世界経済の減速で原油需要低迷
OPECは減産体制強化を議論

世界経済の減速傾向が進む中、2020年の国際原油需給バランスを安定化させることができるのか、不透明感が強くなっている。国際エネルギー機関(IEA)によると、世界石油需要は19年が前年比で日量100万バレル増20年が同120万バレル増となっており、世界経済の減速圧力にブレーキが掛かり、石油需要も持ち直すとの見通しが採用されている。しかし、こうした需要見通しの基礎となる国際通貨基金(IMF)の世界経済成長率見通しは19年が5回連続の下方修正となり、7月時点の3.2%から3.0%まで引き下げられている。20年も7月時点の3.5%から3.4%まで下方修正されている。このまま世界経済の減速が進めば、当然に石油需要の伸びも鈍化することになる。

 一方、米国のシェールオイルは急ピッチな増産傾向が続いており、米エネルギー情報局(EIA)の推計だと19年は前年比で日量127万バレル増、20年は91万バレル増となっている。新規投資は抑制されがちだが、生産性の高い鉱区に集中投資が行われており、世界石油需要の伸びの大部分はシェールオイルの増産によって吸収可能な状態が想定されている。足元の需給バランスは決して過度に緩和している訳ではないが、20年に原油需給が大きく供給超過方向に傾き、原油相場が値崩れを起こすリスクが高まっているのではないかとの危機感は強い。

 こうした中、石油輸出国機構(OPEC)は12月の総会で政策調整を行う可能性を強く示唆し始めた。供給過剰リスクから原油相場が軟化傾向を強めていることで、あくまでもOPECが需給バランスの安定化に責任を持つとのメッセージを発する必要があると考えている模様だ。バルキンド事務局長は、「あらゆるカードがある」として、現行の協調減産の積み増しも検討していることを認めている。主要加盟国からも追加減産に理解を示す声が強くなっており、11月中に得られるマクロ指標が劇的な改善をみせなければ、OPECは協調減産の期限を20年3月から更に延長すると同時に、減産体制そのものの強化に踏み切る可能性が高い。

こうした中でネックとなるのが、減産合意遵守率が低下しているイラクやナイジェリアの存在である。現行の協調減産体制は、「フリーライド(ただ乗り)」を許さないことで合意を完全に履行するとの強いメッセージを市場に発することで、原油相場を下支えしてきた。しかし、財政難から出来る限り産油量を増やしたいとのニーズもあり、減産合意が遵守できない国が出てくると、OPECやロシア主導の需給管理システムが破綻する可能性が浮上する。

全ての産油国にとって、減産しても原油価格を維持した方が原油売却収入を最大化できる状況が続くことになるが、12月のOPEC総会に向けて改めて減産合意の順守を確認した上で、追加減産に踏み切ることができるか否かが問われる重要な局面を迎えている。
(2019/10/24執筆)

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)中部経済新聞2019年10月28日「私の相場観」

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