小菅努の商品アナリスト日記

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外国為替

メキシコのインフレ率は2か月連続上昇、まだ高金利の魅力維持か

【メキシコペソ】
メキシコの12月消費者物価指数は前年同月比4.66%上昇となり、前月の4.32%上昇を上回りました。2ヵ月連増で伸びが加速しています。

Mexico's headline inflation up in December, core rate down

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メキシコ、23年のインフレ率4.66% 上昇に歯止め

「12月の農畜産物とエネルギーを除くコアインフレ率は5.09%(前年同月は8.35%)に低下し、うち食品・飲料・たばこが6.25%(同14.14%)と大幅に下がった。」

メキシコ中央銀行が改めて利上げに踏み切る可能性は殆どありませんが、利下げを急ぐ必要もなさそうです。

メキシコ中銀、利下げ開始で慎重な判断必要との意見大勢=議事要旨

「利下げ開始に際しては慎重な判断が求められるとの意見が政策委員の大勢だった」

昨年12月の金融政策会合の議事録を確認すると、利下げ開始に慎重な意見の方が目立ちましたが、こうした判断を支持する結果と言えるでしょう。いずれにしても2024年はメキシコ中央銀行も利下げに踏み切り、米国との金利差縮小が対ドルでのペソの上値を圧迫する見通しですが、その時期はまだ先になりそうです。もう暫くは政策金利11.25%という高金利通貨のメリットを享受できるでしょう。マイナス金利状態を脱することができない対円に関しても同様です。

メキシコに関しては、日本経済新聞が米国の貿易相手国で2023年は中国を抜いて首位になる見通しとの観測記事を出しています。

生産地を消費地近くに移すニアショアリングが活発化していますが、メキシコは米国の生産拠点としての地位を中国から着実に奪い続けていることが確認できます。

米国の輸入相手、中国が17年ぶり首位外れる 供給網一変

「メキシコからの23年の輸入額は過去最高を更新する勢いだ。1〜11月の輸入シェアは15%を超え、00年以降で初めて首位に立つ。」

20240110_3


【お知らせ】
大阪取引所のウェビナーの動画がYoututeで公開されました。12/16(土)開催分です。金、原油、トウモロコシ相場について、初心者向けの内容で構成しています。よろしければご覧ください。

コモディティ ・ マーケットの分析と2024年の展望
https://www.youtube.com/watch?v=auB2uLG2yDM

  

元旦の能登半島地震、ドル/円相場への影響を考える

【円】
元旦の能登半島で最大震度7の大規模震災が発生しました。国内マーケットは休場、海外投資家が1月2日から徐々に取引を再開するタイミングですが、1月2日のアジア時間のドル/円相場は目立った動きを見せていません。

能登半島で震度7、石川の死者48人に 輪島で大規模火災
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUE011M10R00C24A1000000/



2011年の東日本大震災が発生した直後は、急激な円高圧力が発生しました。背景としては、リパトリの「思惑」が指摘されています。

大震災でなぜ円高?
https://www.jiji.com/jc/v2?id=20110311earthquake_45

つまり、震災を受けての保険会社が支払いに備えて、海外資産を円に換えるとの見方です。企業が国内事業の被災を受けて、海外資産を国内に還流させるとの思惑なども指摘されています。

しかし、地齋にはリパトリの発生は確認できず、専ら思惑先行の値動きでした。つまり、投機筋がリパトリの大枠を手掛りに円買いを仕掛けた訳です。

さて今回ですが、最近の円高・ドル安の流れを加速させるテーマと評価されると、一気に円高が進む可能性もあります。ただし、2011年の経験でこうした思惑は根拠の乏しいものであることが確認されています。また、近年はウクライナ戦争やイスラエル=ハマス戦争で有事の円買いも見られませんでした。

1月4日の東京市場の大発会で株価急落といった動きが見られた際に、思惑的な円買いが瞬間的に膨らむリスクを想定しておく程度で十分でしょう。

そして、現在の地合だと日本銀行の金融政策への影響にも注目する必要があります。日本銀行は2024年にマイナス金利解除に踏み切るとみられていましたが、能登地震の影響で日本経済(特に北陸経済)が大きなダメージを受けると、マイナス金利を解除できくなくなる可能性が浮上します。

本来だと春闘の賃上げ状況を確認し、そこで賃金上昇を伴ったインフレが確認できたとの評価からマイナス金利是正の流れが想定されていましたが、その決断が今回の大地震で難しくなったのは間違いないでしょう。

日銀当局者などから大地震の影響に対して踏み込んだ発言が聞かれたりすると、米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ開始でもドル/円相場が十分に下げないシナリオもあるでしょう。まだ判断材料が乏しいテーマですが、2024年は年初の取引開始の前に大きな不確実性を抱えることになりました。


被災された方、お見舞い申し上げます。


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https://www.youtube.com/watch?v=auB2uLG2yDM

 

トルコ中銀の利上げは最終局面も、トルコリラは反応できず

【トルコリラ】
トルコ中央銀行は12月21日の金融政策会合において、主要政策金利の1週間物レポレートを2.50%引き上げ、42.50%としました。7ヵ月連続の利上げになります。過去3ヵ月は5.00%のペースで利上げを続けてきましたが、ペースダウンした格好です。

Press Release on Interest Rates

前回の会合では、市場コンセンサスが2.50%利上げだったのに対して予想外の5.00%の大幅利上げに踏み切りましたが、利上げのペースダウン、利上げ終了の接近が示唆されいました。

トルコ中銀、予想上回る5%利上げ 政策金利40%に
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/ARM5MGEZNFMRJEW7D4SZHDFC3U-2023-11-23/

「金融引き締めのペースはピークに近づくにつれ鈍化し、引き締めサイクルは間もなく完了するとの見通しを示した」

その意味では、今会合はきちんと11月会合で示されたガイダンスに沿った無難な結果になったと言えるでしょう。

トルコ中銀、幅2.5%に縮小し7会合連続利上げ 引き締め早期終了へ
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/K57BADJAOJNBXGPUDA6DQ26XOI-2023-12-21/

声明では、「引き締めサイクルをできるだけ早く完了させる」として、利上げ終了の接近を再確認しています。問題は、トルコのインフレ率は6月の38.2%上昇から直近の11月には61.98%まで上昇していることです。ただし、トルコ中央銀行は来年5月の70~75%程度をピークに、来年末には36%程度まで低下するとの認識です。

まだ利上げは終了していない可能性があり、今後もしばらくは高金利政策を維持する見通しですが、トルコ中央銀行の利上げ政策は転換期に近づいていることを再確認させる内容になりました。ただし、マーケットはこれでトルコリラが投資対象になったとの評価は下していません。リラ相場は今回の決定に殆ど反応を見せませんでした。失われた信頼を取り戻すのは、難しいことが再確認できます。

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プロフィール
小菅 努(こすげ つとむ)

1976年千葉県松戸市生まれ。筑波大学第一学群社会学類卒。商品先物・FX会社の営業本部、ニューヨーク事務所、調査部門責任者等を経て、現在はマーケットエッジ(株)代表取締役。商品アナリスト。貴金属、金属、エネルギー、ゴム、農産物などの商品先物市場全般が主なカバー対象です。商社、事業法人、金融機関向けに分析レポートを配信しています。為替、株価指数などもカバーしています。

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