小菅努の商品アナリスト日記

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非鉄/鉄鉱石/レアメタル

鉱山会社のリストラ開始も、値崩れ続くニッケル相場

【ニッケル】
LMEニッケル相場の下落が止まりません。過剰供給に対する警戒感が強く、他の非鉄金属相場の動向と関係なく値下がりしています。

無題

ニッケル、24年は一段と供給過剰に=INSG
https://jp.reuters.com/world/china/LUVBQ5Z665I3PH2LOIWKRXFYKE-2023-10-04/

「世界のニッケル市場の供給過剰が2023年の22万3000トンから24年には23万9000トンに拡大するとの見通し」

需要はステンレス鋼、バッテリー向けが堅調ですが、それ以上にインドネシアなどの増産圧力が強く、構造的な供給過剰に陥ったとの見方が優勢です。

BHP、豪ニッケル選鉱場の一部を6月から操業停止 相場下落が影

BHP、ニッケル部門の評価損計上も 10─12月鉄鉱石生産は2%減
https://jp.reuters.com/markets/world-indices/RFG5CUVRKVJCLL6XSMEQOVFH6U-2024-01-18/

さすがにニッケル相場低迷に耐えられないとBHPが豪州における生産調整を発表しましたが、より大規模な生産調整の動きが求められています。そもそもLME在庫の急増が続いている現状では、相場の反発余地は限られます。

ニッケル鉱石の禁輸巡り舌戦 インドネシア大統領選

2月のインドネシア大統領選の結果によっては、ニッケル鉱石の禁輸政策の見直しが進む可能性がありますが、比較的効果があるとされるニッケル鉱石の禁輸政策も、ニッケル相場を押し上げるには至っていません。国内の川下産業の育成には効果がある模様ですが、とにかく生産調整が求められ、それを促すのための安値との理解が必要でしょう。

インドネシアの鉱石輸出規制とその影響 




年初から大連鉄鉱石相場が急伸中

【鉄鉱石】
年初から大連鉄鉱石先物相場が急伸しています。2023年末の1トン=973.5元に対して、1月3日の高値は1,025.5元に達している。2021年8月上旬以来の高値を更新しています。

何か大きな材料が浮上したといよりも、中国政府の景気対策期待を織り込んでいる模様です。

Iron Ore extends gains as further support from Beijing expected
習近平国家主席の年頭所感において、「景気回復の前向きな流れを加速し、長期的な経済の安定を実現しなければならない」と発言した影響なども指摘されています。

習近平氏「経済の安定実現」 年頭所感、台湾統一に意欲

中国株は安値低迷状態が続いていますが、鉄鉱石相場の2年5カ月ぶりの高値更新が本物であれば、コモディティ価格全体は中国経済の減速リスクを過度に織り込んでいる可能性が警戒されます。鉄鉱石相場の急伸が一時的な異常値の形成なのか、他コモディティ相場高に先行した動きなのか見極めが必要な環境になっています。

鉄鉱石先物が1年半ぶり高値から下落ー中国の住宅市場巡る悲観論で

「ゴールドマン・サックス・グループやモルガン・スタンレー、UBSグループを含む大手10社は、中国の不動産建設が3年連続で縮小する方向にあるとの見通しを示した。不動産セクターは同国の鉄鋼需要の40%近くを占める。」

なお、昨年12月の調整局面ついては、金融各社が2024年の中国不動産建設縮小見通しを示した影響が指摘されていましたが、現状では鉄鋼生産の落ち込みを織り込むことは拒否されています。

無題
大連鉄鉱石先物相場(日足)


【お知らせ】
大阪取引所のウェビナーの動画がYoututeで公開されました。12/16(土)開催分です。金、原油、トウモロコシ相場について、初心者向けの内容で構成しています。よろしければご覧ください。

コモディティ ・ マーケットの分析と2024年の展望
https://www.youtube.com/watch?v=auB2uLG2yDM

  

アンゴラがOPEC脱退を表明、産油国カルテルOPECはどうなる?

【原油】
アフリカの産油国、アンゴラが石油輸出国機構(OPEC)からの脱退を表明しました。

アンゴラ、OPEC脱退-原油生産枠に反発し16年の連盟見限る
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-12-21/S60O71DWLU6800

アゼベド鉱物資源・石油相は、OPEC加盟の利益がないと指摘しています。OPECの協調減産体制に対してアンゴラは不満を強めており、生産協定に縛られないフリーハンドを確保したことになります。

Several OPEC+ countries announce additional voluntary cuts to the total of 2.2 million barrels per day

36th OPEC and non-OPEC Ministerial Meeting
11月30日の会合で協調減産の強化ではなく自主減産に留まったことで、OPEC内に不協和音が発生していることは躊躇されていましたが、決め手になったのはアンゴラの2024年の生産枠引き下げでしょう。第三者機関のアセスメントによるものですが、アンゴラの不満が爆発しました。

アンゴラに大規模な増産能力はないとみられるため、短期的な需給環境に影響はほとんどないでしょう。将来的にアンゴラが本当に増産能力を有するのかは、今後の投資状況に依存します。

それより問題なのは、アンゴラの脱退をきっかけにOPECに亀裂が走ってしまうことでしょう。幾ら減産しても原油価格が上昇しないことで、減産の「コスト」と「利益」のバランスが取れているのか疑問視される状況になっています。第二、第三のアンゴラが出てくると、OPECはその歴史的役割を終えてしまう可能性もあります。


アンゴラ、OPEC脱退 「自国の利益にならず」と石油相
https://news.yahoo.co.jp/articles/61c54d02ff8bb24b7ba0b85afd66dd3668f69337
 
Yahoo!ニュースのこの記事には、Expertコメントを書きました。


【銅】
2023年の銅相場は、値崩れこそ起こしませんでしたが、上値の重さが目立ちました。脱炭素社会の重要な貴金属として注目度は高かったものの、中国経済が予想外の停滞を迫れたこともあり、価格は総じて年前半にピークを付け、その後は上値の重さが目立ちました。

無題
LME銅相場(3ヵ月物)

日本経済新聞に資源大手BHPグループの最高商務責任者(CCO)パント氏のインタビュー記事が掲載されましたが、銅相場の現状と将来を考える上で参考になります。

銅価格の見通しは 需給ミスマッチで上昇も
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO77165310R21C23A2ENG000/

現状については、「銅は今後2~3年はやや供給過多になると見ており、現状の軟調な推移も驚きはない。」としています。一方、将来については「その後は脱炭素関連需要が増えて構造的な供給不足に陥り、解消されないとみる。」としています。

つまり足元の需給緩和、将来の供給不足を見込んでいます。現状では中国経済の停滞もあって需給バランスは緩和状態にありますが、これから脱炭素関連の需要が増えれば、一時的ではなく構造的な供給不足に移行するとの見方になります。

このため、BHPは「我々はここに商機があると判断し、銅資産へ投資してきた」と、現在から投資を行っている訳です。構造的な供給不足状態に陥ってから投資を開始しても間に合いません。その時の需要にしっかりと応えるための投資が現在行われている訳です。過剰投資のリスクには注意が必要ですが、最近の価格低迷状態を見る限りだと、寧ろ投資の遅れが警戒される状況です。長期目線での銅・銅関連資産投資は有望でしょう。

銅関連株だと、総合商社以外にもアルコニックス(3036)、三菱マテリアル(5711)、住友金属鉱山(5713)、DOWAホールディングス(5714)などがあります。また、銅価格に直接投資するものとしては、WisdomTree 銅上場投資信託(1693)もあります。

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プロフィール
小菅 努(こすげ つとむ)

1976年千葉県松戸市生まれ。筑波大学第一学群社会学類卒。商品先物・FX会社の営業本部、ニューヨーク事務所、調査部門責任者等を経て、現在はマーケットエッジ(株)代表取締役。商品アナリスト。貴金属、金属、エネルギー、ゴム、農産物などの商品先物市場全般が主なカバー対象です。商社、事業法人、金融機関向けに分析レポートを配信しています。為替、株価指数などもカバーしています。

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