天然ゴム相場の急騰続く
今年安値から2倍以上

天然ゴム相場が急伸している。JPX天然ゴムRSS先物相場は、10月中旬に1kg=200円水準を上抜くと、10月末に向けて300円の節目に迫る急伸地合になっている。コロナ禍が深刻化した4月には一時138.30円まで値下がりしていた相場だが、既に2倍を超える価格水準に到達している。これは2017年2月以来の高値更新となる。

値動きだけを見ると投機的な乱高下と評価されがちだが、需給に基づく値動きである。受渡価格をみても6月限では135.10円だったのが、10月限では274.80円に達している。急騰地合を主導しているのは需給に基づいた当限であり、投機要因に基づく期先主導の急騰地合にはなっていない。
こうしたゴム相場の急騰を促しているのは、供給不安である。本来であればコロナ禍からの需要環境回復と連動して供給水準を引き上げていくことが求められるが、十分な供給量を確保できない状況が続いている。しかも、この問題は当初考えられていたよりも遥かに深刻化していることが、天井が見えない高騰相場をもたらしている。

 マーケットでは当初、価格水準を引き上げていけば集荷量は増えると楽観的に考えていた。タイ産RSSで60バーツ程度をオファーできれば、収益性の向上で農家が増産を進めることに加えて、各地に貯蔵されていた在庫が市場に供給されるとみられていた。実際に8月の価格急騰局面では荷動きが活発化し、60バーツ前後の価格水準を維持し続ければ、供給不足状態の解消は可能と考えられていた。
 しかし、9月以降は集荷量が改めて落ち込み、価格水準を引き上げても逆に集荷量が落ち込む状態になった。8月は価格高騰を受けて流通在庫が市場に供給された模様だが、既に売却が一巡した模様だ。また、ラニーニャ現象による天候不順、新型コロナウイルスの感染拡大、タイの政情不安などから生産環境の混乱が続く中、農地からのゴム供給も低迷状態が続いている。

 タイ産RSSは80バーツ台に乗せ、本来であれば強力な増産圧力が想定される局面になる。それにもかかわらず荷動きが一向に活発化しないことからは、供給環境の悪化は価格の問題ではないことが窺える状況になっている。これは、いくら値上がりしても供給が増えず、需給ひっ迫状態が解消されないリスクが高まっていることを意味する。価格による需給調整機能が破綻しているリスクが、ゴム相場の棒上げ状態を促している。

 もちろん、現在の価格上昇ペースは持続可能性があるものではなく、いつ急落しても当然と言える状況にある。しかし、産地需給のひっ迫状態を解消する見通しが立たない以上、高価格で増産を促すと同時に、需要家の買い控えを促すことで、需給リバランスの動きを発生させることが求められる。その価格水準がどこにあるのか見通しが立たない状態が、ゴム相場のボラティリティを異常とも言えるレベルまで高めている。
(2020/10/28執筆)
【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)中部経済新聞2020年11月2日「私の相場観」

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