小菅努の商品アナリスト日記

金、プラチナ、原油、天然ゴム、農産物などのコモディティ市場を中心に、仮想通貨、為替、株価指数なども幅広くカバーしています。

金融機関、商社、事業法人、ベンダー様向けにマーケット分析情報の配信業務を行っています。コモディティ市場のレポート配信サービス(法人向け)、寄稿・講演のご依頼などは、下記E-Mailまでお問合せ下さい。

マーケットエッジ株式会社 http://www.marketedge.co.jp/
E-mail  kosuge.tsutomu@outlook.com

equity

ダウ工業平均株価の銘柄入れ替えを考える

ダウ工業平均株価の算出を行うS&P Dow Indiciesは6月19日、ダウ工業平均30種の銘柄入れ替えを発表しました。2015年3月にAT&Tを除外し、アップルを組み入れてから、実に3年6カ月ぶりの組み換えになります。6月26日の取引開始前が予定されています。


ダウ平均に関しては、従来から複合企業企業の形態が時代遅れとされ、「解体論」から株価が低迷していたGEの除外が噂されていましたが、ついにその時が来ました。GEは1896年にダウ工業平均株価が誕生した当時にダウに採用され、その後は一時的に除外された時期もありましたが、米国を代表する企業として僅か30銘柄しか選ばれないエリート倶楽部の中で1席を確保し続けていました。

しかし、近年は事業が分かりづらく動きも鈍い複合企業の形態は投資家に嫌われ、専業化した企業をスピンオフする解体の道に進んでいましたが、S&P Dow Indiciesはもはや米国経済、米国株式市場を代表する銘柄として、GEは適していないと判断を下しました。

プレスリリースをみると、「消費者、ファイナンス、ヘルスケア、テクノロジー企業」が「工業企業」よりも米経済における重要性を増していることが報告されています。
Since then the U.S. economy has changed: consumer, finance, health care and technology
companies are more prominent today and the relative importance of industrial companies is less. Walgreens is a national retail drug store chain offering prescription and non-prescription drugs, related health services and general goods. With its addition, the DJIA will be more representative of theconsumer and health care sectors of the U.S. economy. Today’s change to the DJIA will make the index a better measure of the economy and the stock market.

こうした中、代表的な工業企業であるGEを除外し、新たにドラッグストアで世界最大のウォルグリーン・ブーツ・アライアンスを採用することになりました。これによってダウ工業平均は米経済構造の変化に柔軟に対応していくことになります。
The DJIA is a price-weighted index, and the range of prices among its 30 constitutes matter. The low price of GE shares means the company has a weight in the index of less than one-half of one percentage point. Walgreens Boots Alliance’s share price is higher, and it will contribute more meaningfully to the index. It will also help the index better represent the U.S. market and economy. Walgreens Boots Alliance, which is headquartered in Deerfield, IL, operates as a pharmacy-led health and wellbeing company.
また、技術的な視点では、GEの株価がダウ全体に占める比率が低下しており、ダウの動向に殆ど意味を持たなくなっている影響も指摘されています。ダウは時価総額ではなく各企業の株価の単純平均を起訴としますが、株価が低い企業は重要性が低下することになります。このため、もはやGEの株価が急伸しても急落しても殆ど意味がない状態になっていましたが、より株価水準の高いウォルグリーン・ブーツ・アライアンスを組み込むことで、同社の株価動向はGE以上にダウに対して大きな影響を及ぼすことになります。

マーケットでは、時価総額が高く、米経済における重要性を増すフェイスブック、アルファベット、アマゾンといったハイテク企業の組み入れを予想する向きが多い状況でしたが、これらの企業がダウに採用されるにはもう少し評価が定着するまでの時間が要求されるようです。

【GE】

ge















(画像出所)Yahoo!ファイナンス

【ウォルグリーン・ブーツ・アライアンス】

wba















(画像出所)Yahoo!ファイナンス

上は、GEとウォルグリーン・ブーツ・アライアンスの過去10年分のチャートです。ウォルグリーン・ブーツ・アライアンスは2014年に合併で誕生したためめ、データは14年以降になります。

【Amazon】
amzn
















(画像出所)Yahoo!ファイナンス

そしてこちらはAmazonです。仮にAmazonが採用されていれば、ダウに対しては強力なけん引役になることが期待できましたが、少なくとも1年程度は組み換えは行われなさそうです。

ダウは30銘柄あれば米経済、市場を正確に反映できるとの思想で構成されていますが、銘柄数が少ないだけに、Amazonのような急騰銘柄が採用されればインパクトも大きかったはずですが、組み換えによる上昇ペース加速というストーリーは先送りされました。

もっとも、アマゾンも株価は1,700ドル台とGEとは逆にダウに必要以上の影響を与えてしまうため、いずれにしてもダウに採用される前には分割が必要でしょう。

ちなみに、銘柄入れ替え前後で株価の急伸、急落はダウ、GE、ウォルグリーンのいずれに対してもありませんので念のため。過去のデータでも影響は確認できません。

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

******************************************

マーケットエッジ(株)では、コモディティ市場と金融市場のレポート配信の他、講演のご依頼も承っています。まずはご相談下さい。

【お問合せ先】
マーケットエッジ株式会社 http://www.marketedge.co.jp/
E-mail  kosuge.tsutomu@outlook.com 
    

米株式市場にバフェット砲

著名投資家ウォーレン・バフェット氏は経済専門チャンネルCNBCに出演し、同氏が所有するバークシャー・ハザウェイ社が1~3月期にアップル株を7,500万株買い増したことを明らかにしました。同社は2017年末時点で既に1億6,530万株を保有していましたが、これで合計では440億ドル、バークシャー・ハザウェイ社が保有する株式の約4分の1がアップルによって占められている計算になります。

CNBC=Buffett's Berkshire Hathaway bought a stunning 75 million Apple shares in first quarter


無題















(画像出所)CNBC

1~3月期は世界的に株式相場が不安定化し、特にアップルに関しては4月に台湾の半導体受託最大手TSMCがスマホ販売市場の鈍化を報告していたことが業績悪化懸念を高めていました。

Quick=台湾のTSMCショック、アップル関連株を直撃

しかし、バフェット氏は「3ヵ月で何台売れたかを推測するのに莫大な時間を費やすのはばかげている」として、「来年に雨が降るかどうかを考えて農場を買う人なんていない」との独特の表現で、アップル株を高く評価してることを再確認しています。

マーケットはサプライヤーからの情報に基づいてアップルの苦戦を予測していましたが、5月1日の決算をみてみると、1~3月期のiPhoneの販売は好調でした。どうやら、部品の安定供給のために在庫水準を引き上げたことで、その反動から1~3月期には部品調達を抑制しただけだった可能性が指摘されています。「部品販売=製品販売」の予測の盲点を突かれた格好です。

日本経済新聞=アップル決算、ウォール街を惑わす「在庫」増 

今回のバフェット氏の発言が伝わったのは米時間5月3日夜であり、4日のアップル株価は前日比6.9ドル(3.9%)高の183.83ドルと急伸しました。3月13日以来の過去最高値更新であり、値がさの同社株の急伸はダウ工業平均株価も前日比332.36ドル高の2万4,262.51ドルと大きく押し上げました。

金利上昇、原油高で米企業の業績にはピークアウトの懸念もつきまとっていますが、長期的視点で優良株を買い続けるというバフェット氏の投資行動が、方向性を欠いている米株式市場に新たな刺激を与えることができるか、「バフェット砲」の衝撃が注目される局面になります。

【アップル株】
無題















(出所)Reuters

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

******************************************

マーケットエッジ(株)では、コモディティ市場と金融市場のレポート配信の他、講演のご依頼も承っています。まずはご相談下さい。

【お問合せ先】
マーケットエッジ株式会社 http://www.marketedge.co.jp/
E-mail  kosuge.tsutomu@outlook.com

エクソンとシェブロンの2018年Q1決算、上流部門が好調

4月27日、エクソン・モービルとシェブロンが1~3月期決算を発表しました。ともにダウ工業平均株価の採用銘柄になりますが、エクソンが前日比3.8%安、シェブロンが同1.9%高と明暗を分ける結果になりました。

【1株利益(四半期)】
無題
















まずはエクソンですが、1株利益は前年同期の0.95ドルから1.09ドルまで増加しましたが、市場予測1.12ドルは下回りました。純利益は前年同期の40.10億ドルから46.50億ドルまで16.0%増となっていますが、上流部門が12.45億ドルの増益となった影響であり、下流部門は1.76億ドル、石油化学部門は1.60億ドルのそれぞれ減益となったことが、全体の収益の伸びを抑制しました。

上流部門の設備投資は全体で前年同期の31.19億ドルから37.59億ドルまで急増しており、特に米国内投資が7.04億ドルから12.48億ドルまで劇的とも言える伸びを見せています。ただ、それ以上に原油価格が高騰している影響が大きかった訳です。投資拡大による収益拡大の理想的な流れができています。

【Exon Mobil 2018Q1純利益】
無題














(出所)Exon Mobil


シェブロンの1株利益は前年同期の1.41ドルから1.90ドルまで増加しました。市場予測1.48ドルも上回っています。純利益は前年同期の26.82億ドルから36.38億ドルまで35.6%増加しています。上流部門が18.35億ドルの増益に対して、下流部門は1.98億ドルの減益になっているのは、エクソンと方向性としては同じです。パーミアン、テキサス、ニューメキシコなどのシェールオイル生産事業が順調と報告されています。


何れも上流部門の収益環境が改善しており、原油価格の回復を背景に投資を増やし、更に利益を押し上げる循環が形成されていることが確認できます。決算発表を受けての株価動向は明暗を分けましたが、両社ともに特に問題はない状況です。

マーケットでは中長期的な投資不足に対する懸念の声も高まっていますが、石油業界の収益環境改善は、投資余力の拡大に直結することになり、原油価格低迷が続いたことに伴う投資不足に対する懸念緩和には寄与しそうです。

この二社合計の1株利益は前年同期の2.36ドルから2.99ドルまで拡大し、バリュエーション評価に変動がない場合には前年同期比で26.7%の株価上昇が正当化できることになります。ちなみに、この石油会社二社のダウ寄与度は、4月27日時点の合計で5.8%となっています。

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

******************************************

マーケットエッジ(株)では、コモディティ市場と金融市場のレポート配信の他、講演のご依頼も承っています。まずはご相談下さい。

【お問合せ先】
マーケットエッジ株式会社 http://www.marketedge.co.jp/
E-mail  kosuge.tsutomu@outlook.com
  

株を買って金も買う ~金価格が10連騰~

1月4日のCOMEX金先物相場は、年末・年始を挟んで10営業日続伸となった。昨年12月12日の1オンス=1,238.30ドルをボトムに直近高値は1,327.30ドルに達しており、昨年9月15日以来となる約3ヵ月半ぶりの高値を更新している。為替市場でドルが軟化していることに加えて、イランや北朝鮮など地政学リスクの高まりを材料視した買いが続き、明確な上昇トレンドが形成されている。

世界の株価は年初から急伸しており、本来であれば「安全資産」である金相場を積極的に買い進むような投資環境にはない。米株式市場ではダウ工業平均株価が2営業日連続で過去最高値を更新しており、通常であれば金市場からは投機資金が流出し易い相場環境にあると言える。投資家のリスク選好性が高まる局面にあって、金相場が上昇しているのは通常の状態とは言えない。

無題




















■米経済の強気見通しでも下落するドル
こうした異常とも言える値動きの背景にあるのは、一つがドル安である。本来であれば米国株が過去最高値を更新し、米実体経済の指標も好調さを示すものが相次ぐ中、為替市場ではドル高圧力が発生し易い状況にある。しかし実際には、米国株高にもかかわらず米長期金利が一向に上昇しないことに加えて、米国以上にユーロ圏の良好な経済環境がクローズアップされる中、ドルは対ユーロを中心に下げに転じている。「米国の良好な投資環境→ドル高→ドル建て金相場下落」ではなく、「ユーロ圏の良好な投資環境→ユーロ高(ドル安)→ドル建て金相場上昇」の流れが確立している。


これと同様の相場環境は昨年中旬にも観測されていたが、ユーロ圏経済が欧州債務危機、更にはイギリスの欧州連合(EU)離脱を経て成長を加速させていることが、ドル建て金相場を大きく押し上げている。国際基軸通貨ドルと代替通貨たる金は逆相関の関係にあり、投資家のリスク選好性の高まりがドル高圧力に直結しないことが、ドル建て金相場を押し上げている。

■根強い地政学リスクへの警戒感
もう一つの背景が地政学リスクの高まりである。年末・年始を挟んでイランでは反政府デモが広がりを見せており、今後の展開次第ではイラン国内の混乱状況に留まらず、米国やイスラエル、サウジアラビアなども巻き込んだ国際政治環境の不安定化を招く可能性がある。更に北朝鮮では、新たなミサイル発射が準備中との報道があり、改めて朝鮮半島有事のリスクが高まるシナリオも警戒されている。

株式市場はこうした地政学リスクに大きな関心を示していないが、今後の展開によっては実体経済の動向と関係なく投資家のリスク選好性が後退し、株価が急落するリスクを抱えている。こうした中、株式市場における強気スタンスを後退させるのではなく、株式市場における強気スタンスを維持して株高の恩恵を享受すると同時に、安全資産の金を購入して「万が一」に備える動きが金相場の10営業日続伸を促す重要な要素の一つになっている。

「株を買って、金も買う」と言う投資行動は必ずしも一般的とは言えないが、昨年の株価急騰局面でも金相場は底固く推移しており、株高環境にあっても投資家が漠然とした不安心理を抱えていることが明確に示されている。昨年の場合だと、株価が急落して保険としての金が活躍する場面は乏しかったが、株高の恩恵を享受することを基本方針としつつも、保険の金を購入する投資行動は今年も維持されている。

「株式で攻め、金で防衛する」のが、トランプ米大統領誕生後の大きな投資トレンドになっている。

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)株を買って金も買う ~金価格が10連騰~(Yahoo!ニュース)

記事検索
 
amazon.co.jp
QRコード
QRコード
プロフィール
小菅 努(こすげ つとむ)

1976年千葉県松戸市生まれ。筑波大学卒。商品先物・FX会社の営業本部、ニューヨーク事務所、調査部門責任者等を経て、現在はマーケットエッジ(株)代表取締役。商品アナリスト・東京商品取引所認定(貴金属、石油、ゴム、農産物)。貴金属、金属、エネルギー、ゴム、農産物などの商品先物市場全般が主なカバー対象です。商社、事業法人、金融機関向けに分析レポートを配信しています。仮想通貨、為替、株価指数などもカバーしています。

【URL】
マーケットエッジ株式会社

【E-mail】
kosuge.tsutomu@outlook.com

【SNS】
Twitter

【連絡先】
E-mailでお願い致します。相場動向に関する質問への個別対応は行っていませんのでご了承下さい。
小菅努のコモディティ分析
小菅努のコモディティ分析 ~商品アナリストが読み解く「資源時代」

会員制の有料メルマガです。コモディティの基礎知識から専門的な分析まで提供しています。1,944円/月、週2回以上の発行です。

詳細や購読のお申し込み方法は
http://foomii.com/00025
をご覧下さい。
アナリストの視点
Yahoo!ニュース コモディティアナリストの視点

Yahoo!ニュースに不定期で寄稿しています。

過去のレポートはこちら をご覧下さい。
sponsored link
Twitter
sponsored link