小菅努の商品アナリスト日記

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シカゴ穀物相場の高騰続く

シカゴ穀物相場の高騰続く
レーショニングが必要か

年初からシカゴ穀物相場が急騰している。トウモロコシ相場は、昨年12月前半の1Bu=420セント水準に対して、1月12日の米農務省(USDA)需給報告が発表された後には、530セント台まで値上がりしている。大豆先物相場も、同1100セント台後半に対して、足元では1400セント台前半まで値上がりしている。トウモロコシは2013年6月以来、大豆は14年6月以来の高値を、それぞれ更新している。

USDAによると、2020/21年度の米国産期末在庫見通しは、トウモロコシで15.52億Buとなっているが、これは前年度の19.19億Buを大きく下回っている。決して生産環境が大幅に悪化している訳ではないが、需要が前年度の139.63億Buから145.75億Buまで急増する見通しにある中、需要をカバーするに足る供給量を確保するのは難しい情勢になっている。これは大豆も同様であり、20/21年度の期末在庫は前年度の5.25億Buから1.40億Buまで急減する見通しになっている。もはやこれ以上の在庫削減は難しい状況に陥っている。

この状況を南米産の豊作でカバーすることが期待されていたが、ラニーニャ現象の影響で今季の南米では土壌水分不足が深刻化しており、南米産の穀物生産高見通しに対しては下方修正圧力が目立つ状況になっている。南米産の生産高も決して大きく落ち込んでいる訳ではないが、需要拡大圧力をカバーするだけの増産圧力を発生することが難しい状況になっている。

この結果、現在の穀物市場では「レーショニング」が始まったとの見方が強い。レーショニングとは、需給ひっ迫状態が深刻化した際に、価格を大きく押し上げることで需要を抑制し、需給バランスの安定化を促す動きのことである。21/22年度の北半球の生産はまだ始まってもいない段階であり、当面は需要を抑制、更には引き下げることで、穀物需給バランスシートを維持する必要性が高まっている。

ただ、現在は主要穀物相場が軒並み高騰しているため、トウモロコシや大豆相場を押し上げても、代替品に対する需要シフトは想定できない状況にある。大豆の場合だと、飼料である大豆ミールに対しては、豚肉価格の高騰が問題になっている中国での引き合いが強い状態が続いている。大豆油に関しても、パーム油やカノーラ油も高騰しているため、大豆油からの需要シフトが想定できる状況にはない。このため、レーショニングが求められながらも、どこまで価格が高騰すればレーショニングが始まるのか分からないとの不安心理が、穀物相場の高騰をエスカレートさせている。

 当面は価格高騰で農家に対して21/22年度の作付面積拡大など増産を働き掛けつつ、短期目線では需要を抑制することで、穀物需給バランスシートの破たん回避を探る展開が続くことになる。
(2021/01/06執筆)

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)中部経済新聞2021年1月18日「私の相場観」

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ロシアが小麦輸出の関税引き上げか、国内食料インフレ回避を優先

穀物価格が高騰することは、生産国にとって光と影があります。光はもちろん、高値で輸出できることですが、影は国内でも食糧価格の高騰は大きな問題になることです。このため、穀物価格が高騰すると、国内価格の安定を優先するため、国際市場に供給を渋る動きが生じることは珍しくありません。厳しいものだと輸出停止、軽いものだと税率引き上げになりますが、ロシアでは3/1から6/30まで小麦の輸出関税引き上げが計画されています。25ユーロ/トンから50ユーロまで倍増させる計画になっています。

トウモロコシや大豆とは異なり、国際小麦需給は必ずしもタイト化している訳ではありません。ただ、ロシア産の市場に対する供給が抑制されれば、米国産やウクライナ産などに需要シフトが生じ、不足の混乱が生じることになります。

既にアルゼンチンが1~2月のトウモロコシ輸出を停止していますが、ロシア産小麦の供給に不透明感が強くなっています。これでも問題が解決しない場合には、輸出停止といった更に強硬な対応策が講じられる可能性も想定しておくべきでしょう。




【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】


USDA1月需給報告で穀物急伸、本当にレーショニングを起こせるのか?

米農務省(USDA)需給報告を受けて、シカゴ穀物相場は全面高の展開になりました。米国産大豆の期末在庫見通しは、前月の1.75億Buから1.40億Buまで下方修正されています。旧穀の5.25億Buとの格差がさらに拡大しています。わずか0.35億Buの下方修正ですが、1.40億Buは事実上の在庫枯渇見通しといっても良い数値のため、マーケットも敏感に反応せざるを得ません。

頼みの綱となる南米産の生産も、今報告ではアルゼンチン産が5,000万トンから4,800万トンまで一気に下方修正されました。ブラジル産が1億3,300万トンで据え置きとなったことは評価できますが、南米産供給に多くを期待できる状況にはありません。

やはり、大豆はレーショニングを引き起こしていくことが必要なのでしょう。価格高騰で強引に需要を抑制し、需給リバランスを促すことになります。ただこれは教科書的な解説であり、現実に可能かというと難しい問題です。飼料穀物の需要を抑制すれば、食肉価格は高騰します。中国ではすでに豚肉価格が高騰していますが、これ以上の高騰を許容できるのでしょうか。植物油も、あらゆる種類で高騰しています。しかも、クリーンエネルギー政策でバイオ燃料需要も増えやすい状態にあり、価格高騰で需要を抑制することは可能でしょうか。穀物相場の高騰は、少なくともまだレーショニングは起きないと考えていることを意味しているようです。

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

アルゼンチンがコーン輸出停止、囲い込みが始まっている

アルゼンチン農業省は、2月28日までトウモロコシの輸出を停止すると発表しました。アルゼンチンではインフレが深刻化しており、12月は大豆圧砕業者や港湾業者の労働者が、インフレ率に見合った賃上げを要求するストライキを決行するなど、混乱が生じていました。こうした中、2ヵ月と期間を区切って輸出を停止し、国内の飼料穀物供給を優先させることで、価格安定化を目指すことになります。

こうした政策は既にロシアが小麦分野で発表しており、新型コロナウイルスやラニーニャ現象の影響で供給不安が高まり、価格が高騰する中、一部生産国が囲い込みを開始した状況と言えます。アルゼンチンは、生産面でも輸出面でも、米国とブラジルに次ぐトウモロコシの主要供給国になります。期間が短いために、農家としては輸出解禁まで輸出を先送りする選択肢もありますが、インフレ率が十分に改善しない場合には、更に強硬な施策が導入される可能性も残されます。

米国も十分な追加供給余力を残しているとは言い難く、もはやこれ以上の不作ア許容できない状況です。ただ、足元の南米では乾燥懸念が強くなっており、年末のタイミングでもファンドが穀物相場を積極的に買い進んでいるのは、穀物相場高のプロセスはまだ終わっていないとみている向きが多い模様です。


【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】
 

アルゼンチンのストは2週間目へ、大豆相場高騰の主因です

アルゼンチンで大豆圧砕業界のストライキが続いています。アルゼンチンは家畜飼料大豆ミールの主要供給国ですが、労働者が賃上げを要求してストライキに突入して、間もなく2週間になろうとしています。

労働者はインフレに見合った賃金の引き上げ、更に新型コロナウイルスのパンデミックに対する十分な補償を求めています。アルゼンチンの過去12か月のインフレ率は35.8%であり、賃上げが行われなければ、実質賃金が大きく目減りする環境になっています。

また、油脂労働者・雇用者組合(SOEA)は、22日に港湾労働者とも協力して36時間の時限ストに入りました。ストの範囲が、圧砕業の労働者から、港湾労働者にまで広がる最悪の状況です。

大豆ミールの生産が止まり、トラックによる輸送が止まり、港湾業務も止まった状態になっています。圧砕業者側の発表では、ロザリオ港では100カーゴ以上の出荷が停滞している模様です。

南米では、穀物価格が高騰する流通や港湾労働者がストライキに突入する傾向がありますが、今回は圧砕業の労働者が起点になったという点では珍しい現象です。これからクリスマスに入りますが、労働者が要求しているインフレ率を上回る賃上げは簡単ではなく、交渉の難航が報告されています。越年させずに解決できるのか、リスク評価が難しい状況になっています。

シカゴ大豆相場が過去最高値を更新する主要な要因の一つになっている動きです。

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プロフィール
小菅 努(こすげ つとむ)

1976年千葉県松戸市生まれ。筑波大学卒。商品先物・FX会社の営業本部、ニューヨーク事務所、調査部門責任者等を経て、現在はマーケットエッジ(株)代表取締役。商品アナリスト。貴金属、金属、エネルギー、ゴム、農産物などの商品先物市場全般が主なカバー対象です。商社、事業法人、金融機関向けに分析レポートを配信しています。為替、株価指数などもカバーしています。

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