コーヒー価格が歴史的低迷
ブラジルの豊作が脅威に
コーヒー価格が急落している。国際指標となるICEアラビカコーヒー先物相場は、1年前の1ポンド=120セント水準に対して足元では100セントの節目割れ定着を打診する展開になっている。背景にあるのは、最大生産国であるブラジルからの強力な供給圧力である。
ブラジル食糧供給公社(Conab)は昨年12月、同国の2018年のコーヒー生産高が過去最高となる6165万袋に達したと発表した。これは前年比で27%の急増となる。5月時点の5804万袋が9月時点では5990万袋まで引き上げられていたが、10~12月期に土壌水分を緩和する潤沢な降雨が観測されたこともあり、ついに6000万袋の大台に乗せている。
ブラジルのコーヒー生産は隔年で増産と減産を繰り返すが、18年は増産年となる表作に該当するため、もともと高めの生産水準が想定されていた。しかし、6165万袋の生産高はサプライズ感が強く、過去最大規模の供給圧力に直面する中、コーヒー相場は値下がり対応を迫られている。
19年は逆に裏作になるため、少なくとも18年の生産水準からは下振れすることが確実視されている。ただConabの推計だと5048万~5448万袋まで11.6~18.1%の減産見通しに留まっており、裏作としては驚異的な生産規模が想定されている。18年の豊作で積み上がった在庫に加えて、19年も現在の生産高見通しが実現すれば、20年の表作には更に強力な供給プレッシャーに直面する可能性も警戒され始めている。専ら供給サイドの要因で値下がり対応を迫られている。
通常だと、コーヒー相場は低迷すると農薬や肥料投資などが十分に行えず、病害の発生やイールドの低下によって、不作リスクが高まることになる。しかし、近年は生産技術の向上もあって豊作が当たり前の状態になりつつあり、潤沢な在庫をさばけない状態が恒常化するリスクさえ警戒され始めている。
従来の常識では、100セントを割り込めば農家が在庫売却を止めることで、相場は下げ止まることになる。実際に昨年9月に100セント台を割り込んだ際も、短期間で反発に転じている。13年や15年も100セントが近づくと荷動きの鈍化で下げ止まる傾向にあったが、今季は100セント割れが定着化している。
あまりに大量の荷を抱える中、従来よりも農家の在庫売却可能ラインが切り下がっている模様だ。また、ブラジル通貨レアルの水準が低くなっているため、通貨要因でもドル建てコーヒー相場の安値低迷が許容されている。何らかの天候障害が発生するか、レアル相場の急伸が見られないのであれば、コーヒー相場の本格的な反発は難しい情勢になりつつある。
(2019/03/20執筆)
【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】
(出所)中部経済新聞2019年3月25日「私の相場観」
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