammermann, StoneX commodity risk manager.

11月と12月の乾燥後、ブラジルの天候が改善しています。

実際の降水量予報を見てみましょう。まずは1月8~14日です。比較的まとまった降雨が予想されています。

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次に15~21日です。少し降水量は減りますが、干ばつが警戒されるような予報にはなっていません。

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ブラジル産の大量供給が見込まれる状況になれば、必然的に中国など需要家は米国産の調達を抑制することも選択肢になります。ブラジルの天候改善で売り、米国産の輸出鈍化で売りと、二段階構成になります。

気象予報次第で地合は一変する可能性がありますが、ブラジル降雨の一点で売り込む地合が続いています。この地合を変える動きの有無が焦点になりますが、1月12日に米農務省(USDA)が需給報告と四半期在庫(12月1日時点)を発表します。この二つの統計がイベントリスクになります。

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CBOTとうもろこし先物相場(日足)


東京金融取引所のWeekly Reportです。よろしければご覧下さい。
原油ETF証拠金取引:2024年01月09日号


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ブラジルの降雨予報の上値圧迫が続く穀物相場

【穀物】
年初の取引でシカゴ穀物相場が急落しています。年末年始のブラジルで降雨が観測されたことが嫌気されています。とうもろこし3月限は一代安値を更新しました。



StoneXは、ブラジルのトウモロコシと大豆生産高見通しを引き下げています。降雨が観測されているとはいえ、高水量が例年を大きく下回っていることで、厳しい生産環境にあることには変わりないとの評価です。

StoneX no longer sees record soybean crop in Brazil in 2023/24

しかし、マーケットでは単純にブラジルの降雨の有無が重視されている以上、気象予報次第の地合が続くことになります。乾燥予報に変わる見込みで押し目を買い拾うのか、降雨継続を見込んで戻りを売り込むのかの対応ですが、現在のトレンドは依然として下向きです。

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CBOTとうもろこし先物相場(日足)


1月4日の大発会前。今日は一日原稿仕事でした。かなりの分量で疲れました。


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中国が食料安保を強化か、ついに遺伝子組み換えの生産開始に向かう

【穀物】
中国が食料安全保障を強化していることが窺えます。米国産大豆にとっては、需要抑制要因として注意が必要な動きです。

中国、1─11月飼料の大豆ミール使用11%減 食料安保強化で

中国政府統計によると、1~11月期の大豆ミール需要は前年同期から11%、444万トン減少しました。2023年の飼料需要は前年の14.5%から1.5%低下する見通しですが、大豆換算で910万トンの需要減少要因です。飼料分野で大豆ミールの使用を削減し、他の油脂植物や乾燥蒸留粕(DDGS)の使用を増やしている模様です。大豆(大豆ミール)は輸入依存度が高いこともあり、飼料項目の分散が図られています。

中国、遺伝子組み換えトウモロコシと大豆の種子会社承認

 一方、中国政府は遺伝子組み換えのとうもろこしと大豆の趣旨について、生産・流通・販売を認める企業を発表しました。中国政府は遺伝子組み換えに慎重姿勢を維持し、輸入に際しても厳格な管理を行っていましたが、ついに国内企業に遺伝子組み換え関連商品の提供を認めることになります。

どの程度のペースで普及するのかは不明ですが、米国内のとうもろこしや大豆生産量が上向けば、必然的に海外からの輸入量が削減される可能性が高まります。

これら二つの動きがリンクしているのか断定はできませんが、食料安全保障の強化が急がれていることが強く窺えます。これがウクライナ産の供給抑制の影響か、米中関係悪化の影響か、更には台湾有事に備えた動きかは分かりませんが、中国のこうした取り組みが成功すれば、世界の穀物市場は安定供給を確保できる可能性が一段と高まります。


【穀物】
12月26日のシカゴ穀物相場は小麦を中心に堅調に推移しました。年末前の持高調整の影響もありますが、ウクライナ情勢が久し振りに材料視されています。

ウクライナ軍、ロシアの大型揚陸艦を破壊と発表 巡航ミサイルを使用

ウクライナがクリミアでロシア軍の強襲揚陸艦を破壊し、黒海の戦闘激化が警戒された模様です。クリミア半島付近での戦闘が激化すれば、必然的にウクライナとロシア双方の穀物輸出が影響を受ける可能性が高まります。

最近の傾向として、こうした地政学リスク絡みの買いは一時的なものに留まる傾向が強いものの、注意は必要でしょう。

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CBOTとうもろこし先物相場(日足)


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プロフィール
小菅 努(こすげ つとむ)

1976年千葉県松戸市生まれ。筑波大学第一学群社会学類卒。商品先物・FX会社の営業本部、ニューヨーク事務所、調査部門責任者等を経て、現在はマーケットエッジ(株)代表取締役。商品アナリスト。貴金属、金属、エネルギー、ゴム、農産物などの商品先物市場全般が主なカバー対象です。商社、事業法人、金融機関向けに分析レポートを配信しています。為替、株価指数などもカバーしています。

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