小菅努の商品アナリスト日記

金、プラチナ、原油、天然ゴム、穀物、農産物などのコモディティ市場をメインに、為替、株価指数などもカバーしています。

金融機関、商社、事業法人、ベンダー様向けにマーケット分析情報の配信業務を行っています。コモディティ市場のレポート配信サービス(法人向け)、寄稿・講演のご依頼などは、下記E-Mailまでお問合せ下さい。

マーケットエッジ株式会社 https://www.marketedge.co.jp/
E-mail  kosuge.tsutomu@outlook.com

2020/11

ワクチン開発への期待で原油高

ワクチン開発への期待で原油高
実際の需要改善には時間必要

NY原油先物相場は、1バレル=45ドルの節目を突破し、3月上旬以来の高値を更新している。11月上旬には、欧米で新型コロナウイルスの感染被害が拡大していることが強く警戒され、一時33.64ドルまで急落していたが、そこから10ドル超の反発が実現している。背景にあるのは、新型コロナウイルスのワクチン開発の動きである。11月9日に米ファイザーが有効率90%を超えるワクチン開発に成功したと発表したが、その後は米モデルナ、英アストラゼネカもワクチン開発の成功を報告している。既に米食品意欲品局(FDA)に対する緊急使用許可の申請手続きに入っており、マーケットでは早ければ12月中旬にも使用許可が下り、年内には医療関係者や高齢者を対象とした一般接種が開始されるとの見方を強めている。

今年の原油市場は、コロナ禍で人の移動が制限されたことが需要の急減を招き、原油価格は4月に一時マイナス価格を記録するなど不安定化した。その後は石油輸出国機構(OPEC)プラスの政策調整もあって40ドル水準まで切り返したが、約5カ月にわたって40ドル水準で方向性を欠く展開が続いていた。しかし、ワクチン開発に成功すれば、少なくとも2021年にもロックダウン(都市封鎖)などの行動規制が続き、自動車や飛行機などの輸送機器用エネルギー需要が大きく落ち込むリスクは限定されることになる。21年中に19年の需要規模を回復するとは予想されていないが、需要環境のV字型回復を現実的なシナリオとして設定できる状況に変わっていることが、原油相場を強く刺激している。株式相場はもちろん、銅相場など景気動向に敏感なコモディティ価格が軒並み急伸している。原油市場にとって、ワクチンは需給・価格環境の「ゲーム・チェンジャー」になり得る存在である。

問題は、足元では依然として厳しい感染状態が報告されていることだ。欧米では新規感染者、死者が急増しており、行動規制の強化が進んでいる。クリスマスまでに日常生活を取り戻すことが目指されているが、特に米国では日常生活が危ぶまれる状況になっている。企業活動の萎縮で再び失業者が増加し始めており、原油需要に対しても下方修正圧力が強まり易くなっている。国際エネルギー機関(IEA)やOPECは11月月報で需要見通しの下方修正に踏み切ったが、追加下方修正が必要との見方も強い。

OPECプラスは年明け後に予定されていた減産規模縮小(=増産)を先送りする方向で調整を進めており、原油価格が上昇しているものの極めて強い危機感を示している。IEAは、ワクチンが石油需要環境の改善を促すのは21年後半以降になるとの慎重な見方を示している。

 マーケットは期待先行で価格高騰を進めているが、現実の需給環境が45ドル、50ドルといった価格水準を正当化するためには、多くの時間が要求されることになる。

(2020/11/26執筆)
【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)中部経済新聞2020年11月30日「私の相場観」

******************************************

マーケットエッジ(株)では、コモディティ市場と金融市場のレポート配信の他、講演のご依頼も承っています。まずはご相談下さい。

【お問合せ先】
マーケットエッジ株式会社 https://www.marketedge.co.jp/
E-mail  kosuge.tsutomu@outlook.com     
 

<イエレン?新財務長官から考える金価格>『ワクチン開発後のゴールド』

「ひろこのウィークリーゴールド」に出演しました。
<イエレン?新財務長官から考える金価格>『ワクチン開発後のゴールド』


金相場はドル安再開待ち

金相場はドル安再開待ち
コロナ禍のショック続く

NY金先物相場は、明確なトレンドを形成できない状態が続いている。8月に過去最高値2089.20ドルを付けたが、その後は1900ドルの節目を挟んで売買が交錯している。米実質金利の急低下が一服したことで金相場の上昇も一服しているが、低金利環境に変化はみられない。持高調整一巡後は1850ドル水準で下値を支えられる一方、1900ドル台から一段高を打診する展開は見送られている。

マーケット全体に目を向けると、11月は新型コロナウイルスのワクチン開発に関して大きな進展がみられた。ファイザーとモデルナの二社が、治験で90%以上の有効率が得られたと発表しており、緊急使用の承認手続きに移行する見通しになっている。ワクチンは、パンデミック収束に必要不可欠とみられており、株式市場では経済活動正常化を先取りする動きが米国株を過去最高値まで押し上げている。このため、本来であれば安全資産である金相場は急落する展開を支持する余地もあったが、実際には特に目立った動きを見せていない。

背景にあるのが、足元の経済環境は依然として厳しい状態にあり、財政政策や金融政策の支援が必要とされる状況には変化が生じていないとの見方だ。確かにワクチン開発が進展していることは高く評価できる。一方で、欧米では感染被害が拡大し続けており、現在はロックダウン(都市封鎖)に代表される行動規制を導入することで、感染被害の抑制を目指している局面にある。10~12月期の経済成長鈍化は避けられない状態にあり、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)も景気鈍化を「極めて懸念している」として、追加対策の必要性も含めて、あらゆる政策措置を利用していく必要性を訴えている。
金融政策に限定しても、11月の会合でパウエル議長は、資産購入プログラムの見直しを検討していることを明らかにしている。今後の感染被害や景気動向次第では、年内に追加金融緩和策が決定される可能性もある。特に、ワクチン開発への期待感から金利上昇が進むような状況になると、FRBが政策調整に踏み出す可能性が高まる。

米国では財政赤字、経常赤字がともに急激に拡大しており、構造的にドル安圧力が発生し易い状態にある。特に経常赤字の拡大は海外からの資本流入によるファイナンスを要請しており、米金利上昇かドル安によって、ドル建て資産に対する投資リターンを高めていくことが求められている。

 ドル相場はボックス状態が続いているが、リスクオン環境でドルに対する退避ニーズは後退しており、既にドルに対して代替性が認められている暗号資産ビットコインや中国通貨人民元相場が騰勢を強めている。FRBの積極的な緩和姿勢もあってドル安圧力が再開されると、金相場の上昇も再開され易い。特に金上場投資信託(ETF)市場に対する資金流入再開が確認されると、金相場の上昇期待が強まることになろう。
(2020/11/19執筆)
【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)中部経済新聞2020年11月23日「私の相場観」

******************************************

マーケットエッジ(株)では、コモディティ市場と金融市場のレポート配信の他、講演のご依頼も承っています。まずはご相談下さい。

【お問合せ先】
マーケットエッジ株式会社 https://www.marketedge.co.jp/
E-mail  kosuge.tsutomu@outlook.com     

【コロナ禍で高騰する天然ゴム】あなたの知らない ゴム相場の世界

「ひろこのスペシャリストに聞く!」に出演しました。
【コロナ禍で高騰する天然ゴム】あなたの知らない ゴム相場の世界



トウモロコシ相場の高騰続く

トウモロコシ相場の高騰続く
3か月で在庫見通しが急変

米農務省(USDA)は11月10日に発表された需給報告において、2020/21年度の米国産期末在庫見通しを前月の21.67億Buから17.02億Buまで4.65億Bu引き下げた。8月時点では27.56億Buと潤沢な在庫環境が予想されていたが、その後の3カ月間で在庫見通しが一変したことが確認できる。これは前年度の19.95億Buを下回り、13/14年度以来の低在庫環境が予想されていることを意味する。

今季は作付け期から受粉期にかけて理想的な気象環境が実現し、USDAも8月時点では1エーカー当たり181.8Buと、過去最高のイールド見通しを示していた。しかし、その後は収穫期に向けてホット・アンド・ドライ(高温乾燥)傾向が強くなったこともあり、イールド見通しは3カ月連続で下方修正されており、直近では175.8Buに留まっている。豊作ではあるが、トレンドイールド(178.5Bu)を下回っており、記録的な豊作で増産が進み、在庫が急増するとのストーリーが消滅したことが明確に確認できる。

また、需要サイドからも需給引き締め圧力が強くなっている。USDAは輸出需要見通しを前月の23.25億Buから26.50億Buまで引き上げているのだ。前年度は米中貿易戦争の影響もあって17.78億Buに留まっていたが、過去最高の輸出需要が見込まれる状況になっている。今報告では中国の輸出需要見通しが前月の700万トンから1300万トンまで大きく引き上げられており、こうした中国の旺盛な需要の受け皿の一つとして、米国産トウモロコシ輸出が拡大するとの見通しになっている。

CBOTトウモロコシ先物相場は、1Bu=400セント台前半で底固く推移しており、昨年7月以来の高値を更新している。生産期には豊作期待から300セント台前半で低迷していた相場だが、過去3か月で需給見通しが一変する中、急ピッチな値上がり傾向が続いている。2015年から続く取引レンジの上限に差し掛かっているが、今回発表された需給報告からは、十分に正当化できる値動きになっている。しかも、足元ではラニーニャ現象の影響で南米産の生産高見通しに対する不確実性が高まっており、ブラジルやアルゼンチン産の生産高見通し引き下げが行われると、更に米国産輸出は拡大する可能性もある。

下落リスクとして警戒されるのは、急激な価格高騰で需要家の買い控え、いわゆるレーショニングが始まる事態である。しかし、足元では収穫期終盤で潤沢な在庫が確保されているにもかかわらず、現物ベーシス相場は高止まりしており、現物需給は依然として引き締まっていることが強く示唆されている。供給不安の高まりもあって、需要家が高値圏でも調達を急いでいることが窺える状況にある。欧米のパンデミックによる需要不安もあるが、このまま良好な輸出環境が維持される一方、グローバルな天候不順で供給不安も維持されると、450セントの節目突破からの一段高も想定される状況になる。
(2020/11/12執筆)
【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)中部経済新聞2020年11月16日「私の相場観」

******************************************

マーケットエッジ(株)では、コモディティ市場と金融市場のレポート配信の他、講演のご依頼も承っています。まずはご相談下さい。

【お問合せ先】
マーケットエッジ株式会社 https://www.marketedge.co.jp/
E-mail  kosuge.tsutomu@outlook.com    
sponsored link
月別アーカイブ
記事検索
 
QRコード
QRコード
sponsored link
プロフィール
小菅 努(こすげ つとむ)

1976年千葉県松戸市生まれ。筑波大学卒。商品先物・FX会社の営業本部、ニューヨーク事務所、調査部門責任者等を経て、現在はマーケットエッジ(株)代表取締役。商品アナリスト。貴金属、金属、エネルギー、ゴム、農産物などの商品先物市場全般が主なカバー対象です。商社、事業法人、金融機関向けに分析レポートを配信しています。為替、株価指数などもカバーしています。

【URL】
マーケットエッジ株式会社

【E-mail】
kosuge.tsutomu@outlook.com

【SNS】
Twitter

【連絡先】
E-mailでお願い致します。相場動向に関する質問への個別対応は行っていませんのでご了承下さい。
小菅努のコモディティ分析
小菅努のコモディティ分析 ~商品アナリストが読み解く「資源時代」

会員制の有料メルマガです。コモディティの基礎知識から専門的な分析まで提供しています。1,944円/月、週2回以上の発行です。

詳細や購読のお申し込み方法は
http://foomii.com/00025
をご覧下さい。
アナリストの視点
Yahoo!ニュース コモディティアナリストの視点

Yahoo!ニュースに不定期で寄稿しています。

過去のレポートはこちら をご覧下さい。
Twitter
amazon.co.jp