小菅努の商品アナリスト日記

マーケットエッジ(株)代表/商品アナリスト・小菅努の公式ブログです。コモディティ市場をカバーしています。

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ブラジルの降雨予報の上値圧迫が続く穀物相場

【穀物】
年初の取引でシカゴ穀物相場が急落しています。年末年始のブラジルで降雨が観測されたことが嫌気されています。とうもろこし3月限は一代安値を更新しました。



StoneXは、ブラジルのトウモロコシと大豆生産高見通しを引き下げています。降雨が観測されているとはいえ、高水量が例年を大きく下回っていることで、厳しい生産環境にあることには変わりないとの評価です。

StoneX no longer sees record soybean crop in Brazil in 2023/24

しかし、マーケットでは単純にブラジルの降雨の有無が重視されている以上、気象予報次第の地合が続くことになります。乾燥予報に変わる見込みで押し目を買い拾うのか、降雨継続を見込んで戻りを売り込むのかの対応ですが、現在のトレンドは依然として下向きです。

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CBOTとうもろこし先物相場(日足)


1月4日の大発会前。今日は一日原稿仕事でした。かなりの分量で疲れました。


【お知らせ】
大阪取引所のウェビナーの動画がYoututeで公開されました。12/16(土)開催分です。金、原油、トウモロコシ相場について、初心者向けの内容で構成しています。よろしければご覧ください。

コモディティ ・ マーケットの分析と2024年の展望
https://www.youtube.com/watch?v=auB2uLG2yDM

  

元旦の能登半島地震、ドル/円相場への影響を考える

【円】
元旦の能登半島で最大震度7の大規模震災が発生しました。国内マーケットは休場、海外投資家が1月2日から徐々に取引を再開するタイミングですが、1月2日のアジア時間のドル/円相場は目立った動きを見せていません。

能登半島で震度7、石川の死者48人に 輪島で大規模火災
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUE011M10R00C24A1000000/



2011年の東日本大震災が発生した直後は、急激な円高圧力が発生しました。背景としては、リパトリの「思惑」が指摘されています。

大震災でなぜ円高?
https://www.jiji.com/jc/v2?id=20110311earthquake_45

つまり、震災を受けての保険会社が支払いに備えて、海外資産を円に換えるとの見方です。企業が国内事業の被災を受けて、海外資産を国内に還流させるとの思惑なども指摘されています。

しかし、地齋にはリパトリの発生は確認できず、専ら思惑先行の値動きでした。つまり、投機筋がリパトリの大枠を手掛りに円買いを仕掛けた訳です。

さて今回ですが、最近の円高・ドル安の流れを加速させるテーマと評価されると、一気に円高が進む可能性もあります。ただし、2011年の経験でこうした思惑は根拠の乏しいものであることが確認されています。また、近年はウクライナ戦争やイスラエル=ハマス戦争で有事の円買いも見られませんでした。

1月4日の東京市場の大発会で株価急落といった動きが見られた際に、思惑的な円買いが瞬間的に膨らむリスクを想定しておく程度で十分でしょう。

そして、現在の地合だと日本銀行の金融政策への影響にも注目する必要があります。日本銀行は2024年にマイナス金利解除に踏み切るとみられていましたが、能登地震の影響で日本経済(特に北陸経済)が大きなダメージを受けると、マイナス金利を解除できくなくなる可能性が浮上します。

本来だと春闘の賃上げ状況を確認し、そこで賃金上昇を伴ったインフレが確認できたとの評価からマイナス金利是正の流れが想定されていましたが、その決断が今回の大地震で難しくなったのは間違いないでしょう。

日銀当局者などから大地震の影響に対して踏み込んだ発言が聞かれたりすると、米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ開始でもドル/円相場が十分に下げないシナリオもあるでしょう。まだ判断材料が乏しいテーマですが、2024年は年初の取引開始の前に大きな不確実性を抱えることになりました。


被災された方、お見舞い申し上げます。


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地政学リスクに下値を支えられる原油相場

【原油】
年初の原油相場は強含みで推移しています。NYMEX原油先物相場は年末の1バレル=71.65ドルに対して73.37ドルでの取引になっています。年末・年始にウクライナと中東の双方で戦闘が激化しており、特に中東の地政学リスクが織り込まれている模様です。

イラン、紅海に駆逐艦派遣-米軍によるフーシ派ボート攻撃後

2023年末にかけては一部海運会社が紅海やスエズ運河の航行を正常化する動きが上値を圧迫していましたが、治安維持に当たっていた米海軍が武装組織フーシ派のボートを攻撃し、イランが紅海に軍艦を派遣するなど再び緊張感が高まっています。

「マースクは状況を把握するため、紅海での全ての輸送を48時間停止した」

参考:スエズ運河の航行再開、海運会社の判断割れるも原油は売り反応

この状況では、船舶航行の再開が難しくなります。原油市場の目線では、こうした地域の不安定化に大国イランの名前が見え隠れし始めていることが緊張感を高めています。イスラエル=ハマスの戦闘が、地域紛争に発展するリスクが警戒されています。

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NYMEX原油先物相場(5分足)


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2024年のコモディティ相場見通し

【コモディティ】
あけましておめでとうございます。

2024年のコモディティ相場について、年初の時点の見通しです。

◆貴金属
金相場は、米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げサイクル入りから支援を受けよう。特に年前半は米金利低下・ドル安環境からの支援が想定され、2023年の過去最高値更新が打診される見通し。2,200ドル台乗せが打診される。中央銀行の金買い継続、地政学リスクの高まりなども支援材料になろう。ただし、年後半は利下げの織り込み終了を受けて、金融政策要因の買いは息切れする見通し。米大統領選を巡る不確実性、景気減速などの安全資産に対する投資需要を喚起する形で上昇トレンドは維持する見通しだが、年後半価格環境は不安定化しやすい。

プラチナ相場は底入れ評価から、上値追いの展開になろう。金相場と同様に年前半はFRB利下げサイクル入りからの支援が強まる見通し。需要に供給が追い付かない需給ひっ迫構造も相場を支援しよう。チャートは1,000ドルを突破しており、1,100ドル台へのレンジ切り上げが打診される。鉱山会社は生産調整を本格化し、人員整理の動きによっては労働争議が発生する可能性もある。

◆金属
銅相場はじり高傾向になろう。世界経済(特に中国経済)の減速懸念が上値を圧迫する展開は続く。ただし、価格低迷で増産対応の鈍さが目立ち、このままの価格水準では脱炭素時代の需要をカバーすることが難しくなる。下値不安は限定され、徐々に安値修正を打診しよう。9,000~1万ドル水準は十分に見通すことができる。

ニッケル相場は安値低迷が続く。世界経済減速による需要不安に加えて、インドネシア増産などが需給緩和圧力をもたらす。過剰供給から在庫積み増しが進む可能性が高く、下振れリスクを維持しよう。1万5,000ドル割れで1万ドル台前半にレンジを切り下げる見通し。

◆原油
原油相場は上値の重い展開になろう。世界経済の減速で需要不安が強い。一方、米国、ブラジル、ガイアナなど石油輸出国機構(OPEC)以外からの増産圧力は維持される。OPECが更に生産量を大幅に削減することは難しく、需給均衡状態を維持できるか否かの目線に留まり、価格リスクは下向きになる。70ドル割れから値崩れのリスクは低いが、地政学要因で供給不安が浮上しなければ、相場を大きく押し上げるのは難しい。

◆穀物
在庫積み増しによる価格鎮静化が続く見通し。とうもろこしと小麦は繰越在庫の水準が高く、平年並みの気象環境でイールドが崩れなければ、在庫積み増しが可能とみられる。2023年の急落で大きな値崩れは想定されないが、下値切り下げのリスクを残そう。大豆も作付面積拡大でようやく在庫減少に歯止めが掛かる見通し。ウクライナ戦争、世界気象環境などが不確実要素になる。とうもろこしは400セント台中盤、小麦は500セント、大豆は1,200セント台がコアレンジになる見通し。


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2023年コモディティ相場の騰落率

【コモディティ】
2023年のコモディティ取引が終了しました。主要なドル建てコモディティ相場の騰落率を計算したのが下のグラフになります。

一見したロブスタコーヒー、ココア、アラビカコーヒーといったソフトマーケットの底固さが目立ちます。砂糖も急騰していましたが、年末前に利食い売りが入ったことで上げ幅を削りました。エルニーニョ現象の直撃を受けた農産物価格が記録的な高騰相場になりました。

金も13.4%高と堅調でした。漸く利上げ終了の議論が展開されたことに加えて、中東で新たな戦争の勃発、中央銀行の金買い継続といった動きを背景に底固さが目立ちました。

逆に大きく値を崩したのがニッケルですが、インドネシアの大規模増産で国際需給が緩んでいます。パラジウムもロシア産を敬遠する動きから、急落対応を迫られました。天然ガスは暖冬と記録的な生産水準の影響です。

穀物も軒並み2022年までの高騰相場の反動安になりました。大規模な天候障害の発生が回避され、需給が一定の落ち着きを取り戻した銘柄が多かった影響です。

原油は年間を通じて売買が交錯しました。最終的にはマイナス圏に沈んでいます。需要不安と非石油輸出国機構(OPEC)の増産が上値を圧迫しました。

銅やアルミといった非鉄金属は、大きな値動きになりませんでした。年前半は中国経済の不調に上値を抑えられましたが、値崩れを回避しています。

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【コモディティ】

こちらが円建ての騰落率です。7.6%の円安効果が大きかったことが窺えます。

天然ゴムの上昇率が大きくなっていますが、年後半にエルニーニョ現象の直撃を受けたこと、在庫取り崩しが加速した影響です。

金は円安とドル建て金相場の高騰で21.6%高と良好なパフォーマンスでした。ドバイ原油とプラチナは、円安効果で辛うじて前年比プラスになっています。

とうもろこしとパラジウムは、ドル建て相場急落の影響を円安で相殺しきれませんでした。


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大晦日ですね。私はまだ仕事が終わっていませんが…。
良いお年をお迎えください。


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プラチナ市場の内部要因環境に変化、ファンドは底入れ判断か

【プラチナ】
プラチナ市場で、ファンドの買い圧力が強くなっていることが確認できました。米商品先物取引委員会(CFTC)のCOTレポートでは、12月26日時点で買いポジションが前週比4,019枚増の4万4,404枚、売りポジションが同2,645枚減の2万0,742枚となっています。

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(出所)CFTC

最近のプラチナ相場の傾向としては、反発してもショートカバーのみであり、新規で買いポジションを構築することは躊躇されました。高値を売り込み、安値でショートカバー(買い戻し)というのがこれまでのパターンでした。

しかし、950ドルの抵抗を上抜いたことで、ファンドが底入れの可能性を意識して買いポジションを構築し始めた模様です。その後、プラチナ相場は950ドルに続いて1,000ドルの節目馬上抜きましたが、これまでの戻り売り再開のパターンが崩れると、本格的な上昇期待が強まります。

チャート環境と連動して内部要因環境の改善も確認できるデータになりました。

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NYMEXプラチナ先物相場(日足)


【原油】
2023年は、石油輸出国機構(OPEC)加盟国の減産、非加盟国の増産と世界は二分しました。OPECにとっては、非OPECの増産を眺めて逆に減産対応を迫られる厳しい環境になりました。

Reutersは、2024年前半のOPEC産原油の市場シェアが27%弱と、2020年以来の低水準になるとの見通しを示しています。アンゴラのOPEC離脱とOPECプラスとしての協調減産の影響が指摘されています。

2024年もOPEC加盟国の減産、非加盟国の増産が続くのであれば、程度の違いはあってもOPECの市場シェアは低下し、それが石油市場への支配力を低下させる悪循環に陥ります。

OPECの世界石油市場シェア、24年前半に4年ぶり水準に縮小の見通し

「世界の石油需要が加速するか、OPECが原油価格低下を容認しない限り、減産緩和に踏み切るのは難しい情勢だ」

需要が拡大してOPEC加盟国と非加盟国がともに増産可能な環境が理想的ですが、そうならない場合には、1)原油価格の下落を容認する、2)減産で市場シェアを更に失うと、どちらにしてもOPECにとっては受け入れがたい不都合な未来しか存在しません。

OPECとしてはOPECプラスの枠組み拡大も選択肢になりますが、敢えて協調減産に参加しようとするような国はありません。11月30日の会合でブラジルがOPECプラスの協力憲章に参加することが表明されましたが、ブラジルはあくまでも対話と意見交換のためとしており、協調減産には参加する義務がないことを確認しています。

ブラジル、OPECプラスの協力憲章に参加へ-拘束力なし
2024年の原油需給バランスを安定化させるためのハードルは高くなっています。これは、価格に対して下振れリスクとして機能することになります。


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スエズ運河の航行再開、海運会社の判断割れるも原油は売り反応

【原油】
原油相場が軟化しています。紅海における貨物船の運航再開の動きを受けて、原油供給不安が緩和されているためです。

マースク、アジア─欧州航路の大半をスエズ運河経由で計画
https://jp.reuters.com/business/RZOURWD4MVI5ZHXS35O5WPAPHU-2023-12-28/

デンマークの海運大手マークスは、コンテナ船の大半をスエズ運河経由として、喜望峰沖のルート使用は少数に留める計画としています。

イエメンの武装組織フーシ派の船舶に対する攻撃は続いています。このため海運各社も対応が割れていますが、マークスは米国など多国籍部隊が商船保護の取り組みを本格化させているため、リスクコントロールが可能との判断に傾いた模様です。

米軍、紅海でフーシ派発射の無人機とミサイルを撃墜

ドローンやミサイル攻撃から広範囲に展開する商船を保護するのは容易ではないとみられますが、本当に航行再開でも問題がないのかを見極めるフェーズになります。ただし、もともと原油輸送障害を受けての原油買いの規模は限定的だったため、スエズ運河の航行再開が本格化しても、原油相場に対する影響は軽微でしょう。年末に向けて最近の反発に対する調整売りをうながすきっかけに留まる見通しです。

問題は、この先の明確な相場テーマを欠いていることです。中東情勢が緊迫化しつつあることを材料視するのか、年明け後に石油輸出国機構(OPEC)の自主減産が始まることを材料視するのか、それとも再び需要不安を織り込むのか、気迷いムードから不安定な値動きが続きそうです。ただし、米原油在庫の減少傾向が止まりつつあることを考慮すると、下値不安は大きくないでしょう。

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NYMEX原油先物相場(日足)


【穀物】
ウクライナ当局によると、黒海でパナマ船籍のバルク船が機雷に衝突し、2人が負傷しました。

黒海で貨物船が機雷に触れ爆発、2人負傷=ウクライナ

詳細は分かりませんが、ドナウ川経由の輸送は7月にロシアが黒海イニシアティブから離脱して以降に活用されている代替ルートであり、これまで使用してこなかったルートを使ったのか、新たに機雷が設置されたかしか考えられません。



いずれにしても年末を前にウクライナとロシアとの戦闘が激化しているだけに、この種の動きに対して小麦相場は敏感に反応し始めています。ロシアとウクライナの穀物輸出能力が活用できなければ、小麦を筆頭にとうもろこし、植物油相場などにリスクプレミアム加算の余地が拡大します。

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CBOT小麦先物相場(日足)


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プラチナ相場が1,000ドル突破、上昇トレンドを追認

【プラチナ】
NYMEXプラチナ先物相場が1オンス=1,000ドルの節目を上抜きました。今夏はこの1,000ドルで2度にわたって抵抗を受けた後、レンジを850~950ドルまで切り下げていましたが、年末を前に950ドルに続いて1,000ドルも上抜きました。チャート環境は一段と強気に傾き、500ドル刻みで上値切り上げを打診する見通しです。

プラチナ市場では、ボックス相場を前提としたアルゴ系ファンドが価格を支配する傾向が強くなっているため、1,000ドル戻り売りが失敗と確定すれば、取引レンジが切り上がるでしょう。

金相場は年末を前に終値で過去最高値を更新しています。来年の利下げサイクルを先取りしていますが、その流れでプラチナ相場も物色されることで、チャート環境の改善を促すことが可能かとの目線になります。

無題
NYMEXプラチナ先物相場(日足)

そしてもう一つ重要なポイントは、パラジウム相場が改めて軟化していることです。イギリスのロシア産金属制裁の思惑から急伸していましたが、改めて上値を圧迫されています。

パラジウム急騰 ロシア産金属の制裁で思惑買い
これは、白金族貴金属(PGM)全体の収益環境改善にブレーキを掛けることになります。最近のプラチナ相場の上昇でも、鉱山会社のリストラは不可避でしょう。

無題
NYMEXパラジウム先物相場(日足)


【金】
LBMAのLondon Fixingで金価格が過去最高値を更新しました。まだCOMEX先物相場が場中に付けた過去最高値(2,152.30ドル)には到達していませんが、ロンドン金価格は各種金投資商品の評価基準になるため、金投資の評価向上に直結します。

ロンドン金価格、過去最高値更新=LBMA
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/IRL2Y6UD55MVHEORZHXTKKUAUU-2023-12-27/

来年の利下げを織り込む動きが、金市場に限らずマーケット全体で広がっています。過熱感も指摘されていますが、22日に発表された11月PCEデフレーターがやはり金市場の地合を大きく変えたと見て良いでしょう。

参考:11月PCEデフレーター、6ヵ月年率換算で2%割れの衝撃

年末時点の価格が過去最高値を更新するのは確実な情勢であり、あとは12月4日に瞬間的に記録した2,100~2,150ドルのレンジでの経験値を増やしていく局面になりそうです。2,000ドル台は既に割高や過熱と指摘する声は聴かれなくなっています。

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COMEX金先物相場(日足)


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中国が食料安保を強化か、ついに遺伝子組み換えの生産開始に向かう

【穀物】
中国が食料安全保障を強化していることが窺えます。米国産大豆にとっては、需要抑制要因として注意が必要な動きです。

中国、1─11月飼料の大豆ミール使用11%減 食料安保強化で

中国政府統計によると、1~11月期の大豆ミール需要は前年同期から11%、444万トン減少しました。2023年の飼料需要は前年の14.5%から1.5%低下する見通しですが、大豆換算で910万トンの需要減少要因です。飼料分野で大豆ミールの使用を削減し、他の油脂植物や乾燥蒸留粕(DDGS)の使用を増やしている模様です。大豆(大豆ミール)は輸入依存度が高いこともあり、飼料項目の分散が図られています。

中国、遺伝子組み換えトウモロコシと大豆の種子会社承認

 一方、中国政府は遺伝子組み換えのとうもろこしと大豆の趣旨について、生産・流通・販売を認める企業を発表しました。中国政府は遺伝子組み換えに慎重姿勢を維持し、輸入に際しても厳格な管理を行っていましたが、ついに国内企業に遺伝子組み換え関連商品の提供を認めることになります。

どの程度のペースで普及するのかは不明ですが、米国内のとうもろこしや大豆生産量が上向けば、必然的に海外からの輸入量が削減される可能性が高まります。

これら二つの動きがリンクしているのか断定はできませんが、食料安全保障の強化が急がれていることが強く窺えます。これがウクライナ産の供給抑制の影響か、米中関係悪化の影響か、更には台湾有事に備えた動きかは分かりませんが、中国のこうした取り組みが成功すれば、世界の穀物市場は安定供給を確保できる可能性が一段と高まります。


【穀物】
12月26日のシカゴ穀物相場は小麦を中心に堅調に推移しました。年末前の持高調整の影響もありますが、ウクライナ情勢が久し振りに材料視されています。

ウクライナ軍、ロシアの大型揚陸艦を破壊と発表 巡航ミサイルを使用

ウクライナがクリミアでロシア軍の強襲揚陸艦を破壊し、黒海の戦闘激化が警戒された模様です。クリミア半島付近での戦闘が激化すれば、必然的にウクライナとロシア双方の穀物輸出が影響を受ける可能性が高まります。

最近の傾向として、こうした地政学リスク絡みの買いは一時的なものに留まる傾向が強いものの、注意は必要でしょう。

無題
CBOTとうもろこし先物相場(日足)


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肥満治療薬で食品需要にリスクも、ネスレCEOは楽観

【砂糖】
今年は肥満治療薬が人気を集めましたが、食品や飲料の消費動向に与える影響も注目されています。肥満治療薬を使うと食欲が減り、特に砂糖や脂肪分の接種が控えられる傾向が強まる可能性があります。
「GLP-1受容体作動薬」と言われるクラスに属し、もともとは2型糖尿病薬として開発されたものですが、各種臨床実験で体重減少効果も認められています。次々と新薬が各国で承認されている状況です。

こうした中、食品大手ネスレのシュナイダー最高経営責任者(CEO)は12月20日、コーヒー事業に対する脅威にはならないとの見方を示しました。

ネスレCEO、肥満症薬はコーヒー事業に影響せず

現時点では、肥満治療薬による食欲低下の証拠はないとしています。

ただし、「GLP-1患者は砂糖を多く含む食品や脂肪分の多い食品の摂取量を減らすかもしれないが、他の食品、飲料、サプリメントを通じて栄養ニーズを満たす必要がある」として、プロテイン製品の需要が既に増加し、更にビタミンや栄養補助食品に潜在力があるとしています。

もし、先進国の飽食傾向が是正されるのであれば、その影響や砂糖やコーヒーといった個別商品に留まらず、食料需要全体の押し下げ要因として機能する可能性があります。

だが、この問題は正直言って、まだ分からないことだらけです。

ファストフード店やたばこメーカーに打撃も、やせ薬普及で
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-10-04/S1ZI2GT0AFB401

「クレジット市場では下振れリスクが十分に織り込まれていない」と、食品業界がこのリスクを十分に織り込んでいないことが指摘されています。実際の所、どのような変化が生じるのか、もしくは生じないのかが不明なため、消化できていないのでしょう。これは食品関連企業のみならず、穀物や農産物市場にも共通して言えることです。長期リスクとして今後の展開に注目です。


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プロフィール
小菅 努(こすげ つとむ)

1976年千葉県松戸市生まれ。筑波大学第一学群社会学類卒。商品先物・FX会社の営業本部、ニューヨーク事務所、調査部門責任者等を経て、現在はマーケットエッジ(株)代表取締役。商品アナリスト。貴金属、金属、エネルギー、ゴム、農産物などの商品先物市場全般が主なカバー対象です。商社、事業法人、金融機関向けに分析レポートを配信しています。為替、株価指数などもカバーしています。

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