小菅努の商品アナリスト日記

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南アのパンデミックが深刻化、白金供給は大丈夫?

南アフリカで新型コロナウイルスの感染者が急増しています。保健当局の発表だと、6日の新規感染者数は2万1,000人を超えています。昨年圧の第一波のピークが1万3,000人台ですが、南半球の夏場にそれ以上に感染被害が深刻化している状況は重く受け止めるべきでしょう。このまま感染拡大が続くと、ロックダウン(都市封鎖)が更に強化され、鉱山活動そのものや、サプライチェーンにも大きな混乱が生じる可能性があります。

実際に、昨年はパンデミックによる需要ショックよりも供給ショックの方が大きく、白金需給はタイト化しました。南アフリカ一か国に供給を高いレベルで依存しているため、南アフリカがパンデミックのショックを回避できれば安定供給が見込まれる一方、ショックに見舞われると他コモディティ以上に供給制約が強まる関係性にあります。

ロックダウンの強化がなくても、鉱山や港湾、輸送といった部門でクラスターが発生すると、短期的な品薄感が一気に強まる可能性もあります。南アフリカ通貨ランドは、ロックダウン強化を見込んで急落対応を迫られていますが、鉱山活動は正常の状態を保つことができるのでしょうか。白金相場の急騰シナリオの一つとして、南アフリカのパンデミックの展開状況、それに対する政府の対応にも注意が必要でしょう。

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【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】


燃料電池車の普及にはコスト削減が必要、1台当たりのプラチナ搭載量は削減中

燃料電池車(FCV)の普及が進まない理由は幾つかありますが、その一つに価格の高さがあります。例えば、テスラの電気自動車(EV)だと、小型のEVセダンとの位置付けになる「モデルS」は511万円からの販売になっていますが、トヨタのFCV「MIRAI」は710万円~となっています。日本の場合だと、エコカー減税、環境性能割、グリーン化特例などで合計141.9万円(トヨタのウェブサイトより)の優遇が受けられるとされており、政府補助を前提にしてようやくEVと競合できる状態に留まっています。


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(画像出所)トヨタ

車両製造コストが高いためですが、燃料電池(FC)には30~60グラムのプラチナが使用されるため、同クラスのEVと比べるとパワートレイン系コストは同クラスのEVに対して10倍ともいわれています。米調査会社ストラテジック・アナリシスの推計によると、FCスタック1個はトヨタで約1.1万ドル(約114万円)と推計されています。現在のプラチナ小売価格は3,870円/グラム(田中貴金属)のため、プラチナコストは11.6万~23.2万円になります。FCスタックのコストの10.1~20.3%がプラチナの計算になります。

トヨタは詳細を明らかにしていませんが、新型「MIRAI」ではプラチナの使用量を半分以下に減らしたと報じられています。仮に15~30グラムだと、そのコストは5.8万~11.6万円削減できる計算になります。これ以外にも、生産時間の短縮などによって、システム全体のコストを約3分の1削減したと報じられています。

FCVはプラチナの新たな消費先として注目されていますが、普及を目指すには価格低下が必要であり、そのためにはプラチナ使用量の削減を目指す取り組みが強化されることになります。プラチナを使用しないという技術的な開発も行われており、FCVの販売台数とプラチナ使用量は単純な比例関係にはならない見通しです。

ただ、仮に1台当たり15グラムでも、1万台だと150キログラム、10万台だと1.5トンになります。オンス換算だと、1万台当たりで4,822オンスの需要が創出されます。市場の成長と技術開発のバランスが問われますが、順調に市場が拡大すれば、プラチナ消費量の拡大が期待できることには変わりがないでしょう。

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(画像出所)トヨタ

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】


現代自動車がFCVで日本市場に再参入、白金需要の刺激になるか?

日本経済新聞は12月19日付けで、韓国の現代自動車が2022年に日本市場に再参入すると報じています。日本では、2001年に参入したものの、ブランドイメージの低さもあって販売が伸び悩み、2010年に乗用車販売を終了し、現在は観光バスの販売を継続しているのみになります。しかし、2020年6月に日本語のTwitterアカウントを開設し、今度は燃料電池車(FCV)と電気自動車(EV)に特化した事業展開で、商機を狙う模様です。

韓国車の日本におけるイメージは良好とは言い難く、リセールバリューを考えても従来の延長線上では商機がありません。ただ、現代自動車はFCVに関しては世界のトップメーカーであり、日本政府が水素産業育成政策を展開する中、この分野に特化すれば商機があると判断した模様です。

市場調査会社SNEリサーチによると、2020年1~9月期のFCV販売は世界全体で6,664台となっていますが、現代自動車が4,917台(シェア73.8%)でトップとなり、2位のトヨタの767台(11.5%)、3位のホンダの187台(2.8%)を大きく上回っています。

投入予定とされているのがSUVの「NEXO(ネッソ)」で、水素燃料を1回5分の充填で、約820㎞を走行可能とされています。一方、トヨタは12月9日に「MIRAI」の新型車を発表し、航続距離を650㎞から850㎞まで伸ばしました。また、ホンダは「クラリティ フューエル セル」を販売しています。

FCVは価格の高さに加えて水素ステーションのインフラ整備の遅れがボトルネックとなり、国内では十分な市場を確保できているとは言い難い状況です。ただ、日本も脱炭素社会を目指す方針を鮮明にし、いわゆる完全なガソリン車の販売を停止する方向に向かう中、新エネルギー車の選択肢の一つとして、FCVの存在感は増しています。

現代自動車に市場シェアを奪われるだけの結果にあっては元も子もありませんが、世界最大のFCVメーカーの参入が国内勢にとっても良い刺激になって欲しいものです。トヨタの新型「MIRAI」はセルの高性能化によって白金使用料を従来の半分まで削減したとされていますが、白金需要環境の将来を占う上で、FCV市場の行方は大きな意味を持つことになります。

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(画像出所)現代自動車

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

「北浜投資塾」プラチナ相場の見方を解説

大阪取引所の「北浜投資塾」で、プラチナ相場の見方を解説しました。
約10分の動画が全10本になります。


※下の画像をクリックすると「北浜投資塾」の該当ページに飛びます。

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経済再開で白金が安値修正

経済再開で白金が安値修正
需要と供給の双方が激変

 NY白金先物相場は、3月16日の1オンス=562.00ドルをボトムに、5月下旬には一時900ドル台を回復するなど、底固く推移している。急落前の1000ドル水準を回復するには至っていないが、概ね2月下旬以来となる約3か月ぶりの高値を更新している。

新型コロナウイルスは他の産業用素材と同様に白金需要に対しても大きなダメージをもたらし、需給緩和圧力が白金相場を大きく下押しした。各国で行動制限が行われた結果、自動車販売のみならず自動車生産にも壊滅的と言える被害が生じ、自動車排ガス用の触媒需要は大きく落ち込んだ。また、中国では宝飾品販売店の休業が進んだこともあり、価格が下落しても宝飾需要も伸び悩んだ。工業関連需要に関しても、各種プラント建設がストップしたことで、白金の需要計画に大きな影響が生じている。頼みの綱と言える投資需要も、投資家の関心は安全資産である金に集中し、需給緩和が決定的となった白金に関しては、割安感や下げ過ぎ感が強まったものの、買いを入れる動きは鈍かった。

ワールド・プラチナ・インベストメント・カウンシル(WPIC)の調査では、今年1~3月期の世界白金需要は164.9万オンスと、昨年10~12月期の174.2万オンスから大きく落ち込んでいる。

ただ、中国では3月、欧米でも4~5月にかけては行動制限を解除する動きが始まり、白金需要環境の改善期待が、白金相場の反発を促している。直ちに通常の需要環境に回帰できる訳ではないが、経済が動き始めていることで、需要の落ち込みは最悪期を脱したとの評価が優勢になっている。これは原油や非鉄金属相場などにも共通したテーマであり、「需要低迷」よりも「需要の回復傾向」が高く評価されている。

 もはや新型コロナウイルスの感染が広がる前のような需要環境に回帰しないといった見方もあるが、これからどのようなペースで需要環境の回復を進めていくことが可能かが、白金相場の反発力を決定づけることになる。

 一方、新型コロナウイルスは供給環境にも大きなダメージを与えた。白金鉱山(特に南アフリカの高深度鉱区)の操業はマンパワーに強く依存しており、新型コロナウイルスの感染対策で操業停止を迫られた地域も多い。更に、南アフリカでは一部鉱山会社で精錬施設の爆発事故が発生したこともあり、1~3月期の世界鉱山生産は128.3万オンスと、 昨年10~12月期の162.7万オンスを大きく下回っている。

 鉱山においても操業再開の動きが広がっているが、再び新型コロナウイルスの感染が広がるような事態になると、突然に供給が止まるリスクを抱えることになる。また、感染被害防止のために新たな操業体制の模索も求められている。需要ショックからの立ち直りの速さの背景には、こうした供給環境の急激な変化も影響している模様だ。
(2020/05/28執筆)
【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)中部経済新聞2020年06月01日「私の相場観」

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プロフィール
小菅 努(こすげ つとむ)

1976年千葉県松戸市生まれ。筑波大学卒。商品先物・FX会社の営業本部、ニューヨーク事務所、調査部門責任者等を経て、現在はマーケットエッジ(株)代表取締役。商品アナリスト。貴金属、金属、エネルギー、ゴム、農産物などの商品先物市場全般が主なカバー対象です。商社、事業法人、金融機関向けに分析レポートを配信しています。為替、株価指数などもカバーしています。

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