ガソリン小売価格上昇は一時的
原油価格は軟化傾向

資源エネルギー庁によると、10月7日時点のレギュラーガソリンの全国平均価格は、1リットル=148.1円となった。9月17日の142.9円から3週連続の値上がりであり、約4カ月ぶりの高値を更新している。9月中旬の国際原油相場が急伸した影響が、国内ガソリン価格にも反映されている。
9月14日にはサウジアラビアの石油施設がドローンや巡行ミサイルの攻撃を受け、一時は世界の原油供給の約5%が中断する事態に陥った。サウジアラビアは特にアジア向けの出荷規模が大きく、仮に長期にわたって供給障害が発生すると、日本でも原油輸入量が一気に落ち込むリスクが警戒された。千葉県の台風被害による国内石油精製に対するダメージは限定的だったが、原油調達コストの値上がりが、末端ガソリン価格に対しても着実に波及するプロセス上にあることが確認できる。

仮にサウジアラビアに対して第二、第三の攻撃が行われて原油生産の復旧が遅れ、または、攻撃への関与が疑われているイランとの軍事衝突発生といった事態になると、原油価格が断続的に値上がりし、秋の行楽シーズンのガソリン価格が急騰する可能性も存在していた。

しかし実際の原油価格は、サウジアラビアの石油施設が攻撃を受けた直後の9月16日に高値を確認し、その後は急反落に転じている。指標となるNY原油先物価格は、9月13日の54.85ドルが一時63.38ドルまで急伸したが、10月入りしてからは51~54ドル水準まで値下がりしており、寧ろ原油価格が急伸する前の値位置を下回り始めている。中国や欧州に加えて米国でも景気減速懸念が強まる中、国際原油需給の緩和リスクが強く警戒されているためだ。また、この時期は北半球の製油所が秋の定期メンテナンスを行うため、製油所向け原油需要が落ち込む傾向がみられることも、原油価格を下押ししている模様だ。米国の原油在庫は直近の4週間連続で増加中であり、短期需給の緩みも原油安の一因になっている。

原油安で財政が疲弊したイラクやエクアドルで反政府デモが活発化するなど、既に原油安の弊害は顕在化し始めており、更なる急落相場が求められる訳ではない。米国では石油リグ稼働数の減少傾向が続いており、シェールオイル生産会社も原油安に対して悲鳴を上げている。

ただ、このままNY原油先物価格が50ドル台前半での低迷状態に回帰するのであれば、原油調達コストは抑制された状態が続き、ガソリン小売価格も140円台前半まで段階的に値下がりする方向性になる。世界経済の減速が進む中、石油価格だけが大きく上昇する環境にはない。10月下旬から11月にかけて、ガソリン価格は鎮静化に向かおう。
(2019/10/10執筆)

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)中部経済新聞2019年10月14日「私の相場観」

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