小菅努の商品アナリスト日記

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プラチナ/パラジウム

プラチナ市場の内部要因環境に変化、ファンドは底入れ判断か

【プラチナ】
プラチナ市場で、ファンドの買い圧力が強くなっていることが確認できました。米商品先物取引委員会(CFTC)のCOTレポートでは、12月26日時点で買いポジションが前週比4,019枚増の4万4,404枚、売りポジションが同2,645枚減の2万0,742枚となっています。

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(出所)CFTC

最近のプラチナ相場の傾向としては、反発してもショートカバーのみであり、新規で買いポジションを構築することは躊躇されました。高値を売り込み、安値でショートカバー(買い戻し)というのがこれまでのパターンでした。

しかし、950ドルの抵抗を上抜いたことで、ファンドが底入れの可能性を意識して買いポジションを構築し始めた模様です。その後、プラチナ相場は950ドルに続いて1,000ドルの節目馬上抜きましたが、これまでの戻り売り再開のパターンが崩れると、本格的な上昇期待が強まります。

チャート環境と連動して内部要因環境の改善も確認できるデータになりました。

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NYMEXプラチナ先物相場(日足)


【原油】
2023年は、石油輸出国機構(OPEC)加盟国の減産、非加盟国の増産と世界は二分しました。OPECにとっては、非OPECの増産を眺めて逆に減産対応を迫られる厳しい環境になりました。

Reutersは、2024年前半のOPEC産原油の市場シェアが27%弱と、2020年以来の低水準になるとの見通しを示しています。アンゴラのOPEC離脱とOPECプラスとしての協調減産の影響が指摘されています。

2024年もOPEC加盟国の減産、非加盟国の増産が続くのであれば、程度の違いはあってもOPECの市場シェアは低下し、それが石油市場への支配力を低下させる悪循環に陥ります。

OPECの世界石油市場シェア、24年前半に4年ぶり水準に縮小の見通し

「世界の石油需要が加速するか、OPECが原油価格低下を容認しない限り、減産緩和に踏み切るのは難しい情勢だ」

需要が拡大してOPEC加盟国と非加盟国がともに増産可能な環境が理想的ですが、そうならない場合には、1)原油価格の下落を容認する、2)減産で市場シェアを更に失うと、どちらにしてもOPECにとっては受け入れがたい不都合な未来しか存在しません。

OPECとしてはOPECプラスの枠組み拡大も選択肢になりますが、敢えて協調減産に参加しようとするような国はありません。11月30日の会合でブラジルがOPECプラスの協力憲章に参加することが表明されましたが、ブラジルはあくまでも対話と意見交換のためとしており、協調減産には参加する義務がないことを確認しています。

ブラジル、OPECプラスの協力憲章に参加へ-拘束力なし
2024年の原油需給バランスを安定化させるためのハードルは高くなっています。これは、価格に対して下振れリスクとして機能することになります。


【お知らせ】
大阪取引所のウェビナーの動画がYoututeで公開されました。12/16(土)開催分です。金、原油、トウモロコシ相場について、初心者向けの内容で構成しています。よろしければご覧ください。

コモディティ ・ マーケットの分析と2024年の展望
https://www.youtube.com/watch?v=auB2uLG2yDM


プラチナ相場が1,000ドル突破、上昇トレンドを追認

【プラチナ】
NYMEXプラチナ先物相場が1オンス=1,000ドルの節目を上抜きました。今夏はこの1,000ドルで2度にわたって抵抗を受けた後、レンジを850~950ドルまで切り下げていましたが、年末を前に950ドルに続いて1,000ドルも上抜きました。チャート環境は一段と強気に傾き、500ドル刻みで上値切り上げを打診する見通しです。

プラチナ市場では、ボックス相場を前提としたアルゴ系ファンドが価格を支配する傾向が強くなっているため、1,000ドル戻り売りが失敗と確定すれば、取引レンジが切り上がるでしょう。

金相場は年末を前に終値で過去最高値を更新しています。来年の利下げサイクルを先取りしていますが、その流れでプラチナ相場も物色されることで、チャート環境の改善を促すことが可能かとの目線になります。

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NYMEXプラチナ先物相場(日足)

そしてもう一つ重要なポイントは、パラジウム相場が改めて軟化していることです。イギリスのロシア産金属制裁の思惑から急伸していましたが、改めて上値を圧迫されています。

パラジウム急騰 ロシア産金属の制裁で思惑買い
これは、白金族貴金属(PGM)全体の収益環境改善にブレーキを掛けることになります。最近のプラチナ相場の上昇でも、鉱山会社のリストラは不可避でしょう。

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NYMEXパラジウム先物相場(日足)


【金】
LBMAのLondon Fixingで金価格が過去最高値を更新しました。まだCOMEX先物相場が場中に付けた過去最高値(2,152.30ドル)には到達していませんが、ロンドン金価格は各種金投資商品の評価基準になるため、金投資の評価向上に直結します。

ロンドン金価格、過去最高値更新=LBMA
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/IRL2Y6UD55MVHEORZHXTKKUAUU-2023-12-27/

来年の利下げを織り込む動きが、金市場に限らずマーケット全体で広がっています。過熱感も指摘されていますが、22日に発表された11月PCEデフレーターがやはり金市場の地合を大きく変えたと見て良いでしょう。

参考:11月PCEデフレーター、6ヵ月年率換算で2%割れの衝撃

年末時点の価格が過去最高値を更新するのは確実な情勢であり、あとは12月4日に瞬間的に記録した2,100~2,150ドルのレンジでの経験値を増やしていく局面になりそうです。2,000ドル台は既に割高や過熱と指摘する声は聴かれなくなっています。

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COMEX金先物相場(日足)


【お知らせ】
大阪取引所のウェビナーの動画がYoututeで公開されました。12/16(土)開催分です。金、原油、トウモロコシ相場について、初心者向けの内容で構成しています。よろしければご覧ください。

コモディティ ・ マーケットの分析と2024年の展望
https://www.youtube.com/watch?v=auB2uLG2yDM


11月PCEデフレーター、6ヵ月年率換算で2%割れの衝撃

【金】
米金融政策に対して大きな影響力を有する11月PCEデフレーターが発表されましたが、金相場に対しては理想的な結果になりました。

Personal Income and Outlays, November 2023
前年比で総合が2.6%上昇(10月は2.9%上昇)、コアは3.2%上昇(同3.4%上昇)となっています。総合は2021年2月以来、コアは21年4月以来の低水準です。米連邦準備制度理事会(FRB)が目標とするコアの2.0%上昇まではまだ距離が残されていますが、ディスインフレの順調な進展を確認しています。

米PCE、コア価格指数が予想下回る伸び-利下げ観測を後押し

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6ヵ月の年率換算だと1.9%上昇であり、過去半年のインフレ環境がむこう半年継続すれば、FRBの目標2%を下回る上昇率になる計算です。利上げ終了はもちろん、想定より早い利下げ、、そして想定よりも大幅な利下げが支持される状況です。前月比でみても2ヵ月連続で0.1%上昇です。

債券投資家、24年の利下げに期待し過ぎの可能性=ブラックロック
https://jp.reuters.com/markets/japan/RIILB7OO7FJNLLM36DI5PGDMXA-2023-12-22/

「市場が想定している利下げを実現するには、労働指標などいくつかの指標がかなり悪化しなければならない」

米金融当局者の想定に対してマーケットの利下げ期待の織り込みには明らかに過熱感がありますが、その過熱感を緩和する効果を想定できるでしょう。

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COMEX金先物(日足)

金相場は年末=来年のスタート台をどの価格水準で迎えるのかを探る局面ですが、1オンス=2,000ドル台後半に対して過熱感を認めることが難しくなったと見て良いでしょう。


【プラチナ】

プラチナ相場の戻り高値更新が続いています。ファンダメンタルズでは金相場の堅調地合、鉱山会社の生産調整の動きなどの影響が指摘可能ですが、チャート環境もかなり改善してきています。

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NYMEXプラチナ先物相場(日足)

プラチナ相場は3度にわたって950ドルに抵抗を受け、アルゴ系ファンドが「950ドル売り」の対応を続けていましたが、4度目の正直でようやくブレイクしました。これによってアルゴ系ファンドは売りポジションの整理を迫られている最中です。

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このことは、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉報告でも明確に確認できます。買いポジションも若干増えていますが、明らかにショートカバー(買い戻し)主導の上昇であり、それが現在も続いているとみるべきでしょう。

焦点は、それ以前に2度にわたって抵抗を受けている1,000ドル水準で改めて売りポジション構築が行われるのか、それとも1,000ドルも突破で更にショートカバーが進むかです。ファンダメンタルズ目線だといずれにしても1,000ドルは上抜く見通しですが、チャート環境も重視されがちのため、1,000ドル突破の有無というのが単純すぎるものの重要な論点になっています。同水準のブレイクの有無で、短期見通しの修正を行うべきでしょう。


今日はオフィスの大掃除を行いました。積まれた資料は十分に整理できませんでしたが、とりあえず拭き掃除だけは完璧です。

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プロフィール
小菅 努(こすげ つとむ)

1976年千葉県松戸市生まれ。筑波大学第一学群社会学類卒。商品先物・FX会社の営業本部、ニューヨーク事務所、調査部門責任者等を経て、現在はマーケットエッジ(株)代表取締役。商品アナリスト。貴金属、金属、エネルギー、ゴム、農産物などの商品先物市場全般が主なカバー対象です。商社、事業法人、金融機関向けに分析レポートを配信しています。為替、株価指数などもカバーしています。

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