小菅努の商品アナリスト日記

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equity

ワクチン承認で材料出尽くしは? 効果が得られるのは数か月後

米食品医薬品局(FDA)は12月11日、米ファイザーと独ビオンテックが共同開発した新型コロナウイルスワクチンの緊急使用を許可しました。諮問委員会から使用勧告が出た翌日のスピード決定になります。

トランプ大統領は最初のワクチン接種が24時間以内に行われるとの見通しを示していますが、厚生省のジロワー次官は来年5月か6月までには希望者が接種を受けられるようになるとの慎重な時間軸を提示しています。まずは医療関係者や高齢者の接種が中心になり、一般の人に広く行きわたるためには数か月といった時間が要求されます。今後は、まだ大量の新規感染者、死者が発生し続ける可能性が高い状況です。ワクチンの接種が始まったことで、状況が劇的に改善するとは考えられていません。

パンデミック収束に向けての重要な第一歩ですが、今後は実際に目に見える効果が得られるまでにどの程度の時間が必要なのかが焦点になります。ロイターとイプソスの行った世論調査によると、ワクチン接種を行ってもよいとの回答は61%に留まっていることにも注意が必要でしょう。

ワクチンが直ちに効果を発揮できないことを考慮すると、マーケット目線ではいわゆる「材料出尽くし」が警戒される局面になります。ワクチン実用化のプロセスが始まる一方、早期に明確な効果を得られる状況にはならない中、「噂で買って事実で売る(buy the rumor,sell the fact)」相場展開にシフトする条件は整っています。

モデルナのワクチン承認といった追加の買い材料を提示する余地も残されていますが、リスクマーケットの過熱感は極めて強く、ボラティティティも極端に抑制されているため、週明け12月14日の取引をどのように消化するのかが注目されます。株式や原油市場に調整売りが広がると、金相場の下値は一段と固まる方向性になります。クリスマスに向けてリスクオンの過熱状態を維持するのか、一息入れるのかが問われています。

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

来年・丑年の日経平均株価は厳しい年になる傾向、干支と日経平均株価の関係

無題











2021年の「干支」は丑になります。1950年以降のデータで日経平均株価をみると、丑年は平均で0.1%安となり、干支別では午年の5.0%に次ぐ低パフォーマンスになります。相場格言だと「躓き(つまづき)」の年になりますが、アノマリーの視点ではあまり良い年とは言えなそうです。

過去5回分のデータだと3勝2敗で、前回の2009年は+19.0%でした。これリーマンショックの翌年です。その前の1997年は-21.2%でしたが、消費増税とアジア通貨危機が重なった年でした。大手金融機関の破たんも相次ぎました。1985年は+13.6%でしたが、プラザ合意の円高不況が発生しましたが、景気対策の積極的な財政出動と金融緩和が、株価を押し上げました。その翌年のバブル経済につながる動きの前兆です。1973年は-17.3%ですが、第四次中東戦争を機に第一次オイルショックが発生した年です。1961年は+5.6%ですが、これは高度経済成長の最終局面でした。

ただ、過去は12年サイクルで上昇と下落が繰り返されているため、そのパターンが維持されている場合には、2021年は下落の年になります。

一方、丑年で上昇した2009年と1985年は、ともに危機対応で財政出動と金融緩和がフル動員された年でした。ファンダメンタルズ目線だと、コロナ禍対応で政策フル動員が行われている現状は、丑年の上昇パターンに近いとも言えそうです。

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】
 

ダウ平均がエクソンを除外、米株式市場で石油株の凋落加速

米S&Pダウ・ジョーンズ・インディシーズは8月24日、アメリカの代表的な株価指数であるダウ工業平均株価の構成銘柄から、石油大手エクソン・モービル、製薬大手ファイザー、防衛大手レイセオン・テクノロジーズの3社を除外する一方、ソフト大手セールスフォース・ドットコム、製薬大手アムジェン、産業機械大手ハネウェル・インターナショナルの3社を新規で組み入れると発表した。8月31日から新たな30銘柄で構成されるダウ工業平均株価の算出が開始されることになる。

ダウ工業平均株価は、僅か30銘柄で米国の上場株式市場全体像を反映するように意図されている。定量的なルールはないとされているが、1)時価総額が大きい、2)企業として名声がある、3)多くの投資家が関心を示している、4)持続的な成長を示している、5)米国で設立され本社がある、6)売上高の大半を米国内の営業活動で生み出しているなどの特性を有している。

ただ、時代の変化によって株式市場の全体像を反映する銘柄は変わるため、株価平均委員会が見直しを行い、常に最適な30銘柄が選択されるようになっている。例えば、指数の計算が始まった1800年代は農業や鉱工業の比率が高かったが、その後は経済発展と連動する形で情報通信業や医療などのサービス業の比率も高まり、近年はNASDAQに上場するハイテク企業から選択されることも増えていた。

エクソン・モービルは、現在のダウ工業平均株価を構成する銘柄では、採用年が1928年と最も古くなっているが、ついに除外されることが決定したのが今回の発表になる。これで、ダウ工業平均株価を構成する石油株は、シェブロンの1社になる。

エクソン・モービルは2006~12年にかけて、時価総額で米国最大の企業となった時期もあったが、脱化石燃料の動き、環境に配慮するESG投資、更にはコロナ禍におけるエネルギー需要の停滞を受けて、投資家から敬遠される傾向が強くなっていた。「石油の世紀」を支配する主要企業の一つだったが、もはや米国の株式市場においては、石油会社がダウ工業平均株価の中に2銘柄も組み込まれる力はなくなったと評価されている。

そして、エクソン・モービルの事実上の代替銘柄として選ばれたのがクラウドの顧客管理を主力とするセールスフォース・ドットコムになる。エクソン・モービルの代替銘柄が製造業ではなく新たなハイテク株になったことは、「データの世紀」への移行を象徴する動きの一つと言えるかもしれない。企業や国の競争力を高める原動力が、「原油」から「データ」に変わりつつあるトレンドが、ダウ工業平均株価の構成銘柄に対しても大規模な入れ替えを迫っている。
【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

※図表はリンク先の記事参照。

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FRBの緊急利下げでも売られた米国株、前回の緊急利下げ後の株価は?

米連邦準備制度理事会(FRB)は3月3日、0.50%の緊急利下げに踏み切った。声明文では、「新型コロナウイルスが経済活動に新しいリスクをもたらしている(the coronavirus poses evolving risks to economic activity)」と理由を記している。パウエルFRB議長も記者会見で、「経済活動にリスクが持ち上がり、産業界も懸念の声を上げている」と解説している。また、「経済を支えるために、政策ツールを用いて適切に行動する」と述べて、追加利下げも辞さない姿勢を強調している。

新型コロナウイルスが実体経済にも深刻なリスクをもたらし、金融市場でも株価が急落するなど不安定な値動きが目立つ中、混乱収束に向けて積極姿勢を示した格好である。教科書的には、利下げによって市場金利を押し下げ、資金調達コストの引き下げによって、企業設備投資や個人消費を刺激することになる。実際に、米10年債利回りは1%台を割り込んでおり、過去最低の金利環境になっている。

しかし、同日の米株式市場ではダウ工業平均株価が前日比785.91ドル安の2万5,917.41ドルと急落している。すなわち、マーケットからは今回のFRBの緊急利下げは歓迎されなかったのである。

理由は幾つか考えられるが、第一に緊急利下げの形式をとったことである。FRBとしては積極姿勢をアピールしたかったのだろうが、マーケットの受け止め方は、「緊急利下げが必要なほどに経済は悪化しているのか」という悲観的なものだった。FRBは3月17~18日に定例会合の開催を予定しているが、2週間も待てないのかと評価されてしまったのだ。声明文では、「米経済の基調は依然として力強い(The fundamentals of the U.S. economy remain strong)」としているが、世界同時金融危機が発生した2008年10月以来の緊急利下げが、マーケットの想定よりもリスクは高まっているのではないかと受け止められてしまった。

第二に、利下げ幅が0.50%と大幅利下げになったことである。通常、FRBの金利変更は0.25%単位で実施される傾向にあり、実際に昨年の3度にわたる利下げはいずれも0.25%だった。しかし0.50%の大幅利下げに踏み切ったことが、「有事」を意識させてしまった。段階的に0.25%刻みで利下げを行うだけでは、対処できないリスクが発生しているのはないかと受け止められている。

第三に、今後の利下げ余地の乏しさである。今回の緊急利下げによって、政策金利であるフェデラル・ファンド(FF)金利の誘導目標は1.00~1.25%まで引き下げられている。これは0.25%の利下げを4回、または0.50%の大幅利下げを2回実施すると、ゼロ金利環境に回帰してしまうことを意味する。今後は経済活動が本格的に停滞し、マーケットが更に不安定化しても、FRBが切ることのできるカードが乏しくなっていることも、警戒感を高めている。

■前回の緊急利下げ後の株価は?

FRBの緊急利下げは2008年10月8日以来のことになるが、その当時のマーケット動向は今後を占う上で参考になろう。08年9月15日に米投資銀行リーマン・ブラザーズが経営破たんし、米国のみならず世界は連鎖的な信用収縮の波に飲み込まれ、金融危機が発生していた。こうした中、米欧の6中央銀行が0.50%の協調利下げに踏み切ったのが、前回の緊急利下げの経験になる。

その当時の株価をダウ工業平均株価で振り返ると、08年10月7日終値が9,447.11ドルだったのに対して、翌09年3月6日安値6,469.95ドルまで、株価は値下りし続けた。一本調子で値下りした訳ではなかったが、緊急利下げを好感して株価は反発したのではなく、最大で31.5%の急落になったのである。しかも、この際は協調利下げだったが、現在は欧州中央銀行(ECB)も日本銀行も政策調整の余地が乏しく、FRBと協調行動をとれる状況にはない。仮に、前回緊急利下げ後と株価が同じ値動きをすると、ダウ工業平均株価は1万8,000ドル台前半まで値下りする計算になる。

もちろん、「金融危機」と「新型コロナウイルス」を同列に議論することはできず、今後の感染被害の展開状況次第でマーケット環境も大きな影響を受けることになる。ただ、FRBの緊急利下げに対して株価が売りで反応したことは、マーケットの「新型コロナウイルス」に対する警戒感の強さを明確に示したと言えそうだ。
【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

※図表はリンク先の記事参照。

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株価急落局面で金価格も急落している「謎」

世界の株価が急落する中で、安全資産の代表格である金価格が下落する一見すると「奇妙」な現象が観測されている。指標となるNY金先物価格は、2月24日の1オンス=1,691.70ドルをピークに、28日の欧州タイムには1,630ドル水準まで急落している。27日の米株式市場ではダウ工業平均株価が過去最大の下げ幅を記録し、日経平均株価も25~28日の1週間で世界同時金融危機が発生した2008年10月以来の下げ幅を記録する中にあって、金価格が急落しているのである。

一般的な理解では、金は「安全資産」と言われるため、株価急落局面では買われることになる。株式市場から金市場に対する資金流入というのは、極めて分かり易い教科書的なロジックである。実際に、2月は株価急落環境において、米国債などと同様に金が安全性を高く評価されて買われていたことは間違いない。NY金先物価格は、2013年1月以来の高値を更新している。

では、なぜ足元では株価急落にもかかわらず、金が買われるのではなく、売られているのだろうか。考えられるのは、投資家がキャッシュなどの流動性を確保する目的で、金を売却している可能性である。

世界的に株価がパニック的な急落となる中、投資家は株式市場における含み損(=確定していない帳簿上の損失)への対応を迫られている。特に、先物取引などのデリバティブ取引では、元本以上の投資が可能なため、相場が予想の反対方向に向かうと、含み損への対応で新たなキャッシュが求められることになる。これを専門用語で「マージン・コール(追い証拠金)」と言うが、追加の「マージン(証拠金)」を要求する「コール(連絡)」が来て、ポジションの維持・決済のためにキャッシュが必要となるのだ。

これが現在は世界規模で発生しており、投資家は株式市場で発生した損失の穴埋めを行う必要性に迫られている。その際に、7年1ヵ月ぶりの高値圏にあり、多くの投資家が含み益を抱えている金が、売却対象になっている可能性があるのだ。

金市場を取り巻く環境をみれば、株価は急落し、米長期金利は過去最低を更新し、ドルが反落傾向を強めるなど、買い材料ばかりが目立つ状況にある。このため、金価格のファンダメンタルズは寧ろ強気に傾いており、更なる高騰相場を支持していると言える。しかし、流動性確保が最優先される局面においては、金価格に対して強気でも、金を売却せざるを得ない状況に追い込まれることもある。

実はこうした現象は世界同時金融危機の際にも観測されている。世界同時金融危機の際は、初期段階では金は安全資産として買われていた。しかし、株価がパニック的な急落を開始すると、株式市場などの損失を補填するために、金も売却されて急落したのである。これは、「有事」でも金は常に流動性を確保できる高い信頼性を有している結果であり、決して金の安全資産性が否定されている訳ではない。ただ、パニック状態に陥った際には、「安全資産」の金も売られることがある。

足元の金相場急落に関しては、最近の急ピッチな上昇相場の反動に過ぎない可能性も十分にある。しかし、仮に株価急落と歩調を合わせる形で金価格も急落する状況が継続し、本格化するのであれば、それはいわゆる「リーマンショック級」の危機が発生していることを意味することになる。株価急落がメディアでは大きく取り上げられているが、その環境下で金価格が急落していることは、極めて不気味な現象である。

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プロフィール
小菅 努(こすげ つとむ)

1976年千葉県松戸市生まれ。筑波大学卒。商品先物・FX会社の営業本部、ニューヨーク事務所、調査部門責任者等を経て、現在はマーケットエッジ(株)代表取締役。商品アナリスト。貴金属、金属、エネルギー、ゴム、農産物などの商品先物市場全般が主なカバー対象です。商社、事業法人、金融機関向けに分析レポートを配信しています。為替、株価指数などもカバーしています。

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