小菅努の商品アナリスト日記(コモディティ投資の世界)

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ガソリン価格の仕組み、税負担とトリガー条項

ガソリンは、税負担が多い商品です。資源エネルギー庁によると、10月18日時点でレギュラーガソリンの全国平均価格は1リットル=164.6円となっていますが、ガソリン本体価格は93.0円であり、残りの71.6円は税金になります。

最大の税金は「揮発油税」と「地方揮発油税」であり、本則税率で28.7円、特例税率で25.1円の合計53.8円が課税されます。更に石油石炭税で2.04円、地球温暖化対策税で0.76円が加算されます。更にガソリン本体価格にこれらの税金を加算したところに消費税(10%)が加算されます。

無題
















元々、自動車の利用者が道路の維持・整備費を負担する、受益者負担の原則に基づく「道路特定財源」の一つだったため、税負担が大きくなっていました。その後は全国的な道路建設が進んだことで暫定税率撤廃の議論もありましたが、税収の落ち込みを回避するため、税率を維持した状態で一般財源化が行われています。現在は、道路の維持・整備以外にも税収は利用されています。

2010年3月には租税特別措置法の改正があり、そこでも「揮発油税」と「地方揮発油税」の合計53.8円が維持されました。ガソリンの3か月の平均小売価格が1リットル当たり160円を超えるに至った場合は、特例税率の適用を停止する仕組み(「トリガー条項」)も設けられ、本来であればガソリン価格負担が著しく高まった際には、特例税率25.1円を停止することで、大幅な値下りを促す仕組みもあります。ただ、この「トリガー条項」は2011年4月に東日本大震災の復興財源に充てることなどを理由に、現在は法律によって適用が停止されています。

10月18日時点で、ガソリン価格は既に3週間連続で160円を上回っています。仮に「トリガー条項」を復活させても直ちに特例税率が停止される訳ではありませんが、本来だとこうした対応が必要なレベルまでガソリン価格は高騰が進んでいます。「トリガー条項」の復活も検討する必要性が高まっているのかもしれません。




天然ゴム、底入れ後も安値ボックスを継続

◎〔アナリストの目〕天然ゴム、底入れ後も安値ボックスを継続=小菅努氏

JPX天然ゴムRSS先物相場は、9月21日の1キロ=193円70銭(中心限月6番ぎり)をボトムに、足元では220円台まで切り返す展開になっている。中国を筆頭とした需要不安の織り込みで、200円の節目を大きく下回っていたが、原油相場や非鉄金属相場の急伸、円安、リスク投資の地合い改善を手掛かりに、下げ一服感も目立つ状況にある。

コモディティー相場全体が地合いを引き締める中、ゴム相場に関しても下値不安は後退している。中国不動産大手・中国恒大集団の経営不安問題も消化が進んでおり、投資家のリスク選好性が回復している。

ゴム相場に関しては、原油や非鉄金属市場で見られるような現実的な需給逼迫(ひっぱく)化の脅威が存在するわけではない。一部のコモディティーでは、輸送コストの増大で在庫取り崩しが加速しているが、大阪取引所の生ゴム指定倉庫在庫については、6〜8月に入庫より出庫の勢いが増したが、9月は改めて在庫積み増しが行われている。昨年4月以来の高レベルの在庫環境にあり、需要を満たす供給量を確保できるのか不安心理が広がっている原油や非鉄金属とは需給構造が全く異なっている。

実際に、10月15日清算値ベースで、1番ぎりと6番ぎりとの間の順ざや(期近安・期先高)が16円20銭に達しており、逆ざや傾向が強い原油や非鉄金属相場とは全く異なるさやが形成されている。投機主導で期中から期先限月に対して買いが膨らむ一方、実際の需給にリンクした期近限月が、上値追いに抵抗を示す構図が明確に確認できる。

◇タイヤ市場、伸び悩み避けられない

原油や非鉄金属相場の高騰は、パンデミック後の急激な需要回復のタイミングにおいて、供給制約や供給トラブルが、需給逼迫(ひっぱく)化を促している結果である。しかし、ゴムに関しては、半導体などの部品供給不足で新車生産と販売が大きなダメージを受けたことで、買い替え用タイヤ販売は好調ながらも新車用タイヤ販売が大きく落ち込んでおり、タイヤ市場全体としての伸び悩みは避けられない状況になっている。

一方、供給サイドでは、モンスーンによる洪水、パンデミックによるサプライチェーンの混乱もあったが、大きな供給障害が発生しているわけではない。今秋から冬にかけてはラニーニャ現象が発生する可能性が高まっているだけに、天候不順による供給障害が発生するリスクは間違いなく高まっているが、現段階ではリスクプレミアム加算が正当化される状況にはなっていない。

結果的に、年末に向けてはリスクオフ圧力の一服、他コモディティー相場高、さらには円安環境に支援を受けながらも、伸び悩む展開が続きやすい。改めて200円割れから値を崩すリスクは後退しているが、期近限月が伸び悩む以上、ここからは250円突破に向かうよりも、210〜240円水準での値固めの有無の視点にとどまりやすい。本格的な相場反転を促すのであれば、ラニーニャ現象による大規模な供給障害の発生、もしくは自動車生産と販売環境の急激な回復が求められよう。(了)

天然ゴム










(出所)時事通信社「アナリストの目」(10月18日)



 

白金相場は底打ちから反発へ

白金相場は底打ちから反発へ
ネガティブ材料の出尽くしか

NY白金先物相場は9月20日の1オンス=892.60ドルで底入れした可能性が高まっている。今年は2月16日の1348.20ドルをピークに半導体供給不足による自動車生産トラブルから急落対応を迫られていたが、漸くネガティブ材料の出尽くしが打診され始めている。半導体供給不足問題がピークを脱し、自動車生産環境が改善に向かう兆候が見られるためだ。

今年は、半導体需要の急激な回復が進む一方、各国半導体工場の火災といった生産トラブルに加えて、今年中盤は東南アジアの半導体工場がパンデミック対策で閉鎖されたことで、半導体の供給不足問題は深刻化していた。自動車生産への影響も徐々に拡大していたが、年中盤以降には各国の自動車メーカーが工場の稼働停止といった緊急対応を求められていた。シンボリックだったのがトヨタ自動車の大規模減産であり、9月と10月のみで約40万台の追加減産を迫られている。こうした動きは、排ガス触媒用の白金需要の減少に直結することになり、主に需要環境の先行き不透明感が白金相場を大きく押し下げていた。

しかし、東南アジアのパンデミック収束に伴い半導体工場は稼働を再開しており、漸く半導体供給環境に改善の兆候が見られる可能性が高まっている。本当の意味での正常化は2022年下期になるといった慎重な見方も強いが、半導体不足を理由に自動車工場のラインが止まる状況に関しては、9~10月がピークになる可能性が浮上し始めている。一部の報道によると、トヨタ自動車は部品到達の目途が立ったことで、12月からの「挽回増産」を検討している模様だ。12月以降に工場のラインをフル稼働し、これまでの減産によって生じた遅れを取り戻そうとしている。

こうした動きが他の自動車メーカーにも広がりをみせると、自動車増産の動きが白金需要回復にも直結することになる。自動車生産・販売環境の正常化はまだ長期的な目線で見ておく必要があるものの、ネガティブ材料の出尽くしとなれば、自立反発的な動きは想定することが可能だろう。自動車生産拡大の動きを確認しつつ、下値切り上げが可能か否かを打診する動きが年末に向けて徐々に強まる可能性が高い。

パンデミックで生じたサプライチェーンの混乱は、長期化の様相を呈しており、足元ではエネルギー供給不足が中国やインドなどで停電を引き起こすなど、世界経済の先行き不透明感は高まっている。国際通貨基金(IMF)も最新の世界経済見通し(WEO)で今年の世界経済成長率予想を7月から0.1%引き下げて5.9%としている。このため、半導体不足の問題が緩和されれば白金需要見通しが急激に改善する訳ではないが、少なくともネガティブ材料出尽くし後の反発期待は高まっている。大口投機筋のショートカバー(買い戻し)が本格化すると、1100ドル水準が打診されよう。

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(出所)中部経済新聞「私の相場観」(10月18日)

◆本日公開の無料レポートです。
・東京金融取引所「原油ETF証拠金取引・ウィークリーレポート」(PDF)
・ゴム報知新聞「マーケットアナリティクス




ガソリン価格高騰の要因と今後の見通し ガソリン高は更に深刻化、長期化するのか?

資源エネルギー庁が10月13日に発表した石油製品価格調査によると、10月11日時点のレギュラーガソリン価格の全国平均は1リットル=162.1円となり、前週の160.0円から2.1円値上がりした。これで6週連続の値上がりであり、1年前の134.10円と比較すると28.0円(20.9%)もの急激な値上がりになっている。

国内のガソリン価格は石油精製会社の原油調達コストによって決まるため、これは原油価格高騰を反映したものである。国際指標となるNY原油先物相場は年初の1バレル=48.40ドルに対して10月11日高値は82.18ドルに達しており、2014年10月以来となる約8年ぶりの高値を更新している。昨年に新型コロナウイルスのパンデミックが発生する前の50~65ドル水準を大きく上回っており、その価格転嫁が行われているのが現状である。しかも為替市場では円安傾向が強まり始めていることで、国内の原油高の負担感は一段と強くなっている。

では、なぜ原油価格が高騰しているのか。パンデミック発生前の価格水準さえも上回っているのはなぜだろうか。これは複合的な要因に基づく。需要サイドでは、パンデミックで落ち込んだ需要が急激な回復フェーズに移行していることで、需要環境の激変が需給バランスを歪めている影響がある。供給サイドでは、石油輸出国機構(OPEC)にロシアなどを加えた「OPECプラス」が、協調減産政策を維持していることがある。10月4日にはOPECプラスの閣僚級会合が開催されたが、需要の先行き不透明感を理由に大規模な増産対応は見送ることが確認された。

しかも、パンデミックによる投資不足、更にはメインテナンス作業が十分に行えない状態が続いた結果、そもそも産油国が十分な増産能力を有しているのかも疑問視されている。8月末にはメキシコ湾に大型ハリケーンが襲来し、米国の原油生産が壊滅的な被害を受けた。更に足元では天然ガスや石炭相場も高騰していることで、暖房用や発電用エネルギーで原油への代替需要が発生する可能性さえも警戒されている。

無題




















■ガソリン価格の高騰は続くのか?
ガソリン価格の高騰は更に続くのだろうか。市場関係者の間では、少なくとも年末にかけては原油価格の高騰、高止まりが続くとの見方が多い。これから冬の需要期に向かうことに加えて、他のエネルギー源の供給不安、価格高騰が進んでいることで、原油価格のみが大きく値下がりする事態は考えづらいためだ。NY原油先物相場がこのまま85ドル、90ドルといった価格水準を打診すると、ガソリン価格は160円台定着が進み、2008年以来となる170円台到達の可能性も想定しておく必要がある。

ただ、既に米国やインドを筆頭にガソリン高による家計の負担増、インフレ圧力は深刻な問題になり始めており、そこから更に180円、190円といった価格まで上昇するかと言えば、その可能性は低そうだ。まだ世界経済はパンデミックからの回復途上にあり、エネルギー価格の過剰な高騰は、そのこと自体が世界経済の減速、ガソリン消費量の減少といった動きを引き起こす可能性が高い。

一方で、ガソリン価格が来年に大きく下落するかと言えば、その可能性も低そうだ。来年は原油需要の伸びが鈍化する一方で、米国のシェールオイルやブラジルの深海油田などの供給量が増加に転じることで、原油価格は徐々に上値を抑えられる可能性が高い。特にイラン核合意が成立すると、大量のイラン産原油が市場に追加供給されることで、原油相場の鎮静化が促される可能性がある。

しかし、世界が脱炭素化を急ピッチに進めていることで投資不足から原油供給は大きく伸びづらくなっている一方で、輸送用エネルギーや石油化学分野で原油の重要性が直ちに失われる訳ではないため、原油を筆頭に天然ガス、石炭など化石燃料の需給は不安定な状態が続くとみられている。2022年には、更に原油価格の高騰が進むとの見方も決して少数派とは言えず、ガソリン価格もたとえ急伸が止まっても、暫くは高値圏での取引が続くとみておいた方が良いだろう。

仮に大幅なガソリン安が実現するシナリオがあるとすれば、それは新型コロナウイルスの感染が再び大流行し、ヒトやモノの移動が大幅に制限されるような状況に陥った場合になる。それはガソリン価格高騰とは別の意味で、困った事態と言えそうだ。

(出所)Yahoo!ニュース「コモディティアナリストの視点



中国の洪水で昨年は穀物、今年は石炭とアルミ価格が高騰

中国の山西省で大規模な洪水被害が発生していることが、石炭、更にはアルミニウム価格の高騰を促しています。先週から連日のように豪雨が観測されており、河川が氾濫して洪水が発生しています。新華社通信によると、当局は12万人以上が緊急避難を求められ、更に住宅1万7,000戸以上が倒壊したと報告しています。

山西省は内モンゴルなどと並ぶ中国の主要な石炭生産地ですが、これによって省内の炭鉱60か所が生産を停止したと報告されています。大雨の影響で石炭を輸送するための鉄道網も寸断されており、そもそも生産が継続できても輸送ができない状況に陥っています。

これから冬の需要期を迎えるタイミングとあって通常時でも大きな問題になり得る動きですが、今年は極めて深刻な問題を発生させています。中国では排出ゼロを目指す観点から地方政府が石炭火力発電を抑制する動きを強め、その影響で石炭の供給量が落ち込み、更に価格が高騰するある種の矛盾が生じていました。このため、高範囲で電力供給不足に見舞われる混乱が生じ、国家発展改革委員会(発改委)は11日に石炭の増産を呼び掛け始めていました(日本経済新聞)。この状況で石炭生産が落ち込めば、当然に石炭価格は高騰します。大連の石炭先物相場は9月下旬に上げ一服となっていましたが、10月入りしてから連日のように過去最高値を更新しています。

【大連石炭先物相場(日足)】
無題













石炭の増産や輸入拡大で電力供給環境の安定化を目指しているタイミングに、天候要因で国内生産に障害が発生する最悪の状況です。具体的にどの程度の減産要因になるのか推計値は出ていませんが、ぎりぎりの需給バランスにある中では、例え僅かな供給障害でも需給バランスに大きな歪みが発生します。

ムーディーズ・インベスターズ・サービスは生産とサプライチェーンの混乱が広がるため、国内総生産(GDP)予測に対するリスクが高まる可能性がある」と指摘していますが、問題はそれに留まりません。電力供給問題は、かねてからアルミ相場の高騰を促していたため、新たな石炭供給懸念、石炭価格の高騰が、アルミ相場を一段と押し上げているのです。

アルミはボーキサイトから取り出されますが、その工程には電気分解があります。純度の高いアルミを取り出すためには、生産工程が大量の電力を必要としているのです。アルミが「電気の缶詰」とも言われるのは、それだけ生産に多くの電力を消費することを象徴する名称と言えるでしょう。電力供給が落ち込めば減産、減産がなくても石炭価格の高騰がコスト高となって、アルミ価格を押し上げます。LMEアルミ相場は10月11日の取引で約13年ぶりの高値を更新しています。

【LMEアルミ相場(3か月物)】
無題










通常、中国経済の混乱は資源価格の押し下げ要因になりますが、中国で生産される資源がダメージを受けると、ドミノ倒し的な供給不安、価格高騰が発生してしまいます。昨年のこの時期は、洪水による大豆生産トラブルが国際穀物相場を大きく押し上げましたが、今年は石炭とアルミが主役になっているようです。治水が間に合わないレベルの気候変動問題の深刻化が、中国の資源生産環境において無視できないリスクを発生させています。今後も同様の展開が繰り返されることを前提条件にする必要があるのかもしれません。




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プロフィール
小菅 努(こすげ つとむ)

1976年千葉県松戸市生まれ。筑波大学第一学群社会学類卒。商品先物・FX会社の営業本部、ニューヨーク事務所、調査部門責任者等を経て、現在はマーケットエッジ(株)代表取締役。商品アナリスト。貴金属、金属、エネルギー、ゴム、農産物などの商品先物市場全般が主なカバー対象です。商社、事業法人、金融機関向けに分析レポートを配信しています。為替、株価指数などもカバーしています。

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