小菅努の商品アナリスト日記

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アップルは「渡らざるを得ない橋」なのか?

アップルは「渡らざるを得ない橋」なのか?

アップルは、米国株においては特別な意味を持つ企業の一つです。時価総額だと、マイクロソフト、アマゾンと世界一位の座を巡って激しい争いを演じており、最も価値の高い企業の一つになっています。単純にダウ工業平均株価に対する影響度の視点でも、アップル一社でダウ全体の4.3%(1月29日時点)を構成しているため、同社の株価動向が株式市場全体に与える影響は極めて大きいものになります。

著名投資家ウォーレン・バフェット氏の率いる投資持株会社バークシャー・ハサウェイは、2016年4~6月期にアップル株を初めて取得しました。その当時は981万株でしたが、直近では2億5,248万株とアップルにとっては保有比率8.96%の第3位の株主になっています。
割高とも批判されていたアップル株を断続的に買い増したことについて、バフェット氏は「アップルが熱烈な顧客を抱えていること」を理由に掲げています。バフェット氏は投資対象企業について「渡らざるを得ない橋」との表現を好んで使いますが、コカ・コーラ、アメックス、ウェルス・ファーゴ、クラフト・ハインツなどと同様に、社会において消費者の生活に密着し、圧倒的なシェアを有している企業の価値は増加し続けるとの考えが底流にあります。アップルは、他の生活必需企業と同様に「渡らざるを得ない橋」と考えている訳です。

一方、マーケットではアップルの業績について悲観的な見方が広がりを見せています。主力のスマートフォン「iPhone」の販売が伸び悩む中、もはやバフェット氏の言う「橋」ではないのではないかとの懸念が広がっているためです。実際に1月29日に発表された10~12月期決算では、売上高が前年同期比4.5%減の843億1,000万ドルとなり、特に「iPhone」に関しては15%も販売が落ち込んだことが報告されています。

しかし今回の決算では、製品販売こそ前年同期比7.2%減の734億3,500万ドルに留まりましたが、サービス収入は同19.1%増の108億7,500万ドルと急増しています。このサービス収入は、App StoreやiTunesなどのいわゆるソフト販売ですが、粗利益率が63%と驚異的な高さにあり、純利益の落ち込みを最小限に留めました。

世界的にスマホ出荷市場は縮小傾向にありますが、アップルが既に世界中で保有されている「iPhone」を通じてサービス収入を増やすことができれば、「iPhone」販売が伸び悩んでも、サービス収入の拡大で増収増益を続けることができる可能性が浮上します。世の中にとってアップルの提供するサービスは「橋」なのか否かが、米国株式市場で問われています。

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)「大起ニュース」2019年2月4日

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利上げサイクルの停止とNYダウ

利上げサイクルの停止とNYダウ

米国の利上げサイクルの終了時期を巡る議論が活発化しています。9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)では2020年まで段階的に利上げを進める方向性が示されていましたが、世界経済の先行き不透明感が強まる中、本当にこのまま利上げを継続すべきか否か当局者の意見も割れ始めています。
9月時点での米金融当局者の関心事は、いかにして景気の過熱感を抑制するかになっていました。トランプ米大統領の大規模減税、インフラ投資などで米経済は活況を呈しており、特に賃金上昇圧力の強さが経済を必要以上に下押しするリスクが警戒されていました。

しかし、国際通貨基金(IMF)が10月に世界成長見通しを引き下げるなど、世界経済の見通しが徐々に悪化する中、米経済成長も従来想定されていたよりも下振れするのではないかとの懸念が、米金融政策見通しにも修正を迫り始めています。

2015年12月に始まった今回の利上げサイクルは、今年12月でちょうど3年目を迎えます。仮に18~19日のFOMCで0.25%の追加利上げが実施されれば、累計の利上げ幅は2.00%に達することになります。一方、前回の利上げサイクルは2004年6月から06年6月にかけて行われましたが、ちょうど2年間で累計4.25%の利上げが実施されています。

このため、前回利上げ幅と比較するとまだ十分な利上げ余地が残されているとの解釈も成り立ちますが、ここ最近の利上げサイクルは概ね1~2年程度のサイクルで転換期を迎える傾向にあります。景気を刺激も抑制もしない金利水準(中立金利)は、現在3.00%(レンジは2.5~3.5%)と米金融当局は見ていますが、12月に追加利上げが実施されると、その下限に差し掛かります。

米連邦準備制度理事会(FRB)のクラリダ副議長は明確に中立金利で利上げを停止すべきと主張していまが、まだ直ちに利上げサイクルが停止されることはないでしょう。ただ、今後は本当に利上げ継続が可能なのか、従来以上に雇用やインフレ指標に対して注意が必要な相場環境に移行します。雇用やインフレの伸びが鈍化すれば、いよいよ利上げサイクルは終了します。

前回の利上げ終了局面を振り返ってみると、06年6月に利上げサイクルが終了した後もダウ工業平均株価は上昇し続けましたが、07年10月に「利下げ」が始まった月が、その後の株安局面に突入する前の高値ピークでした。中立金利は絶対的なものではありませんが、株高局面のクライマックスをどの時点で迎えるのかの観点でも、FRBがいつまで利上げを続けるのかは重要な論点になります。

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)「大起ニュース」2018年12月3日

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原油価格が1年1カ月ぶり安値、株価と同時急落の意味

原油価格が1年1カ月ぶり安値、株価と同時急落の意味

11月20日のニューヨーク取引時間中に、値下り傾向にあった国際原油価格が改めて急落した。NYMEX原油先物相場は、1バレル当たりで前日比3.77ドル安の53.43ドルととなっている。同日の安値は52.77ドルであり、僅か1営業日で最大7.7%の下落率を記録している。これは2017年10月26日以来、約1年1カ月ぶりの安値更新となる。

背景としては、前日に続いて米国株が大きく値崩れを起こしていることがある。米中首脳会談の開催が近づいているが、貿易戦争の先行き不透明感が払しょくできていないことが嫌気されている。更には新型「iPhone」の販売不振が警戒されているアップル株が急落する中、20日の米株式市場ではダウ工業平均株価を構成する30銘柄が全て下落する総売り状態になっている。

株価と原油価格とは、必ずしも完全に連動する必要性はない。寧ろ原油価格の下落は企業収益に対してポジティブな面もあり、実際に今夏以降に国際原油価格が70ドル台に乗る場面が増えると、株安リスクの一つとして認識されていた。

無題

















しかし現在のマーケット環境は、株式買い・原油買いという一部ファンドが採用してきたグローバル・マクロ戦略の破たんが警戒されている状況であり、株式市場から投機資金の引き揚げが行われると、原油需給動向とは関係なく原油市場からも投資資金が引き揚げられることになる。「株安→原油安」と「原油安→株安」で「卵が先か鶏が先か」のような二つの大きな流れが発生しており、こうした負の流れが続くと詳細な企業業績環境や原油需給環境を巡る議論は意味を持たなくなってしまうことになる。

原油価格の視点であれば、基礎にあるのは需給環境(とその見通し)であり、現在は厳しい状況にあることは間違いない。国際エネルギー機関(IEA)は、仮に石油輸出国機構(OPEC)の産油量に変動がなければ、2019年は年間を通じて供給過剰状態に陥るとの見通しを示している。12月6日のOPEC総会に向けて減産対応を巡る協議も行われているが、まだ最終合意に至るのかは不透明感が強い。(参考:原油価格急落でも減産を拒否するロシアが考えていること

オプション市場の動向を見る限り、原油価格に関しては50.00ドルを防衛ラインとみている向きが多く、このまま一気に50ドル割れから更に大きく値崩れを起こすのかは疑問視される。産油国の財政環境、シェールオイルの生産環境などにも影響が及びかねない価格水準であり、売られ過ぎ感を示す指標も数多い。

ただ、株価と原油価格が同時に急落する現象は、良好な実体経済環境・見通しを背景とした株高・原油高のストーリーに疑問を持つ向きが増えていることを示している。そして、この種の局面では、短期スパンだとファンダメンタルズとは乖離した価格形成が行われることも少なくない。

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)原油価格が1年1カ月ぶり安値、株価と同時急落の意味(Yahoo!ニュース)

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「炭鉱のカナリア」に異変、安全資産としての金価格

「炭鉱のカナリア」に異変、安全資産としての金価格

今年の金市場においては、「金は安全資産としての役割を終えたのではないか?」との議論が一種のブームになっていた。

トランプ米政権の「アメリカ・ファースト」と称される通商政策は世界経済に大きな不確実性をもたらしたが、こうした中でも金価格は一向に上昇せず、寧ろ投資家は金を売却する傾向を強めたことで、金の安全資産性が疑問視されたのである。貿易戦争が勃発しても金が買われず、逆にドルが買われたということは、アメリカ一人勝ちの世界にあって、投資家がドルを新たな安全資産として認識し、伝統ある安全資産としての金の時代が歴史的役割を終えた可能性を示唆していた。

しかし、10月に米国発で世界の株式市場、更には金融市場が動揺を見せると、金市場に対して投機マネーの流入が再開され、代わってドルの上値が重くなり始めている。まだ金価格の値位置は決して高いとは言えないが、COMEX金先物価格は8月16日の1オンス=1,167.10ドルをボトムに10月上旬にかけては1,200ドルの節目水準で揉み合う展開が続いていたが、10月26日には一時1,246.00ドルまで上昇し、7月13日以来の高値を更新している。金の輝きが強まり始めていることは間違いない。

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象徴的なのが、株式市場で取引されている金上場投資信託(ETF)の投資残高である。金ETFは投機資金の流出入に応じて金保有高を調整するが、今年は5月から9月まで5か月連続で金ETFを売り越していた米国人投資家が、10月には半年ぶりに買い越しに転じたのである。これまで、いくら貿易戦争が深刻化しても、国際政治環境が不安定化しても一向に関心を持たれなかった金に、投機マネーが流入し始めている。

10月に米国人投資家が購入した金ETFは僅か12.4トンであり、過去5か月の累計で149.4トン売却されていたことを考慮すれば、誤差の範囲内と言えるかもしれない。しかし、金価格が上昇傾向を見せ、金ETF市場に対する資金が流入し始めていることは、投資家がこれまで楽観視していた株式市場、そして実体経済環境にリスクの芽を見始めていることを示している。

金価格の変動要因は多岐にわたるため、一概に金価格が上昇したら株式市場が危険とは言い切れない。例えば、2008年の世界同時金融危機の時は株価急落に先行して金価格が急伸していたが、2016年や17年は株式相場と金相場が歩調を合わせて上昇している。

ただ、11月16日には米連邦準備制度理事会(FRB)のクラリダ副議長が政策金利について「中立水準に留まることは理にかなっている」との認識を示すなど、これまで中立金利を上回ることを前提としていた米金融政策環境にも変化の兆候が見受けられることは確かである。

これまでは、貿易戦争が勃発していると言っても米実体経済は堅調であり、金融政策も引き締め的なスタンスを維持できて来たことが、株高・ドル高を促し、配当も金利も生まない金を保有する必要性は一貫して低下していた。しかし、いよいよ貿易戦争が実体経済に影響を及ぼし、それが米金融政策の利上げ打ち止め論にまで発展するのであれば、株式相場が上昇を続けるのは難しくなり、ドルの上昇地合にもブレーキが掛かる可能性が浮上する。

まだ現在の金価格は実体経済減速、米利上げサイクル終結が前倒しされる「可能性」を示唆するレベルに留まっているが、ここから金価格が更に本格的に上昇し始めれば、それはもはや米経済が利上げに耐えられなくなるリスクを示すことになる。

冒頭で「金は安全資産としての役割を終えたのではないか?」との議論を紹介したが、これまで貿易戦争でも金価格が上昇しなかったのは安全資産に対する投資ニーズを高めるレベルの危機とは評価されていなかっただけである。本当に安全資産が必要とされれば金価格は上昇することになる。金の安全資産としての役割は終わっておらず、金価格が「炭鉱のカナリア」として危機発生を警告し始めていることには注意したい。

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【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)「炭鉱のカナリア」に異変、安全資産としての金価格(Yahoo!ニュース)

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米中間選挙後のNYダウを考える

米中間選挙後のNYダウを考える

11月6日(火)、米国では中間選挙が行われます。100議席ある上院の議席の約三分の一に当たる35議席、435議席ある下院の全ての議席が改選対象になります。今回はトランプ政権が誕生してから2年間の実績、そして大統領を支える与党(共和党)に国民がどのような評価を下すのかが問われます。
10月の米国株は特に目立った材料がない中で突然に急落地合を形成し、マーケットでは1)米金利上昇、2)イタリア財政問題、3)ブレグジット交渉の難航、4)サウジの反政府記者殺害、5)企業業績のピークアウト懸念などの様々な要因が指摘されていますが、「中間選挙を巡る不確実性」も投資家のリスク選好性を後退させたことは間違いないでしょう。

今回の中間選挙については、上院は多数を占める共和党の改選対象議席が少ないため、共和党の過半数獲得がほぼ確実視されています。一方で、下院は当初は民主党が有利と言われていましたが、選挙戦の終盤に共和党が強力な追い上げを見せており、民主党と共和党のどちらが過半数を獲得するのか五分五分に近い確率になっています。

米国株への影響を考えると、上下両院で共和党が過半数を獲得する展開が理想的です。トランプ政権の政策には批判の声もありますが、強力なリーダーシップで経済政策を展開できる政治環境は、米経済成長を下支えすることになるでしょう。

一方、仮に下院で民主党が過半数を獲得した場合には、米国株に対してはリスク要因になります。下院がトランプ政権の打ち出す政策に徹底的に反発すれば、「決められない政治」に戻ってしまう可能性が高まるためです。特に債務上限や予算案といった重要政策で大統領と議会が対立し、下院民主党が政策論争ではなくトランプ政権のスキャンダル追及に本腰を入れ、大統領弾劾を目指すような動きをみせると、政治リスクが改めてマーケット環境を不安定化させる可能性もあります。

しかし、一般的に大統領一期目の中間選挙では、共和党の大統領の場合は民主党が有利、逆に民主党の大統領の場合は共和党が有利になるものです。例えば1994年のクリントン政権、2010年のオバマ政権の中間選挙では、いずれも議会勢力が逆転現象を見せています。そして、過去の米国株はこうした大統領と議会のねじれに伴う「決められない政治」を無難に乗り切ってきた実績があります。もともと、米経済は今年をピークに来年以降は成長ペースを鈍化させる見通しになっていますが、中間選挙の結果を受けて現在進行中の利上げサイクルが消化できなくなるような成長鈍化に陥らなければ、中間選挙がどのような結果になったとしても、先行きを悲観視する必要性はないでしょう。

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)「大起ニュース」2018年11月5日

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プロフィール
小菅 努(こすげ つとむ)

1976年千葉県松戸市生まれ。筑波大学卒。商品先物・FX会社の営業本部、ニューヨーク事務所、調査部門責任者等を経て、現在はマーケットエッジ(株)代表取締役。商品アナリスト・東京商品取引所認定(貴金属、石油、ゴム、農産物)。貴金属、金属、エネルギー、ゴム、農産物などの商品先物市場全般が主なカバー対象です。商社、事業法人、金融機関向けに分析レポートを配信しています。仮想通貨、為替、株価指数などもカバーしています。

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