小菅努の商品アナリスト日記

マーケットエッジ(株)代表/商品アナリスト・小菅努の公式ブログです。コモディティ市場をカバーしています。

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利下げ

1月NY連銀製造業指数はリセッション時並みの厳しい数値に

【金】
NY連銀製造業指数が急激に悪化しました。12月の-14.5が1月は-43.7まで急低下しています。

NY連銀製造業景況指数、1月はマイナス43.7に低下-予想マイナス5

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過去にこのレベルの低い数値が発表されたのは、パンデミックや世界同時金融危機など、リセッションが発生した時のみです。通常時にこれだけ厳しい数値が発表されるのは異例です。

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受注残が-11.3から-49.4、出荷が-6.4から-31.3まで、それぞれ大幅に悪化しています。これが1ヵ月の異常値であれば大きな問題はありませんが、明確な理由が見当たらないだけに、米景気減速のシグナルの可能性も想定しておく必要がありそうです。

6ヵ月先の見通し指数は+12.1から+18.8まで改善しているため、先行きに対して急激に慎重な見方が強くなっている訳ではありませんが、後にこれが米経済減速の最初のシグナルだったと評価されることもあり、暫くは低調な経済指標に敏感な地合になりそうです。

無題
COMEX金先物相場(日足)

マーケットの利下げ織り込みが過熱状態との評価に上値を抑えられている金相場にとっては、こうした景気減速の兆候はポジティブです。当局者に利下げの前倒し、回数の積み増しが必要との認識を促す可能性があるためです。ただし、現状では米経済指標全体が急激な景気減速リスクを示している訳ではなく、金市場ではほとんど無視されました。今回のNY連銀製造業指数で、直ちに景気減速リスクを織り込むことは見送られています。


プラチナ相場が1,000ドル突破、上昇トレンドを追認

【プラチナ】
NYMEXプラチナ先物相場が1オンス=1,000ドルの節目を上抜きました。今夏はこの1,000ドルで2度にわたって抵抗を受けた後、レンジを850~950ドルまで切り下げていましたが、年末を前に950ドルに続いて1,000ドルも上抜きました。チャート環境は一段と強気に傾き、500ドル刻みで上値切り上げを打診する見通しです。

プラチナ市場では、ボックス相場を前提としたアルゴ系ファンドが価格を支配する傾向が強くなっているため、1,000ドル戻り売りが失敗と確定すれば、取引レンジが切り上がるでしょう。

金相場は年末を前に終値で過去最高値を更新しています。来年の利下げサイクルを先取りしていますが、その流れでプラチナ相場も物色されることで、チャート環境の改善を促すことが可能かとの目線になります。

無題
NYMEXプラチナ先物相場(日足)

そしてもう一つ重要なポイントは、パラジウム相場が改めて軟化していることです。イギリスのロシア産金属制裁の思惑から急伸していましたが、改めて上値を圧迫されています。

パラジウム急騰 ロシア産金属の制裁で思惑買い
これは、白金族貴金属(PGM)全体の収益環境改善にブレーキを掛けることになります。最近のプラチナ相場の上昇でも、鉱山会社のリストラは不可避でしょう。

無題
NYMEXパラジウム先物相場(日足)


【金】
LBMAのLondon Fixingで金価格が過去最高値を更新しました。まだCOMEX先物相場が場中に付けた過去最高値(2,152.30ドル)には到達していませんが、ロンドン金価格は各種金投資商品の評価基準になるため、金投資の評価向上に直結します。

ロンドン金価格、過去最高値更新=LBMA
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/IRL2Y6UD55MVHEORZHXTKKUAUU-2023-12-27/

来年の利下げを織り込む動きが、金市場に限らずマーケット全体で広がっています。過熱感も指摘されていますが、22日に発表された11月PCEデフレーターがやはり金市場の地合を大きく変えたと見て良いでしょう。

参考:11月PCEデフレーター、6ヵ月年率換算で2%割れの衝撃

年末時点の価格が過去最高値を更新するのは確実な情勢であり、あとは12月4日に瞬間的に記録した2,100~2,150ドルのレンジでの経験値を増やしていく局面になりそうです。2,000ドル台は既に割高や過熱と指摘する声は聴かれなくなっています。

無題
COMEX金先物相場(日足)


【お知らせ】
大阪取引所のウェビナーの動画がYoututeで公開されました。12/16(土)開催分です。金、原油、トウモロコシ相場について、初心者向けの内容で構成しています。よろしければご覧ください。

コモディティ ・ マーケットの分析と2024年の展望
https://www.youtube.com/watch?v=auB2uLG2yDM


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プロフィール
小菅 努(こすげ つとむ)

1976年千葉県松戸市生まれ。筑波大学第一学群社会学類卒。商品先物・FX会社の営業本部、ニューヨーク事務所、調査部門責任者等を経て、現在はマーケットエッジ(株)代表取締役。商品アナリスト。貴金属、金属、エネルギー、ゴム、農産物などの商品先物市場全般が主なカバー対象です。商社、事業法人、金融機関向けに分析レポートを配信しています。為替、株価指数などもカバーしています。

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