金相場はドル安再開待ち
コロナ禍のショック続く

NY金先物相場は、明確なトレンドを形成できない状態が続いている。8月に過去最高値2089.20ドルを付けたが、その後は1900ドルの節目を挟んで売買が交錯している。米実質金利の急低下が一服したことで金相場の上昇も一服しているが、低金利環境に変化はみられない。持高調整一巡後は1850ドル水準で下値を支えられる一方、1900ドル台から一段高を打診する展開は見送られている。

マーケット全体に目を向けると、11月は新型コロナウイルスのワクチン開発に関して大きな進展がみられた。ファイザーとモデルナの二社が、治験で90%以上の有効率が得られたと発表しており、緊急使用の承認手続きに移行する見通しになっている。ワクチンは、パンデミック収束に必要不可欠とみられており、株式市場では経済活動正常化を先取りする動きが米国株を過去最高値まで押し上げている。このため、本来であれば安全資産である金相場は急落する展開を支持する余地もあったが、実際には特に目立った動きを見せていない。

背景にあるのが、足元の経済環境は依然として厳しい状態にあり、財政政策や金融政策の支援が必要とされる状況には変化が生じていないとの見方だ。確かにワクチン開発が進展していることは高く評価できる。一方で、欧米では感染被害が拡大し続けており、現在はロックダウン(都市封鎖)に代表される行動規制を導入することで、感染被害の抑制を目指している局面にある。10~12月期の経済成長鈍化は避けられない状態にあり、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)も景気鈍化を「極めて懸念している」として、追加対策の必要性も含めて、あらゆる政策措置を利用していく必要性を訴えている。
金融政策に限定しても、11月の会合でパウエル議長は、資産購入プログラムの見直しを検討していることを明らかにしている。今後の感染被害や景気動向次第では、年内に追加金融緩和策が決定される可能性もある。特に、ワクチン開発への期待感から金利上昇が進むような状況になると、FRBが政策調整に踏み出す可能性が高まる。

米国では財政赤字、経常赤字がともに急激に拡大しており、構造的にドル安圧力が発生し易い状態にある。特に経常赤字の拡大は海外からの資本流入によるファイナンスを要請しており、米金利上昇かドル安によって、ドル建て資産に対する投資リターンを高めていくことが求められている。

 ドル相場はボックス状態が続いているが、リスクオン環境でドルに対する退避ニーズは後退しており、既にドルに対して代替性が認められている暗号資産ビットコインや中国通貨人民元相場が騰勢を強めている。FRBの積極的な緩和姿勢もあってドル安圧力が再開されると、金相場の上昇も再開され易い。特に金上場投資信託(ETF)市場に対する資金流入再開が確認されると、金相場の上昇期待が強まることになろう。
(2020/11/19執筆)
【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)中部経済新聞2020年11月23日「私の相場観」

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