粗鋼は、加工処理された後に各種耐久財や建築材料と使用されるため、どの程度生産されているのか、生産される計画にあるのかは、景気動向を示す指標の一つとして注目されます。
この粗鋼生産について、中国の政府系シンクタンクである冶金工業計画研究院は12月21日、2021年の粗鋼生産量が今年見込み10億5,000万トンを1.4%上回る10億6,500万トンになるとの見通しを示しました。
20年は前年比5.4%増であり、初めて10億トンを上回ります。21年は増産ペースこそ鈍化しますが、着実に生産量を増やすと予想されていることは、中国経済成長に対する自信の強さを反映するものになります。
原料である鉄鉱石に関しては、21日の大連商品取引所で一時は前日比で14.4%高となる1トン=1,194元まで上昇しています。終値では1,147元、22日には1,100元も割り込んでいますが、マーケットが来年の需要環境を楽観視していることが確認できます。鉄鉱石に関しては、ブラジルのミナスジェライス州の鉱山で土砂崩れが発生したこと、オーストラリアでも供給が落ち込んでいる供給サイドの影響もありますが、いずれにしても地合は引き締まっています。
中国経済に対する楽観的な見通しを後押しする材料になります。建設業や重工業はロックダウンの影響を相対的に受けづらいことで、欧米の鉄鋼需要も底固く推移するとみられています。
【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】