金利上昇でも下げ渋る金相場
ポリシーミックスへの期待

NY金先物相場は、米長期金利の1.0%突破を受けてアルゴリズム系ファンドの手仕舞い売りに晒され、1月6日の1962.50ドルをピークに一時1800ドル割れ目前に迫る急落地合になった。ただ、20日にバイデン米大統領の就任式を迎えると1800ドル台中盤まで切り返しており、突発的な急伸と急落を繰り返す不安定な値動きが続いている。長期トレンドラインとされる200日移動平均線でサポートされているが、決定打を欠く相場展開が繰り返されている。

金利上昇圧力は、金市場の目線では機会コストの増大につながることになり、一般的にはネガティブ材料と評価されることになる。金は金利や配当を発生させないため、金利上昇局面では金からドルに対する資金回帰が促され易くなるためだ。このため、長期金利の1.0%を買いポジション整理の基準に設定していた向きが多かった模様であり、それは大口投機筋の買い残高が急減したことで確認が取れている。

一方で、過去の米金利上昇局面では、金相場は必ずしも下落していた訳ではなく、逆に上昇することも、横ばいで推移することもあった。これは、金市場において注目されるのは長期金利ではなく実質金利になるため、長期金利の上昇が直ちに金相場に対してネガティブになるとは限らないためだ。実質金利とは、長期金利からインフレ期待を引いたものであり、現在は長期金利が1%を突破したものの、実質金利はマイナス1%近傍の低迷状態を維持している。これは、長期金利と同時にインフレ期待も高まっているためであり、実際には金保有の機会コストが直ちに増大している訳ではない。実質金利のマイナス環境にあっては、過去の金相場は良好なパフォーマンスを実現している。

実際にインフレが実現するとは限らないが、バイデン政権下ではイエレン新財務長官とパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の三者が連携し、財政政策と金融政策の強力なポリシーミックスの展開が確実な情勢になっている。株価や資源価格が軒並み高騰する中、長期金利とインフレ期待の双方の上昇ペースが大きくゆがむことがなければ、金利要因で金相場が大きく値崩れを起こす必要性は乏しい。

また、米長期金利上昇でドル安修正の動きが強くなっていることもネガティブだが、米実質金利がマイナス金利状態を維持し、財政赤字や経常赤字の問題が解消できなければ、ドル安傾向が維持され易くなる。特に株高で投資家のリスク選好性が高まると、ドルは売られる可能性が高く、金相場を強力に支援しよう。

問題は、金上場投資信託(ETF)市場に対する資金流入が依然として鈍いことだ。暗号資産ビットコインETFとの競合が激しさを増している影響も指摘されているが、代替通貨の投資ニーズがビットコインに集中している。金ETF買いの再開がみられると金相場の上昇機運は改めて強まろう。(2021/01/20執筆)

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)中部経済新聞2021年1月25日「私の相場観」

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