民主党のペロシ下院議長は、統合参謀本部のミリー議長と協議を行い、「unhinged President(狂気の大統領)」が核ミサイルのボタンを押さないように協議を行ったことを明らかにしました。大統領権限を制約する協議を、下院議長と軍トップが協議するのは異例の状況ですが、それだけ議会にトランプ大統領の支持者が乱入し、それをトランプ大統領が後退したことのショックは大きかったのでしょう。

歴史の浅い米国にとって、「民主主義」は最高レベルで重視されるべきテーマになります。だからこそ、中東や北朝鮮、中国などある意味で米国が必ず関与する必要がない地域でも、「民主主義」実現のために米国は世界の警察としての役割を担ってきました。かつて、大航海時代に欧州の宣教師がキリスト教布教のために世界に乗り出したように、「民主主義」の実現は米国が誇るべき価値観であり、それを世界に広げるのが一種の使命になっています。

しかし、大統領を正式に認定する議会に暴徒が乱入し、それを現職の大統領が支持する構図は、まさに「民主主義」の否定に他なりません。米国としては「民主主義」の旗印を下すことができない以上、トランプ大統領が「狂ってしまった」との論理が求められます。「民主主義」が揺らぐことは少しもなく、トランプ大統領が任期終了直前に「unhinged President(狂気の大統領)」になってしまったと解釈せざるを得ない状況になったのです。この論理は、民主党はもちろん、共和党からも幅広く支持されており、トランプ大統領は少なくとも政治の表舞台からは姿を消すことになります。

バイデン新大統領の就任式出席もトランプ大統領は拒否していますが、大統領選で米国民の約半分から支持を受けたトランプ大統領を消し去ったとき、共和党はどのような形でその受け皿を用意するのでしょうか。優秀な新リーダーの下で結束を見せるのか、それとも手が付けられない状態に陥るのか、米国の政治から目が離せない4年間になりそうです。



【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】