小菅努の商品アナリスト日記

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大豆在庫見通しの引き上げ続く、米中首脳会談は転換期になるか

大豆在庫見通しの引き上げ続く、米中首脳会談は転換期になるか

米国産大豆需給が緩和している。米農務省(USDA)が11月8日に公表した最新の需給報告(WASDE)では、2018/19年度の米国産大豆の期末在庫見通しが前月の8.85億Bu(在庫率は20.7%)から9.55億Bu(同23.3%)まで引き上げられている。これで大豆在庫見通しの上方修正は5カ月連続のことになる。

今季は収穫期に秋の長雨に見舞われた結果、大豆のイールド(単収)は前月の53.1Bu/エーカーから52.1Buまで、今季初の下方修正になっている。過去最高のイールド環境に変化は見られないが、これによって生産高見通しは前月の46.90億Buから46.00億Buまで下方修正されている。

しかし、今報告では輸出需要見通しが前月の20.60億Buから19.00億Buまで大幅に下方修正された結果、在庫見通し引き上げのトレンドに修正を迫ることはできなかった。

こうした厳しい需要評価の背景にあるのは、米中貿易戦争である。大豆は中国が世界最大の輸入国であり、18/19年度は世界で輸入される大豆総量1億5,227万トンに対して、中国のみで9,000万トンと、約6割の世界シェアを有している。この中国が貿易戦争の報復課税でコスト高になり、しかも通商交渉のツールとして政治的要因からも米国産大豆の輸入量を抑制する中、米国産大豆需給は緩和している。

当然に中国の大豆需要が消滅した訳ではないため、米国産の代わりとして南米産大豆への引き合いが強くなっている。南米では逆に品薄感が強くなっている。このため、従来であれば南米産大豆を調達していた消費国が、貿易戦争の影響で割安になった米国産大豆調達に動いているため、必ずしも「中国の米国産大豆輸入減少=米国産大豆の輸出減少」となる訳ではない。しかし、サプライチェーンの混乱は米国産大豆の輸出見通しを4年ぶりの低水準にまで押し下げており、豊作で緩和していた米国産大豆需給を、需要サイドから更に緩和させる状況に陥っている。

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米国産大豆の期末在庫は13/14年度には僅か0.92億Bu(在庫率は2.6%)に留まっていたが、14/15年度以降は豊作の影響もあって5年連続で在庫積み増しが進む見通しになっている。17/18年度の4.38億Bu(同10.2%)から9.55億Bu(同23.3%)までの在庫急増が予想されているが、米中貿易戦争の影響が否定できない状況にある。

それだけに、11月30日~12月1日の20カ国・地域(G20)首脳会合に合わせて予定されている米中首脳会合の結果次第では、米国産大豆の輸出需要見通しが大幅に引き上げられる可能性を抱えている。これまでの反動もあって中国が米国産大豆の輸入再開に踏み切れば、大豆需給の緩和状態を否定することは難しいものの、在庫の余剰感は薄れることになる。

実際に、11月1日に米国のトランプ大統領と中国の習国家主席が電話会談を行ったことが確認されると、CBOT大豆先物相場は10月末の1Bu=851.75セントから11月2日の900.75セントまで急伸し、8月20日以来の高値を更新している。

今年の大豆相場は、豊作と米中貿易戦争の影響で安値低迷状態が続いているが、米中首脳会談の結果によっては900~950セント水準までコアレンジを切り上げる可能性を抱えている。トランプ大統領の決断に強く依存する予想が難しいイベントだけに、11月末から12月初めにかけて大豆相場はこのまま安値低迷状態で年末を迎えるのか、それとも安値是正に向かうのか、大きな分岐点を迎えることになる。

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【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)大豆在庫見通しの引き上げ続く、米中首脳会談は転換期になるか(Yahoo!ニュース)

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過去最高の豊作が実現

過去最高の豊作が実現
シカゴ穀物相場は軟調

米穀倉地帯では2018/19年度産の収穫が本格化し始めている。春先の作付けから夏の受粉期を過ぎ、成熟した穀粒を農地から回収する時期を迎えている。今年は世界的に熱波が深刻化し、それは米国においても例外ではなかった。主要穀倉地帯ではノースダコタやサウスダコタ州などでも土壌水分不足が深刻化し、十分な収量を確保できるのか疑問の声も上がっていた。しかし、天候相場を通じてみると不作を招くまでの深刻な干ばつ被害が発生した訳ではなく、最終的には豊作実現がほぼ確実な情勢になっている。

米農務省(USDA)の最新報告によると、トウモロコシのイールド(単収)見通しは181.3Bu/エーカーであり、前年度の176.6Buを2.7%上回る過去最高の豊作状態が報告されている。これでトウモロコシのイールドが過去最高を更新するのは3年連続であり、多少の天候トラブルでも傾向イールドを大きく上回るのが可能な状態になっている。品種改良や農業技術進展の影響などが指摘されているが、従来の気象環境とイールドとの関係性を見直す必要性さえ浮上している。

大豆のイールド見通しも52.8Buであり、前年度の49.1Buからは7.5%の上振れになる。これは16/17年度に次ぐ過去最高の更新であり、今年はトウモロコシと大豆がともに過去最高のイールドを記録する歴史的な豊作環境が実現したことになる。

ただ、マクロ需給環境の評価はトウモロコシと大豆とで大きく異なる。トウモロコシに関しては、2年連続で作付面積を削減していることもあり、総供給量ベースだと16/17年度の169.37億Buをピークに168.79億Buまで小幅ながら減少する見通しになっている。即ち、作付面積の減少が豊作ショックをある程度まで相殺する見通しになっている。一方、総需要は3年連続で過去最高を更新する見通しであり、期末在庫だと16/17年度の22.93億Buから17/18年度が20.02億Bu、18/19年度が17.74億Buと、急ピッチな在庫減少傾向が想定されている。

例年、収穫時期を迎える9月のトウモロコシ相場は軟化し易いが、過去の在庫率と価格との関係性をみると、9月の1Bu=350セントを割り込むような展開には過熱感が強い。例年9月前後にトウモロコシ相場は底入れする傾向にあり、現状は年間最安値を出し尽くす時期との評価になる。

一方、大豆は作付面積の十分な削減が進まないこともあり、5年連続で在庫積み増しが想定されている。期末在庫見通しは17/18年度の3.95億Buから8.45億Buまで急増する見通しであり、大豆相場が大きく上昇する余地は殆んど存在しない。しかも、米中貿易摩擦で中国向け輸出に不透明感が強く、更にはアフリカ豚コレラ(ASF)といった飼料需要環境に対する不透明感を高める動きもある。仮に底入れしても本格反発は難しく、安値低迷状態が続こう。
(2018/09/19執筆)

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)中部経済新聞2018年9月24日「私の相場観」

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H29年度の食料自給率は38%、前年度から横這い

農林水産省によると、平成29年度の食料自給率は、カロリーベースで38%になりました。前年度からは横這いですが、過去2番目の低水準になります。小麦の増産が実現しましたが、穀物全体に占める米の比率低下、食肉需要増加に伴う輸入肉の増加などの影響が指摘されています。

農林水産省=日本の食料自給率

食料自給率をカロリーベースで計算することには否定的な見方もありますが、生産額ベースでも前年度の67%に対して65%であり、厳しい状況に変化はありません。もちろん、いざとなれば穀物生産比率を引き上げ、食肉生産を取りやめれば自給率の大幅な向上も可能ですが、政府目標45%を達成する目途が立っていません。
無題












(出所)農林水産省

この問題を解決する手法は二つあり、一つが国内の食料生産量を引き上げることです。農振水産省は国も別に生産目標を設定していますが、29年度に目標を達成しているのは米とてん菜、鶏肉、鶏卵くらいです。

一方、需要サイドでは国内市場の開拓と輸出拡大があります。

無題















(出所)農林水産省

全国民が、毎日、ごはんを一口(17グラム)多く食べるだけで食料自給率が1%上昇します。糖質制限ダイエットに逆行するものですが、意識して国産の食料を消費したいものです。


【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

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グローバルな熱波で小麦高

グローバルな熱波で小麦高
地球温暖化の影響だと深刻

長引く熱波が北半球の大部分を覆う中、世界各地で山火事や干ばつ、豪雨などの天候被害が広がりを見せている。世界気象機関(WMO)は、今夏に記録的な高温や熱波が観測されているが、今後も暫くは同じ傾向が続くとの見通しを示している。

なぜ今夏が記録的な高温・熱波に晒されているのかは気象専門家でさえも把握しきれておらず、「地球温暖化が影響しているらしい」という漠然とした評価に留まっている。ただ、高温・熱波の影響は当然に農産物生産にも大きな被害をもたらすことになり、シカゴ穀物市場では特に小麦相場の上昇が目立つ状況になっている。CBOT小麦先物相場は、6月下旬から7月初めにかけて1Bu=470~510セント水準で揉み合う展開になっていたが、7月末から8月初めにかけては550セントの節目も突破している。欧州から旧ソ連諸国にかけて記録的な熱波が観測される中、同地区の生産量が下振れすることで、米国産小麦に代替需要が発生するとの思惑が広がっている。

米農務省(USDA)は7月需給報告の段階で、既にロシアやウクライナ、欧州連合(EU)などの小麦生産高見通しを大きく引き下げていた。世界の小麦生産高見通しは6月報告の7億4469万トンに対して7億3626万トンと僅か1カ月で1.1%下方修正され、前年度の7億5792万トンからは2.9%の減産が見込まれている。ただ、その後も欧州や旧ソ連諸国では殆ど降雨が観測されない状況が続いており、8月10日に報告されると次回需給報告では、生産高見通しをもう一段階引き下げるのは必至とみられている。

米国産小麦の期末在庫は、2013/14年度の5.90億Buをボトムに、16/17年度には11.81億Buまで急増していた。しかし、17/18年度は11.00億Bu、18/19年度は9.85億Buまでの減少が見込まれているが、このまま欧州から米国産への需要シフトが進めば、在庫にタイト感が浮上する可能性さえ浮上することになる。

 ここ数年、世界の小麦需給は潤沢な供給量を背景に緩和傾向を強めていた。多少の天候不順があっても高イールド環境に変化はなく、寧ろ生産トラブルによって多少の減産圧力が発生した方が、小麦需給の正常化には好ましいとみられていた。しかし、未曾有の熱波がグローバルな規模で発生する中、「世界で同時に発生する不作」というこれまでに経験したことのない事態に直面している。

 これが今年に限定された動きであれば、それほど深刻な問題にはならない。世界各地で頻発する天候不順が、たまたま一つの年に集中しただけとの評価に留まるためだ。しかし、仮に地球温暖化による気象環境の不安定化という大きな相場テーマが存在している場合には、小麦相場の性質がこれまでとは大きく異なるものになる可能性がある。なぜグローバルな熱波が発生しているのか分からい不気味さが、穀物相場を不安定化させている。
(2018/08/01執筆)

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)中部経済新聞2018年8月6日「私の相場観」

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トランプ大統領の関心は農家世論にシフトしている

米中貿易摩擦は解決の目途が立たない状況ですが、中国政府側の視線は米政府から米農家へとシフトしているようです。トランプ政権との通商交渉に意味があるのか疑問視される中、貿易摩擦のネガティブな影響を最も強く受けやすい米農家をトランプ政権のボトルネックとみて、懐柔に動いています。

例えば、中国中央テレビ(CCTV)の国際放送部門、中国グローバルテレビネットワーク(CGTN)は7月20日、米農家向けに英語のアニメーションをウェブサイト上に掲載し、貿易戦争のダメージを周知させようとしています。

Reuters=アングル:大豆アニメで中国が米農家に直訴、貿易戦争で新戦略

この動きに慌てたのかは定かではありませんが、トランプ政権は24日に米農家に対して120億ドルの直接支援策を打ち出し、国内(農家)世論の締め付けに動きました。

Reuters=トランプ政権、米農家に最大1.3兆円支援 貿易摩擦の影響緩和

そして25日の米欧首脳会合では、これまで強硬な発言を行っていた自動車分野での制裁を見送っていますが、「米国産の大豆や液化天然ガス(LNG)の対EU輸出拡大に向けて交渉を始めること」で、トランプ政権から予想外の柔軟姿勢を引き出すことに成功したようです。トランプ大統領の関心が、欧州に対する攻撃から、中国に対する防御にシフトする中、EUが米国産大豆の調達を拡大し、中国の輸入減少の穴埋めを行うことが、トランプ大統領の心を揺さぶった模様です。

日本経済新聞=トランプ政権、米農家に最大1.3兆円支援 貿易摩擦の影響緩和

以上はあくまでも可能性の議論でしたが、トランプ大統領が中国が「米農家を標的に」していることに強い不満を表明したことで、ここ最近の一連の流れが全て対中国政策だったことが確認できました。表面上は米欧間で自動車分野を巡って対立が観測されていましたが、トランプ大統領の関心事は農産物に傾斜しているのです。

Reuters=トランプ大統領、中国を批判 通商政策で「米農家を標的に」

中国側の米農家を直接ターゲットとした攻撃・懐柔策が有効に機能していることが確認できると同時に、他国にとっては米国産農産物購入が強力なカードとして機能することは明らかです。少なくとも現在は、仮にトランプ政権から無理難題を押し付けられた際には、米国産穀物輸入カードが極めて強力な交渉カードになりそうです。

無題














(出所)CGTN

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プロフィール
小菅 努(こすげ つとむ)

1976年千葉県松戸市生まれ。筑波大学卒。商品先物・FX会社の営業本部、ニューヨーク事務所、調査部門責任者等を経て、現在はマーケットエッジ(株)代表取締役。商品アナリスト・東京商品取引所認定(貴金属、石油、ゴム、農産物)。貴金属、金属、エネルギー、ゴム、農産物などの商品先物市場全般が主なカバー対象です。商社、事業法人、金融機関向けに分析レポートを配信しています。仮想通貨、為替、株価指数などもカバーしています。

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