小菅努の商品アナリスト日記

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2020/10

ラニーニャ現象で穀物相場が高騰、世界的不作の恐怖

シカゴ穀物相場が高騰している。CBOTトウモロコシ先物相場は8月の1Bu=320セントをボトムに、10月15日の取引では404.25セントまで急伸している。約2か月で26.3%の上昇率であり、昨年8月以来となる1年2カ月ぶりの高値を更新している。小麦は5年ぶり、大豆は2年7カ月ぶりの高値を更新しており、コロナ禍の中で穀物相場は全面高とも言える展開になっている。

背景にあるのは、ラニーニャ現象が発生していることだ。日本の気象庁によると、今年は夏からラニーニャ現象が発生しており、90%の確率で冬にかけて続くとの見通しが示されている。ラニーニャ現象とは、日付変更線付近から南米沿岸にかけて海面水温が平年より低い状態が続く現象である。海面水温が平年よりも高い状態が続くエルニーニョ現象と並び、世界的な異常気象の要因になり得ると考えられている。

今年は、このラニーニャ現象が世界の穀物生産に大きな混乱をもたらしている。例えば中国では豪雨・洪水・台風被害が頻発しており、収穫期を迎えたトウモロコシが大きなダメージを受けたと報告されている。中国政府は備蓄放出など混乱の終息を働きかけているが、中国国内相場が急騰しているため、中国がこれから世界各地でトウモロコシの調達量を増やすのではないかとの警戒感が広がっている。

また、南半球の南米ではトウモロコシや大豆の作付けシーズンを迎えているが、最高気温が40度近くに達する一方、降雨が殆ど観測されていないため、作付け作業の遅れが警戒されている。このままホット・アンド・ドライ(高温乾燥)状態が続くと、不作のリスクが高まるとみられている。

ロシアやウクライナ、フランス、米国などでは冬小麦の作付け期を迎えているが、乾燥状態が警戒されている。各国政府が生産高見通しの引き下げを断続的に行っており、予想されていた収量が得られなくなるとの警戒感は強い。

本来だと、現在は北半球で春先に作付けされた穀物の収穫期であり、ハーベスト・プレッシャー(収穫期の売り圧力)が穀物相場の値下がりを促し易い時期になる。農家が在庫を売却することで、需給が緩み易い時期になる。しかし、今年はラニーニャ現象の発生が供給不安を著しく高めていることが、収穫期の穀物相場高騰を促している。

過去にもラニーニャ現象は不作による穀物相場の高騰を数年起きに引き起こしているが、ラニーニャ現象が長期化・深刻化すると、穀物価格が更に高騰するリスクが高まることになる。特に今年はコロナ禍の影響で穀物サプライチェーンが大きなリスクを抱えているだけに、価格を安定させることが難しくなっている。


【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

※図表はリンク先の記事参照。

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「堂島の灯を消してはならない」 総合取引所を目指す大阪堂島商品取引所

大阪堂島商品取引所(以下、堂島商取)の経営再建に向けた有識者会議「経営改革協議会」(議長=土居丈朗慶応大教授)は10月12日、コメの現物と先物に加えて、農産物先物や工業品先物、更には金融先物も幅広く取り扱う「総合取引所」を目指すことを求める最終提言を取りまとめた。

堂島商取は現在、国内でコメ先物を取り扱う唯一の取引所であり、「宮城産ひとめぼれ」、「秋田こまち」、「新潟産コシヒカリ」などを複数のコメ先物を上場している。しかし一部の農業団体や政治家の反発などもあって2011年の取引開始後も「試験上場」から抜け出せず、未だに「本上場」の見通しが立たない状態にある。近年はトウモロコシや大豆といった他農産物も売買が低調であり、2020年3月期まで7期連続の赤字に陥っており、コメ先物市場が日本から消滅するのではないかとの危機感が高まっている。

こうした中、協議会は「単にローカルな一取引所として延命策を模索するのではなく、総合取引所となった日本取引所グループ(以下「JPX」)に競合できるほどの存在感を有する将来構想」を描く必要性を訴えている。

第一に、現在の会員組織を、2021年1月を目途に株式会社化して、増資による資本の充実と同時にガバナンスが効いた経営効率の高い取引所運営を目指すことになる。コメ関係者や内外金融機関に出資を呼び掛ける一方、経営陣の刷新も求められている。

第二に、「先物市場はしっかりした現物市場があってこそ成り立つ派生商品市場である」として、コメの現物取引所と先物取引所の両輪による総合取引所を目指すことになる。現物取引所で日本全国のコメ価格が集まれば、コメ価格を指数化して、株価指数先物に匹敵するコメ先物指数を組成できる可能性も指摘されている。

第三に、当面は農林水産省所管の農産物取引所として取引量の拡大を目指すことになり、小口化などの商品設計の見直しを行うと同時に、SBIグループから流動性提供などの支援を受けるとしている。既存のコメ、トウモロコシ、大豆での再出発になるが、天候デリバティブなども検討対象として挙げられている。

その上で、経済産業省所管の金や原油先物、金融庁所管の株価指数や為替先物、更には暗号資産、個別上場株先物など品ぞろえを充実し、将来的には先物取引のみならずオプション取引の取り扱いも構想されている。

コメ先物に関しては当然に本上場を目指すことになるが、仮に認められずに試験上場が終了した場合でも、「体制整備を果たした上で再度上場を目指しても良い」として、現物市場などでの取引実績や経営体質の強化後に、歴史のあるコメ先物の本上場を改めて目指す選択肢も提示されている。


■JPXと並ぶ総合取引所を目指せるか

協議会の提言をどのような形で受け入れるのかは堂島商取の判断に依存することになり、実際にこの提言が実現するのかは別問題である。

ただ、この提言の影響は堂島商取の存続の是非に留まらないことになる。提言では、「既存のデリバティブ市場の枠にとらわれず、リスクマネジメントを必要とするあらゆる取引のリスクヘッジ市場を目指す」とされているが、この提言内容が実現すれば、日本にJPXと並ぶ新たな「総合取引所」が誕生することになるためだ。

国内の取引所グループは、東京証券取引所、大阪取引所、東京商品取引所を擁するJPXに集約が進んでいるが、堂島商取が将来的に総合取引所に発展できれば、国内で取引所間の競争が行われ、JPXと堂島商取の双方の競争力向上に寄与することが期待できる。JPXが海外のCMEやICE、LSE、ドイツ取引所、香港取引所などと競合・共存を目指す上でも、強い刺激になる可能性がある。

また、同じ上場銘柄を二つの取引所が取り扱えば、国内での裁定取引(アービトラージ)といった新たな投資需要を喚起することも可能になる。取引量が分散するだけで共倒れに終わるリスクもあるが、新たな投資機会が内外に提供されることになる。

更に堂島商取は関西圏に位置しているため、菅首相の「東京の発展を期待するが、他の地域でも金融機能を高めることができる環境をつくりたい」(日本経済新聞インタビュー)との構想にも合致する。首相は日本に世界の金融ハブをつくる「国際金融都市構想」の実現に向け、東京、大阪、福岡の3都市を競わせる構想を持っているが、大阪(関西圏)の金融都市構想の中核の一つに、堂島商取が位置付けられる可能性もある。

現状では、規模の違いから堂島商取はJPXと比較対象とされるような存在ではなく、協議会の提言を実現し、堂島商取の再建を目指すだけでも容易なことではない。ただ、取引所の再建に留まらずに日本の取引所取引環境、更には「国際金融都市構想」にも大きな影響を及ぼす可能性がある動きであることは確かである。今後の堂島商取の展開に注目したい。提言では、『「DOJIMA」は先物発祥の地として海外の先物関係者にもよく知られ、尊敬を受けており、 このネームバリューは唯一無二の宝である。堂島の灯を消してはならない。』と締めくくっている。

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

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【YEN蔵×小菅努×御堂唯也】波乱の幕が開けた10月相場|各界のプロが先物、為替、株式見通しを徹底解説!【第2回 さくらインベスト座談会】

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高止まりする天然ゴム相場

高止まりする天然ゴム相場
コロナ禍の影響残る生産

天然ゴム価格が高止まりしている。JPX天然ゴムRSS先物相場は、8月31日の1kg=205.50円で上げ一服となっているが、その後も180円水準ではサポートされる展開になっている。納会値でみると、6月限の135.10円が9月限では217.90円まで値上がりしており、2019年7月限以来の高値を更新している。コロナ禍がゴム需要に大きなダメージを受ける前の値位置を完全に上回っており、ゴム相場の実勢が7月以降に急激に改善していることが確認できる。

今年は2~3月に中国、4~5月に欧米でコロナ禍が深刻化した。新車、タイヤ販売の落ち込みに留まらず、自動車やタイヤ工場の稼働停止が、ゴム需要に対して壊滅的な被害をもたらした。しかし、その後はロックダウン(都市封鎖)などの強力な行動規制は導入されておらず、各国で環境に大きな違いがあるものの、ゴム需要環境は改善傾向にある。欧米のタイヤ販売市場はまだコロナ禍前の水準を回復していないが、中国に関しては逆に前年比で若干のプラス推移になっているとみられる。消費者マインドの改善もあるが、それ以上に政府がインフラ投資を拡大している影響が大きく、トラックなど商用車向けのタイヤ需要が急増している。

足元では欧米やインド、ブラジルなどでコロナ禍が再び深刻化しており、9月には世界の死者が100万人を超えたと報告されている。ただ、各国政府はコロナ撲滅のためのロックダウンはあまりに経済コストが大きいと判断しており、コロナ禍の影響で需要環境が悪化することはあっても、再びタイヤ販売がゼロに近づくような状況になるとは考えられていない。緩やかな需要正常化トレンドが維持されるとみられる。

一方、コロナ禍の影響が強く残されているのが、供給環境である。コロナの感染対策でゴム農場、加工工場の操業が十分に行えていない。また、外国人労働者の帰国などで労働力不足の問題も深刻化している。日本でも海外からの農業実習生の受け入れが困難になっていることが供給制約として問題視されているが、東南アジアでもゴムやパーム油など労働集約型の農産物の供給に混乱が生じている。しかも、今年はラニーニャ現象が発生していることで、生産地では雨がちの天候が報告されており、天候要因からも集荷量が伸び悩んでいる。

タイ中央ゴム市場では、RSSが60バーツ水準まで上昇すると、農家の在庫売却などの動きが強まる傾向にある。一方で、50バーツ台前半では集荷量が急激に落ち込む傾向にあり、産地相場の高止まりが消費地相場も支援する。生産量のトレンドも上向きになっているが、需要環境よりも供給環境の方が、コロナ禍からの正常化プロセスに遅れがみられることが、産地需給にタイト感をもたらしている。これは構造的な問題であり、早期解消は難しいだろう。
(2020/09/30執筆)
【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)中部経済新聞2020年10月05日「私の相場観」

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プロフィール
小菅 努(こすげ つとむ)

1976年千葉県松戸市生まれ。筑波大学卒。商品先物・FX会社の営業本部、ニューヨーク事務所、調査部門責任者等を経て、現在はマーケットエッジ(株)代表取締役。商品アナリスト。貴金属、金属、エネルギー、ゴム、農産物などの商品先物市場全般が主なカバー対象です。商社、事業法人、金融機関向けに分析レポートを配信しています。為替、株価指数などもカバーしています。

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