小菅努の商品アナリスト日記

マーケットエッジ(株)代表/商品アナリスト・小菅努の公式ブログです。コモディティ市場をカバーしています。

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とうもろこし

アルゼンチンで熱波、安値修正を打診する穀物相場

【穀物】
ブラジルの降雨報告で急落していた穀物相場が下げ一服となっています。単純な売られ過ぎ感もありますが、とうもろこしと大豆相場がともに切り返しています。

新たな売買材料として浮上してきたのが、アルゼンチンの熱波です。

アルゼンチンで40℃超の猛暑続く
23日(火)には42.6℃の記録的な高温

エルニーニョ現象の影響でブラジルでは干ばつ傾向が報告されていましたが、ブラジルに関しては降雨によって緊張感が薄れています。このタイミングで、アルゼンチンで熱波が発生しています。

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【CBOTとうもろこし先物相場(日足)】

アルゼンチン産が不作になれば、当然に国際需給見通しは大きく変わります。アルゼンチン産の調達を予定していた需要家が、米国産の調達に切り替える可能性も浮上するでしょう。天候相場期のため、アルゼンチンの天候リスクが本物か否かが問われています。
 

USDA1月需給報告、とうもろこし相場の低迷を追認

【穀物】
米農務省(USDA)が1月12日に需給報告(WASDE)を公表しましたが、とうもろこし先物相場の低迷が追認されました。

注目されていた南米産のとうもろこし生産高見通しですが、ブラジル産は1億2,900万トンから1億2,700万トンまで200万トンの下方修正になっています。干ばつ傾向で厳しい数値が出てくる可能性も警戒されていましたが、この程度であれば想定の範囲内と評価されています。

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2月報告以降で更に下方修正が行われる可能性もありますが、イベントリスクとしてみると無難に消化した格好です。この数値によっては、最近のブラジル降雨を手掛りとした売りが止まる可能性も想定されましたが、逆にダウントレンドを追認する結果になりました。

また、ここにきて米国産の輸出環境悪化のリスクも指摘され始めています。
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ブラジルの安定供給が見込まれるのであれば、ブラジル産の調達を志向する需要家も増えているようです。ここ2週間の週間輸出成約高の数値は低調です。このまま輸出が停滞すると、とうもろこし相場の地合が更に悪化するリスクが高まります。

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CBOTとうもろこし先物相場(日足)


【お知らせ】

1/16(火)16:00~ラジオ日経「マーケット・トレンドDX」に出演します。原油相場についてお話する予定です。


穀物相場の低迷、ブラジルの降水量予報はどうなっている?

【穀物】
シカゴ穀物相場の低迷が続ています。とうもろこしは2020年12月以来、大豆は21年12月以来の安値を更新しています。最大の要因は、ブラジルの降雨見通しです。今季は干ばつ傾向が強いものの、降雨によって土壌水分環境が改善していけば、作柄へのダメージは限定できるとの思惑があります。

GRAINS-Corn, soy hit multi-year lows as oil sinks, rains aid Brazil crops

"After dryness in Brazil in November and December, Brazil's crop weather is improving and the debate will be about how much larger the crop will be," said Matt Ammermann, StoneX commodity risk manager.

11月と12月の乾燥後、ブラジルの天候が改善しています。

実際の降水量予報を見てみましょう。まずは1月8~14日です。比較的まとまった降雨が予想されています。

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次に15~21日です。少し降水量は減りますが、干ばつが警戒されるような予報にはなっていません。

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ブラジル産の大量供給が見込まれる状況になれば、必然的に中国など需要家は米国産の調達を抑制することも選択肢になります。ブラジルの天候改善で売り、米国産の輸出鈍化で売りと、二段階構成になります。

気象予報次第で地合は一変する可能性がありますが、ブラジル降雨の一点で売り込む地合が続いています。この地合を変える動きの有無が焦点になりますが、1月12日に米農務省(USDA)が需給報告と四半期在庫(12月1日時点)を発表します。この二つの統計がイベントリスクになります。

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CBOTとうもろこし先物相場(日足)


東京金融取引所のWeekly Reportです。よろしければご覧下さい。
原油ETF証拠金取引:2024年01月09日号


【お知らせ】
大阪取引所のウェビナーの動画がYoututeで公開されました。12/16(土)開催分です。金、原油、トウモロコシ相場について、初心者向けの内容で構成しています。よろしければご覧ください。

コモディティ ・ マーケットの分析と2024年の展望
https://www.youtube.com/watch?v=auB2uLG2yDM

 

ブラジルの降雨予報の上値圧迫が続く穀物相場

【穀物】
年初の取引でシカゴ穀物相場が急落しています。年末年始のブラジルで降雨が観測されたことが嫌気されています。とうもろこし3月限は一代安値を更新しました。



StoneXは、ブラジルのトウモロコシと大豆生産高見通しを引き下げています。降雨が観測されているとはいえ、高水量が例年を大きく下回っていることで、厳しい生産環境にあることには変わりないとの評価です。

StoneX no longer sees record soybean crop in Brazil in 2023/24

しかし、マーケットでは単純にブラジルの降雨の有無が重視されている以上、気象予報次第の地合が続くことになります。乾燥予報に変わる見込みで押し目を買い拾うのか、降雨継続を見込んで戻りを売り込むのかの対応ですが、現在のトレンドは依然として下向きです。

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CBOTとうもろこし先物相場(日足)


1月4日の大発会前。今日は一日原稿仕事でした。かなりの分量で疲れました。


【お知らせ】
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スエズ運河の航行再開、海運会社の判断割れるも原油は売り反応

【原油】
原油相場が軟化しています。紅海における貨物船の運航再開の動きを受けて、原油供給不安が緩和されているためです。

マースク、アジア─欧州航路の大半をスエズ運河経由で計画
https://jp.reuters.com/business/RZOURWD4MVI5ZHXS35O5WPAPHU-2023-12-28/

デンマークの海運大手マークスは、コンテナ船の大半をスエズ運河経由として、喜望峰沖のルート使用は少数に留める計画としています。

イエメンの武装組織フーシ派の船舶に対する攻撃は続いています。このため海運各社も対応が割れていますが、マークスは米国など多国籍部隊が商船保護の取り組みを本格化させているため、リスクコントロールが可能との判断に傾いた模様です。

米軍、紅海でフーシ派発射の無人機とミサイルを撃墜

ドローンやミサイル攻撃から広範囲に展開する商船を保護するのは容易ではないとみられますが、本当に航行再開でも問題がないのかを見極めるフェーズになります。ただし、もともと原油輸送障害を受けての原油買いの規模は限定的だったため、スエズ運河の航行再開が本格化しても、原油相場に対する影響は軽微でしょう。年末に向けて最近の反発に対する調整売りをうながすきっかけに留まる見通しです。

問題は、この先の明確な相場テーマを欠いていることです。中東情勢が緊迫化しつつあることを材料視するのか、年明け後に石油輸出国機構(OPEC)の自主減産が始まることを材料視するのか、それとも再び需要不安を織り込むのか、気迷いムードから不安定な値動きが続きそうです。ただし、米原油在庫の減少傾向が止まりつつあることを考慮すると、下値不安は大きくないでしょう。

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NYMEX原油先物相場(日足)


【穀物】
ウクライナ当局によると、黒海でパナマ船籍のバルク船が機雷に衝突し、2人が負傷しました。

黒海で貨物船が機雷に触れ爆発、2人負傷=ウクライナ

詳細は分かりませんが、ドナウ川経由の輸送は7月にロシアが黒海イニシアティブから離脱して以降に活用されている代替ルートであり、これまで使用してこなかったルートを使ったのか、新たに機雷が設置されたかしか考えられません。



いずれにしても年末を前にウクライナとロシアとの戦闘が激化しているだけに、この種の動きに対して小麦相場は敏感に反応し始めています。ロシアとウクライナの穀物輸出能力が活用できなければ、小麦を筆頭にとうもろこし、植物油相場などにリスクプレミアム加算の余地が拡大します。

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CBOT小麦先物相場(日足)


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中国が食料安保を強化か、ついに遺伝子組み換えの生産開始に向かう

【穀物】
中国が食料安全保障を強化していることが窺えます。米国産大豆にとっては、需要抑制要因として注意が必要な動きです。

中国、1─11月飼料の大豆ミール使用11%減 食料安保強化で

中国政府統計によると、1~11月期の大豆ミール需要は前年同期から11%、444万トン減少しました。2023年の飼料需要は前年の14.5%から1.5%低下する見通しですが、大豆換算で910万トンの需要減少要因です。飼料分野で大豆ミールの使用を削減し、他の油脂植物や乾燥蒸留粕(DDGS)の使用を増やしている模様です。大豆(大豆ミール)は輸入依存度が高いこともあり、飼料項目の分散が図られています。

中国、遺伝子組み換えトウモロコシと大豆の種子会社承認

 一方、中国政府は遺伝子組み換えのとうもろこしと大豆の趣旨について、生産・流通・販売を認める企業を発表しました。中国政府は遺伝子組み換えに慎重姿勢を維持し、輸入に際しても厳格な管理を行っていましたが、ついに国内企業に遺伝子組み換え関連商品の提供を認めることになります。

どの程度のペースで普及するのかは不明ですが、米国内のとうもろこしや大豆生産量が上向けば、必然的に海外からの輸入量が削減される可能性が高まります。

これら二つの動きがリンクしているのか断定はできませんが、食料安全保障の強化が急がれていることが強く窺えます。これがウクライナ産の供給抑制の影響か、米中関係悪化の影響か、更には台湾有事に備えた動きかは分かりませんが、中国のこうした取り組みが成功すれば、世界の穀物市場は安定供給を確保できる可能性が一段と高まります。


【穀物】
12月26日のシカゴ穀物相場は小麦を中心に堅調に推移しました。年末前の持高調整の影響もありますが、ウクライナ情勢が久し振りに材料視されています。

ウクライナ軍、ロシアの大型揚陸艦を破壊と発表 巡航ミサイルを使用

ウクライナがクリミアでロシア軍の強襲揚陸艦を破壊し、黒海の戦闘激化が警戒された模様です。クリミア半島付近での戦闘が激化すれば、必然的にウクライナとロシア双方の穀物輸出が影響を受ける可能性が高まります。

最近の傾向として、こうした地政学リスク絡みの買いは一時的なものに留まる傾向が強いものの、注意は必要でしょう。

無題
CBOTとうもろこし先物相場(日足)


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メキシコからの不法移民を阻止したら、米コーン輸出が停滞?

【とうもろこし】
米税関・国境取締局(CBP)は12月17日、テキサス州とメキシコを結ぶ二つの鉄道橋を封鎖しました。メキシコからの不法移民の流入に歯止めが掛からず、入管業務の適正化を目的としたものです。今、これがとうもろこし相場に対して新たなネガティブ材料として注目を集めています。

US closes two rail bridges to Mexico amid migrant surge

無題





















閉鎖されたのは、上の地図で緑で囲った「El Paso」と「Eagle Pass」です。ここを経由してメキシコからの不法移民が米国内に流入することを阻止する目的です。

一方、これでこの二つのルートの鉄道輸送が止まった際に、悲鳴を上げているのが米国とメキシコの農業関係者です。ここを経由して米国からメキシコにとうもろこしを輸出できなくなったため、米国サイドからみると輸出減少要因、メキシコサイドからみると家畜向け飼料の供給減少要因になっています。

Mexican poultry farmers warn US-Mexico rail bridges closure will impact trade

メキシコ家禽生産者組合(UNA)によると年間1,700万トン以上の飼料を必要としていますが、米国からの黄色とうもろこしの25%、大豆ぺーストの63%が、この二か所を経由して輸入されているそうです。メキシコ産の鶏肉や卵の生産が飼料不足のリスクに直面しています。



ミシシッピ川の水位低下、パナマ運河の水位低下など、米穀物業界が直面するロジスティックスの問題が一つ増えたとの評価も可能なようです。

米とうもろこし業界にとってメキシコは最大顧客のため、混乱を放置するようなことはないと見られます。ただし、今後も移民対策が穀物輸送リスクに直結することもあり得るとの認識が求められます。


【原油】
米ダラス連銀が「Dallas Fed Energy Survey」の2023年第4四半期版を発表しました。

Dallas Fed Energy Survey
https://www.dallasfed.org/research/surveys/des/2023/2304

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エネルギー会社幹部を対象にした調査ですが、2024年末のWTI原油価格予想は、75.00~79.99ドルが最頻値になっています。12月6~14日の調査ですが、70ドル台に予想は集中しており、70ドル台中盤から後半を前提に経営計画を策定している企業が多いことが窺えます。

このため、80ドル台だと増産圧力、70ドル台前半だと減産圧力が、想定よりも強まるとの見通しになるでしょう。この辺の価格が中心帯になりやすい状況になっています。


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プロフィール
小菅 努(こすげ つとむ)

1976年千葉県松戸市生まれ。筑波大学第一学群社会学類卒。商品先物・FX会社の営業本部、ニューヨーク事務所、調査部門責任者等を経て、現在はマーケットエッジ(株)代表取締役。商品アナリスト。貴金属、金属、エネルギー、ゴム、農産物などの商品先物市場全般が主なカバー対象です。商社、事業法人、金融機関向けに分析レポートを配信しています。為替、株価指数などもカバーしています。

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