小菅努の商品アナリスト日記

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ロシアが小麦輸出の関税引き上げか、国内食料インフレ回避を優先

穀物価格が高騰することは、生産国にとって光と影があります。光はもちろん、高値で輸出できることですが、影は国内でも食糧価格の高騰は大きな問題になることです。このため、穀物価格が高騰すると、国内価格の安定を優先するため、国際市場に供給を渋る動きが生じることは珍しくありません。厳しいものだと輸出停止、軽いものだと税率引き上げになりますが、ロシアでは3/1から6/30まで小麦の輸出関税引き上げが計画されています。25ユーロ/トンから50ユーロまで倍増させる計画になっています。

トウモロコシや大豆とは異なり、国際小麦需給は必ずしもタイト化している訳ではありません。ただ、ロシア産の市場に対する供給が抑制されれば、米国産やウクライナ産などに需要シフトが生じ、不足の混乱が生じることになります。

既にアルゼンチンが1~2月のトウモロコシ輸出を停止していますが、ロシア産小麦の供給に不透明感が強くなっています。これでも問題が解決しない場合には、輸出停止といった更に強硬な対応策が講じられる可能性も想定しておくべきでしょう。




【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】


USDA1月需給報告で穀物急伸、本当にレーショニングを起こせるのか?

米農務省(USDA)需給報告を受けて、シカゴ穀物相場は全面高の展開になりました。米国産大豆の期末在庫見通しは、前月の1.75億Buから1.40億Buまで下方修正されています。旧穀の5.25億Buとの格差がさらに拡大しています。わずか0.35億Buの下方修正ですが、1.40億Buは事実上の在庫枯渇見通しといっても良い数値のため、マーケットも敏感に反応せざるを得ません。

頼みの綱となる南米産の生産も、今報告ではアルゼンチン産が5,000万トンから4,800万トンまで一気に下方修正されました。ブラジル産が1億3,300万トンで据え置きとなったことは評価できますが、南米産供給に多くを期待できる状況にはありません。

やはり、大豆はレーショニングを引き起こしていくことが必要なのでしょう。価格高騰で強引に需要を抑制し、需給リバランスを促すことになります。ただこれは教科書的な解説であり、現実に可能かというと難しい問題です。飼料穀物の需要を抑制すれば、食肉価格は高騰します。中国ではすでに豚肉価格が高騰していますが、これ以上の高騰を許容できるのでしょうか。植物油も、あらゆる種類で高騰しています。しかも、クリーンエネルギー政策でバイオ燃料需要も増えやすい状態にあり、価格高騰で需要を抑制することは可能でしょうか。穀物相場の高騰は、少なくともまだレーショニングは起きないと考えていることを意味しているようです。

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

アルゼンチンがコーン輸出停止、囲い込みが始まっている

アルゼンチン農業省は、2月28日までトウモロコシの輸出を停止すると発表しました。アルゼンチンではインフレが深刻化しており、12月は大豆圧砕業者や港湾業者の労働者が、インフレ率に見合った賃上げを要求するストライキを決行するなど、混乱が生じていました。こうした中、2ヵ月と期間を区切って輸出を停止し、国内の飼料穀物供給を優先させることで、価格安定化を目指すことになります。

こうした政策は既にロシアが小麦分野で発表しており、新型コロナウイルスやラニーニャ現象の影響で供給不安が高まり、価格が高騰する中、一部生産国が囲い込みを開始した状況と言えます。アルゼンチンは、生産面でも輸出面でも、米国とブラジルに次ぐトウモロコシの主要供給国になります。期間が短いために、農家としては輸出解禁まで輸出を先送りする選択肢もありますが、インフレ率が十分に改善しない場合には、更に強硬な施策が導入される可能性も残されます。

米国も十分な追加供給余力を残しているとは言い難く、もはやこれ以上の不作ア許容できない状況です。ただ、足元の南米では乾燥懸念が強くなっており、年末のタイミングでもファンドが穀物相場を積極的に買い進んでいるのは、穀物相場高のプロセスはまだ終わっていないとみている向きが多い模様です。


【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】
 

アルゼンチンのストは2週間目へ、大豆相場高騰の主因です

アルゼンチンで大豆圧砕業界のストライキが続いています。アルゼンチンは家畜飼料大豆ミールの主要供給国ですが、労働者が賃上げを要求してストライキに突入して、間もなく2週間になろうとしています。

労働者はインフレに見合った賃金の引き上げ、更に新型コロナウイルスのパンデミックに対する十分な補償を求めています。アルゼンチンの過去12か月のインフレ率は35.8%であり、賃上げが行われなければ、実質賃金が大きく目減りする環境になっています。

また、油脂労働者・雇用者組合(SOEA)は、22日に港湾労働者とも協力して36時間の時限ストに入りました。ストの範囲が、圧砕業の労働者から、港湾労働者にまで広がる最悪の状況です。

大豆ミールの生産が止まり、トラックによる輸送が止まり、港湾業務も止まった状態になっています。圧砕業者側の発表では、ロザリオ港では100カーゴ以上の出荷が停滞している模様です。

南米では、穀物価格が高騰する流通や港湾労働者がストライキに突入する傾向がありますが、今回は圧砕業の労働者が起点になったという点では珍しい現象です。これからクリスマスに入りますが、労働者が要求しているインフレ率を上回る賃上げは簡単ではなく、交渉の難航が報告されています。越年させずに解決できるのか、リスク評価が難しい状況になっています。

シカゴ大豆相場が過去最高値を更新する主要な要因の一つになっている動きです。

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【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

ロシアが小麦輸出規制を検討か? 穀物市場の「合成の誤謬」

ロシアのプーチン政権は、国内食料価格安定化のため、穀物輸出規制を検討している模様です。Reutersは、2月15~6月30日まで小麦輸出に1トン当たり2,000ルーブル(27.3ドル)や25ユーロ(30.30ドル)の課税案があると報じています。課税によってロシア産小麦の価格競争力を低下させ、輸出抑制によって国内需給・価格を安定化させる政策になります。更に踏み込んで、穀物輸出全体の総量規制を行う案も浮上しています。こちらは強引に輸出枠を設定して、国内需給の安定化を目指すものです。小麦以外にも、ライ麦、大麦、トウモロコシなどでも同様の政策が導入される可能性があります。

正式な決定が行われた訳ではありませんが、プーチン大統領はパン、砂糖、ヒマワリ油などの高騰を批判しているため、何等かの対応が講じられるのはほぼ確実でしょう。

ロシアは、しばしばこうした輸出規制の政策を導入します。今年はコロナ禍とラニーニャ現象で穀物需給の歪みが小麦相場の高騰を促しているため、ロシア国内の事情を重視すれば輸出規制は必要な施策と言えるのでしょう。しかし、国際小麦市場に目を向けると、当然に予想されていたロシア産小麦輸出が減少することは、大きな混乱をもたらすことになります。需要家はロシア以外からの調達を増やす必要性に迫られ、想定外の混乱が生じるリスクが高まります。仮に需給に大きな問題がなくても、投機筋にとっては絶好の物色機会になるでしょう。

ロシア国内価格を安定化させるための施策は、国際価格を押し上げる施策とも言えます。ロシアとしては正しい行動が、世界全体からみると間違った行動になります。いわゆる「合成の誤謬」と言われるものですが、食料生産国の特権と言えるかもしれません。

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プロフィール
小菅 努(こすげ つとむ)

1976年千葉県松戸市生まれ。筑波大学卒。商品先物・FX会社の営業本部、ニューヨーク事務所、調査部門責任者等を経て、現在はマーケットエッジ(株)代表取締役。商品アナリスト。貴金属、金属、エネルギー、ゴム、農産物などの商品先物市場全般が主なカバー対象です。商社、事業法人、金融機関向けに分析レポートを配信しています。為替、株価指数などもカバーしています。

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