シカゴ穀物相場が急反落中
南米産の天候相場は終了
年初から3月中旬にかけて、シカゴ穀物相場は急伸した。CBOTトウモロコシ先物相場の場合だと、年初の1Bu=351.25セントに対して、3月13日高値は395.25セントに達しており、最大で12.5%の上昇率が記録されていた。大豆先物相場も年初の967.50セントに対して3月2日高値は1082.50セントに達しており、こちらは最大で11.9%の上昇率が記録されている。
背景にあったのは南米アルゼンチンの気象環境悪化であり、同国で干ばつ被害が発生した影響で穀物生産見通しが急激に悪化したことが、穀物相場の急騰を招いていた。米農務省(USDA)によると、アルゼンチン産のトウモロコシ生産高は昨年12月時点で4200万トンが見込まれていたが、最新報告では3600万トンまで14.3%の下方修正になっている。また大豆生産高は同5700万トンから4700万トンまで17.5%の下方修正であり、世界の穀物供給見通しに大きな不確実性が発生したことが、穀物相場を強く刺激した。いわゆる「天候相場」型の値動きである。
一方で、3月中旬以降の穀物相場は急反落している。トウモロコシは370セント台中盤、大豆は1030セント水準まで値下がりしている。南米の穀物生産は収穫ステージを迎えており、厳しい生産環境ながらも不確実性については後退することになる。天候リスクの具体的な生産インパクトが確定に向かう中、必要以上のリスクプレミアムについては剥落を迫られることになり、それが3月中旬以降の穀物相場を急反落させている。アルゼンチンで降雨が観測されている影響も指摘されているが、仮に再び干ばつ警告が強まったとしても、穀物相場を再び大きく押し上げるのは困難だろう。
ただ注意が必要なことは、こうしたアルゼンチン不作の米国内穀物需給に与えるインパクトは、トウモロコシと大豆とで全く異なっていることだ。トウモロコシに関しては、アルゼンチン産が不作となった影響で、米国産に代替需要が発生している。米国産のトウモロコシ輸出は極めて高いレベルを推移している。一方、大豆に関しては、アルゼンチン産が不作だったもののブラジル産の生産が良好なことで、米国産大豆に対する引き合いは寧ろ下振れ傾向にある。3月中旬以降の急落相場で、トウモロコシは370セント台中盤、大豆は1030セント水準まで値下がりしている。ともに急落地合を形成しているが、需給環境からはトウモロコシ相場には割安感が浮上し始める一方、大豆相場は更に下振れするリスクを抱えた状態と評価している。
そして月末には2018/19年度の米作付意向面積がUSDAから発表される。大豆面積の上振れに対する警戒感が強いが、4月に入れば米国産穀物の作付け作業もスタートすることになり、米穀倉地帯の気象環境に一喜一憂する新たな天候相場を迎えることになる。(2018/03/21執筆)
【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】
(出所)中部経済新聞2018年3月26日「私の相場観」