バイデン政権の誕生を前に、金融市場は動揺を見せています。当初は、バイデン政権下で想定される景気対策やインフラ投資といった財政出動への期待感がリスクオン化を促していましたが、その期待感が更に強まる中、金利上昇という新たな副作用が生じている結果です。

金利はリスク投資に求められるパフォーマンスの水準を決める要因の一つであり、金利が上昇すれば、従来よりも高いパフォーマンスが求められ、それが無理だと判断されると米国債に資金は流れ込みます。米長期金利は1月6日に1.0%の節目を突破し、8日には1.1%台に乗せました。依然として歴史的な低水準ですが、「金利が上昇し始めた」という事実そのものが、投資家心理を不安に傾けています。特に米金融当局者が当面の金利上昇を静観する姿勢を見せる中、まだ金利上昇余地は大きいのではないかとの警戒感が広がっています。

金市場の視点では、インフレ期待とバランスの取れた金利上昇は、実質金利の大きな変動をもたらさないため、本来であれば大きな問題になる動きではありません。実際にドルインデックス、暗号資産ビットコインも金利上昇に目立った反応を示しておらず、株式市場も冷静です。しかし、金相場のみが5日と8日の取引で急落しました。これは何を意味するのでしょうか。

一つは単純な下げ過ぎとの評価ができます。ドルが大きく動いていないにもかかわらず、長期金利の1%突破に驚いて、ファンドのパニック的な売りが膨らんだ割安な状態と言えます。もう一つが、金相場の上昇は終わったとの評価です。これから経済が正常化プロセスに向かう中、金利が更に上昇を続ければ、インフレ期待の上昇とのバランスが崩れ、実質金利も上昇に転じるリスクが高まります。場合によっては、市場の声に押される形で米連邦準備理事会(FRB)が早くもテーパリングに踏み切る可能性があります。

もう一つ別角度からは、やはりビットコインとの競合が激化しているとの見方もできます。ビットコインは連日のように過去最高値を更新しており、代替通貨内での投資ニーズの一部ないしは多くがビットコインによって奪われている可能性があります。

伝統的な実質金利、ドルなどとの比較では下げ過ぎ状態との評価が妥当でしょうが、他資産価格の変動からは正当化できない急落地合については、注意が必要になりそうです。

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】