小菅努の商品アナリスト日記

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パーム油生産国は、来年上期も供給不安で価格上昇が続くと予想

インドネシアとマレーシアで構成されるパーム油生産国カウンシル(CPOPC)は、「Palm Oil Supply and Demand Outlook: Report 2021」において、2021年上期のパーム油価格が上昇し続けるとの見通しを示しました。少なくとも来年1~3月期はラニーニャ現象による豪雨で供給が引き締まる見通しであり、価格高騰をインセンティブにすることで、天候が改善に向かう下期の生産を増やす必要性を訴えています。

ここ数年、インドネシアやマレーシアの農家は、パーム油の生産意欲を低下させています。森林伐採などの自然破壊に対する批判の声が高まっているため、より批判の少ない商業作物への作替えを進める動きが目立ちます。特に欧州では環境破壊の要因だとして、バイオ燃料用のパーム油使用から撤退する動きが強くなっています。マレーシアでは作付面積の増加がほぼ止まり、インドネシアでもペースダウンが予想されています。しかもラニーニャ現象が続くと予想されていることで、供給のタイト化が深刻化する見通しになっています。

一方、需要はコロナ禍にかかわらず拡大が予想されています。2020/21年度の輸入量は欧州が60万トン減の640万トンの予想ですが、インドは40万トン増の870万トン、中国は20万トン増の690万トンが予想されています。欧州はレストラン閉鎖などの影響を受けますが、インドと中国では、ともに在庫積み増しの動きが強まると予想されています。大豆油やヒマワリ油の供給も抑制される中、パーム油相場が割安な状態と判断されると、他の植物油から需要シフトが発生する可能性も高まっています。

2019年や20年と比較して、21年の平均価格は上振れする見通しが示されています。足元のMPOCパーム油先物相場は、1トン=3,400リンギット台と、今年最高値を更新しています。供給不安に支配されたマーケット環境が維持されていますが、CPOPCはこの状況が越年すると予想しています。

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※マレーシアの作付面積、伸びがほぼ止まる見通しです。植物油の需要が拡大するも、天候不順に加えて環境問題の厳しさもあって、安定供給が危ぶまれています。

・【CPOPC】 Palm Oil Supply and Demand Outlook: Report 2021

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

パーム油が8年半ぶりの高値圏、値上がりし易い食用油価格

パーム油が急騰している。マレーシアのMPOCパーム油先物相場は5月の1トン=1,939リンギットをボトムに足元では3,200リンギット台まで急伸し、2012年5月以来となる8年半ぶりの高値を更新している。パーム油は、食用油やバイオディーゼルとして利用されており、このまま高騰相場が続くとコーン油や菜種油などの競合品も値上がりし易く、家計にも影響を及ぼし始める可能性がある。

パーム油相場高騰の背景にあるのは、堅調な需要環境に対して十分な供給量を確保できず、在庫のタイト感が強くなっていることだ。マレーシア・パーム油ボード(MPOB)が11月10日に発表した10月末在庫は157万3,450トンとなっているが、これは前年同期の僅か66.9%の水準に留まっている。4月時点では204万4,498トンの在庫が確保されていたが、6~7月に続いて10月も大規模な在庫の取り崩しが報告されている。10月末の在庫水準としては、2007年以来となる13年ぶりの低水準である。

需要に関しては、中国やインドを中心に堅調である。世界銀行(World Bank)は中国について、トランプ米政権下の米中対立激化の中で、飼料としての大豆ミールはトウモロコシ、食用としての大豆油はパーム油で代替する戦略を採用していることを報告しているが、需要環境が大きく変わっている。原油安の影響でバイオディーゼルとしては価格の面で厳しい環境に追い込まれているが、新型コロナウイルスのパンデミックの影響を早期に消化したことで、インドや中東の需要環境も底固さを見せている。マレーシア産の10月輸出高は前年同月比2.0%増の167万3,998トンとなっている。これは10月としては2015年以来の高水準である。

一方、異常気象・ラニーニャ現象の影響で生産環境は悪化している。10月のマレーシア産の生産高は前年同月比4.0%減の172万4,420トンに留まっている。これは10月としては2016年以来となる4年ぶりの低水準である。新型コロナウイルスのパンデミックによる労働力不足、流通網の混乱も報告されており、需要と供給とのバランスが歪んでいる。

11月前半の輸出統計では、出荷が落ち込み始めており、在庫が更に大きく取り崩されるリスクは限定されるとの見方が強い。例えばAmspec社によると、11月1~10日のマレーシア産パーム油輸出は10月の同じ時期と比べて17.1%減少している。インドの季節要因(Diwali祭)に基づく買い付けが一服し、11月はその反動から輸入を抑制する可能性が高まっている。また欧州などのパンデミック対策で行動規制が強化される中、バイオディーゼル用需要も落ち込み易い。このため、11月には更に急騰地合が続くリスクが低下している。

しかし、大豆油など植物油相場の高騰傾向が続く一方、ラニーニャ現象とパンデミックによる供給不安は維持されることになり、在庫タイト感の解消・緩和は難しい状態が続き易い。生産は10月に続いて11月も低迷状態が続くことがほぼ確実視されている。需要が予想以上の底固さを示す、天候不順が更に深刻化するといった形で在庫の取り崩しが更に進むと、もう一段階の値上がりが進むリスクも抱えた状態が続くことになる。
【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

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※図表はリンク先の記事参照。

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中国洪水で高騰するパーム油

中国洪水で高騰するパーム油
天然ゴムも期近に上昇圧力

 7月は九州地方で豪雨・洪水被害が観測されたが、中国や東南アジアでも豪雨が観測されている。中国の長江流域では豪雨が止まらず、河川水位の上昇から各地で洪水被害が報告されている。下流域には南京市や合肥市といった大都市が位置しているため、上流域で意図的に堤防を決壊させて、中国全体としての被害を最小限に抑えるための試みも行われている。東南アジアでも、これまでは干ばつ状態が強く警戒されていたが、マレーシアやインドネシアでは豪雨による農作業への影響が報告され始めている。

 今回の中国から東南アジアにかけての洪水被害に対して特に強く反応しているのがパーム油相場だ。本来であれば生産量が最も伸びる時期に向かう局面だが、豪雨の影響で収穫作業に影響が生じており、集荷に遅れが報告されている。しかも、新型コロナウイルスの影響で外国人労働者の入国規制が解除されていないため、パーム油農園では労働力不足が深刻化している。マレーシアでは業界団体が政府に対して対応を求めているが、今後数か月のイールドが最大で25%減少するといった試算も出始めている。MPOCパーム油先物相場は、5月6日の1トン=1939リンギットで底入れし、その後は新型コロナウイルスの収穫による需要環境の改善と歩調を合わせて、2400リンギット水準まで反発して、上げ一服となっていた。しかし、中国と東南アジアで豪雨・洪水被害が発生すると、一気に2600リンギット台まで急伸し、約5カ月ぶりの高値を更新している。バイオディーゼルや食用油価格の上昇が直ちに国内での植物油価格高騰を促す訳ではないが、供給サイドの混乱が目立ち始めていることには注意が求められる。

 これと同じ論理で、天然ゴム価格に対しても押し上げ圧力が発生している。JPXゴム先物相場は、期先限月だと1kg=150円台後半をコアに方向性を欠く展開が続いている。需要が最悪期を脱したとの見方がある一方、依然として新型コロナウイルスの感染被害が拡大し続ける中、上値追いには慎重姿勢が目立つ。

 しかし、期近限月では産地主導の上昇圧力が観測されており、当限は7月上旬の140円台前半に対して、150円台中盤まで値上がりしている。これは約4カ月ぶりの高値更新になる。当先の順サヤ(期近安・期先高)が急速に縮小しており、新型コロナウイルスがもたらした需給緩和圧力が、需要環境の回復と供給不安の同時進行によって、解消に向かっていることが確認できる。

 新型コロナウイルスの感染被害は依然として猛威を奮っているため、需要動向によっては改めて下押し圧力が強まる可能性は残されている。一方で、このまま需要回復に波があっても正常化に向かう一方、天候不順や労働力不足による供給不安が維持されると、ゴム相場も当限に続いて期先限月に対して買い圧力が強まる可能性が高まる。逆サヤへの転換で、現物市場主導の上昇が本格化する可能性も想定しておきたい。
(2020/07/22執筆)
【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)中部経済新聞2020年07月27日「私の相場観」

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「持続可能なパーム油のための日本ネットワーク(JaSPON)」への期待


イオンやライオンなど18企業・団体は11日、食品や洗剤などで使われるパーム油の持続可能な調達を目指す団体を設立した。森林を破壊して植えたアブラヤシを原料とするパーム油を使っていないことを示す国際認証を取得し、関連商品を日本で広める。国連が定めた「持続可能な開発目標(SDGs)」に対応し、環境配慮の経営姿勢を打ち出す。

団体名は「ジャパン・サステナブル・パーム・オイル・ネットワーク(JaSPON)」。花王や資生堂など日用品や食品メーカーなども参加している。


資源生産の「持続可能性」は、地球規模の課題になっています。これまで企業は、いかに安価で資源を調達できるかを最重要視してきましたが、今やそのような企業活動は認められていません。特に投資家が企業活動が正しく行われているのかを厳しくチェックする中、環境を破壊するような資源生産は認められていません。

こうした中、東南アジアで産出されるパーム油は、大規模な森林破壊を伴うとして、大きな批判を浴びている農産物の一つになります。パーム油を取引している企業としては、購入・販売の停止と言う選択肢もありますが、日本では昨年10月22日に「持続可能なパーム油のための日本ネットワーク(JaSPON)」の立上げ宣言が行われ(参考:「持続可能なパーム油のための日本ネットワーク(JaSPON)」の立ち上げ宣言を行ないました 花王)、環境破壊を行わない持続可能性を模索する動きが始まっています。

このJaSPONが4月11日に正式に設立されました。パーム油生産で環境に負荷を与えていないか、労働者を酷使していないか、違法な生産活動は行われいないかなど、厳しいチェックが行われ、持続可能なパーム油の調達を企業の枠組みを超えて目指します。消費者にとってはコスト高に直結する動きですが、50年後、100年後の地球を考えた際に、こうしたコストは現代人が負担すべきものというのが、現在の国際コンセンサスになっています。

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バイオ燃料も環境にやさしくない、EUは規制強化へ

欧州連合(EU)の交渉担当者は、輸送用燃料としてのパーム油使用を2030年までに中止することで合意したことを明らかにしました。政治的な影響も大きいためにまだ難航が予想されますが、2023年までは19年の水準に抑制し、その後は30年までに中止する方向で調整が進みます。

Reuters=EU to phase out palm oil from transport fuel by 2030

EUは温室効果ガス排出量を30年までに1990年比で40%以上削減することを法律で規定していますが、その一環になります。一般的には、植物を使うバイオ燃料は環境にフレンドリーと認識されていますが、欧州委員会の「2015年調査」では、パーム油や大豆油は直接的な温室効果ガスの排出は抑制されますが、生産のための森林破壊、泥炭地の排水による農地整備などで、間接的に温室効果ガスを大量に排出していると結論づけています。

温暖化対策が化石燃料からバイオ燃焼にも広げないと温室効果ガス削減目標は達成できない程に厳しい状況と言えますが、成長が続いてきたバイオ燃料にとって初めてともいえる大きな逆風が吹いています。現時点では、環境への影響が最も大きいとされるパーム油と大豆油に限定された議論ですが、バイオ燃料の生産環境にまで政策担当者の視線が向かっていることは大きな変化です。

こうしたEUのパーム油輸入停止については、昨年10月に2021年以降にパーム油を域内のバイオ燃料計画から外す方針が固まっていたことで規定路線に沿った動きともいえますが、マレーシア、インドネシア、タイなどの農村部に与える影響も大きそうです。

かといって、コーヒーや天然ゴムに作替えしても、現状では収益環境の厳しさは変わらない見通しです。ここ数年は価格低迷を嫌った天然ゴムからパーム油への生産シフトの動きも報告されていましたが、東南アジアの農家にとっては何を生産するのがベストなのか、難しい判断が求められます。

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プロフィール
小菅 努(こすげ つとむ)

1976年千葉県松戸市生まれ。筑波大学卒。商品先物・FX会社の営業本部、ニューヨーク事務所、調査部門責任者等を経て、現在はマーケットエッジ(株)代表取締役。商品アナリスト。貴金属、金属、エネルギー、ゴム、農産物などの商品先物市場全般が主なカバー対象です。商社、事業法人、金融機関向けに分析レポートを配信しています。為替、株価指数などもカバーしています。

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