小菅努の商品アナリスト日記

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急増が予想されるコーン在庫

急増が予想されるコーン在庫
28年ぶりの需給緩和状態か

米農務省(USDA)は、2020/21年度の米国産トウモロコシ期末在庫が、前年度の20.98億Buから33.18億Buまで急増するとの見通しを示した。在庫率は、前年度の15.2%から22.4%まで急伸する見通しになるが、これは1992/93年度以来の需給緩和状態が想定されていることを意味する。

米中貿易摩擦の影響を受けづらく、価格が比較的安定していることで、農家の作付け意欲が著しく高まるとみられている。作付面積は、前年度の8970万エーカーから9700万エーカーまで8.1%の急増見通しであり、トレンドイールドが実現すると、生産高は前年度の136.63億Buから159.95億Buまで急増する見通しになる。

米中通商合意、新型コロナウイルスの需要ショックの一巡などを受けて、総需要は前年度の138.30億Buから148.00億Buまでの増加見通しだが、大規模な不作が発生しない限りは、トウモロコシ需給に対する緩和圧力は一段と強まる可能性が高い情勢になっている。

では、今季の生産環境はどのような状態にあるかと言えば、豊作を期待させる状況になっている。この時期は作付け進捗率が注目されるが、5月10日時点では67%と、前年同期の28%、平年の56%を上回っている。散発的な寒波も報告されているが、全体としては適温・適雨が観測されており、トレンドイールドを大きく下回るようなリスクは限定される。

USDAは、20/21年度の農場平均価格を1Bu=320セントと、前年度の360セントから更に下落するとの見通しを示している。在庫積み増し圧力を阻止するのは難しい状況が、相場を圧迫し続ける見通し。

足元では、新型コロナウイルスの感染被害が一服し、経済活動の再開が模索されている。ガソリン需要が回復すれば、ガソリンに添加されるエタノール需要も回復する。また、トランプ米大統領が食肉加工工場の操業継続を命じたことで、飼料用需要の落ち込みに対する警戒感も後退している。農家が安値での売り渋り傾向を強めていることもあり、300セントの節目を大きく割り込むようなリスクは限定されている。

しかし、19/20年度の期末在庫見通しも2カ月連続で上方修正中であり、3月時点の18.92億Buが、4月には20.92億Bu,5月には20.98億Buまで、一気に引き上げられている。
また、新型コロナウイルスの責任論、米中通商合意の履行状況を巡って、米中間の対立が激化している。トランプ米大統領は、対中制裁関税の可能性も示唆しており、仮に米国と中国との間の穀物取引が大きなダメージを受ける事態になると、穀物相場全体に急落圧力が発生するリスクは残されている。
(2020/05/14執筆)
【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)中部経済新聞2020年05月18日「私の相場観」

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有事の小麦買い? 小麦先物価格が3日で10%上昇

小麦の国際価格が、突然に急伸し始めた。シカゴ小麦先物価格(中心限月)は、3月16日に1Bu(ブッシェル、1Bu=27.215kg)=492.00セントと昨年10月11日以来の安値を更新していたが、19日の取引では一時541.00セントまで、僅か3日で最大10.0%の急伸地合になっている。

今年は潤沢な国際供給環境、また株価や原油価格急落による投資環境の悪化もあり、小麦価格はほぼ一貫して値下りしていた。原油価格急落の影響でエタノール需要減少の思惑からトウモロコシ価格が急落したこともあり、小麦価格も値下り傾向が目立っていた。しかし、今週に入ってから突然に安値修正の動きが強まり、主要なマーケット価格が軒並み急落する中で、小麦価格は際立って異常な値動きをみせている。

その背景として指摘されているのが、新型コロナウイルスの感染被害拡大を受けて、消費者が小麦を原料とする食料品を買いだめしている影響だ。新型コロナウイルスの感染被害の中心が中国から欧米に移動する中、欧米諸国は入国規制の強化と同時に、国内でも外出規制の動きを強め始めている。例えば米ニューヨーク州では3月15日にレストラン、バー、カフェなどの18:00以降の営業禁止が決められ、外食産業が壊滅的被害を受けている。

こうした中、消費者は食料品や日用品などの買いだめを進める動きを強めている。欧米では、その買いだめ行動の対象にパスタやパンがあり、短期的に原料である小麦の需要が急増するとの観測が広がっているのだ。

供給には問題がないと各国政府や食品各社が発表しているが、店頭での需要が短期的に急増する中、品薄感が更に需要を押し上げる状況になっている。正確な統計はないが、パスタ売上高が突然に100%増えたといった報告も目立つ。日本で、数週間前にみられて漸く終息に向かっているトイレットペーパーの買いだめに近い現象が観測されている。

コモディティ市場では、「有事の金買い」という言葉があるが、足元の金価格は投資家のキャッシュを求める動きから急落している。穀物や農産物市場にとっても、基本的には経済環境の不安定化はネガティブ材料と評価される傾向が強い。しかし、現在は「有事の小麦買い」とも言える異常な現象が観測されている。過去にはあまり見たことのない値動きであり、新型コロナウイルスの感染被害がコモディティ市場に与える影響の特殊性が、よく窺える状況になっている。

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

※図表はリンク先の記事参照。

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米中通商合意から間もなく1カ月、上がらない穀物価格

1月15日に米中両国は「第一段階の通商合意」に署名した。それから間もなく1カ月が経過しようとしているが、穀物価格は一向に上昇しない状態が続いている。CBOTトウモロコシ先物価格は、1Bu(ブッシェル)=375~395セント水準で完全な膠着状態が続いている。米中間の対立が最も強く警戒されていた昨年9月9日の352.25セントからは価格水準を切り上げているが、10月14日に瞬間的に400セント台に乗せた後は、大きな値上がりも値下りもみられない膠着状態が続いている。

米中通商合意では、2017年の240億ドルの輸入実績に対して、2020年は追加的に125億ドル以上、21年は195億ドル以上の米国産農産物を追加的に購入することが合意されている。しかし、少なくとも穀物価格の視点では、通商合意の目立った成果は確認できない状態が続いている。

これは、米農務省(USDA)が2月11日に発表した最新の需給報告(WASDE)についても同じである。USDAは毎月1度最新の需給見通しを公表しており、今回は通商合意署名が行われて以降、初めての需給報告発表になる。しかし、2019/20年度の米国産期末在庫見通しは前月の18.92億Buから修正されておらず、少なくともUSDAは通商合意署名で米国産穀物需給環境が劇的に改善するとの見方は支持していないことが確認できる。

この点についてUSDAの首席エコノミスト、ロバート・ヨハンソン氏は、需給報告発表に先立つ6日、今月の需給報告に通商合意の内容は含まれないと説明している。USDAの需給予想には発効済みの通商協定が含まれるとしているが、「我々は第一段階合意の詳細を把握していない」として、直ちに米国産穀物の中国向け輸出見通しを引き上げるような対応は行わないとしている。

確かに中国は米国産農産物の追加的購入を約束しているが、1)いつ、2)どの品目を、3)どれだけの規模購入するのかは、全く分からない状態にある。そもそも、中国が通商合意を順守するのかも疑問視する向きさえある。一般的にこの種の通商合意に際しては、合意に合わせて大規模な購入契約の成約発表などがセレモニー的に行われる傾向が強いが、中国の劉鶴・副首相は通商合意の署名に際して、「市場の状況に基づいて」購入するとして、無条件かつ早期に大規模購入を行うとの市場観測をけん制していた。

しかもタイミングの悪いことに、中国では新型コロナウイルスの感染被害が発生し、穀物需要そのものが想定よりも大きく落ち込むリスクが警戒されている。また、経済活動が停滞する中、穀物輸入ビジネスへの影響にも不透明感が強い。

更に、為替市場では比較的安全とされる米ドルに対する資金流入が強くなっており、米国産穀物が競合するブラジル通貨レアルなどに対して、ドル高傾向が著しく強くなっている。レアルは2月に対ドルで過去最安値を更新しており、米国産穀物の価格競争力は急速に失われている。これから南米産は収穫作業が進んで輸出が本格化するが、米国産穀物が販売先を確保できるのかは不透明感が強い状況になっている。

カドロー米国家経済会議(NEC)議長によると、中国の習近平・国家主席は、トランプ米大統領の電話会談において、新型コロナウイルスの感染被害で通商合意の履行に影響が生じることはないと発言した模様だが、穀物価格の安値膠着状態は中国の米国産農産物買い付けに対する不信感が根強いことを示している。

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)米中通商合意から間もなく1カ月、上がらない穀物価格(Yahoo!ニュース)
※図表はリンク先の記事参照。

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通商合意後に急落した大豆

通商合意後に急落した大豆
中国の買い付けに不透明感

米中両国政府は1月15日、「第一段階」の通商合意に署名した。昨年10月の合意発表後も署名が行えない状態が続いていたが、トランプ政権下で展開されている米中貿易戦争において、初めて明確な成果を得られた格好になる。既存の関税措置の大部分は残される一方、「第二段階」の通商合意は秋の米大統領選後になるとの見方が強く、実体経済に対するインパクトについては、それほど大きなものにはならない可能性が高い。世界銀行も、下振れリスクを後退させるが、直ちに成長加速を促すことは難しいと報告している。ただ、今回の「第一段階」の合意では、中国側が米国からのモノ・サービスの輸入を2017年の1860億ドルをベースに、向こう2年間で2000億ドル増やすことが合意されているため、農産物など中国の輸入拡大対象リストに掲載されたものは大きな影響を受ける可能性がある。
特に米中貿易戦争の直撃を受けた農家は輸出拡大を強く期待しており、今回の通商合意を受けて農家・酪農家のトランプ米大統領に対する支持率は大統領就任後の最高を更新している。しかしマーケットに目を向けると、シカゴ大豆先物相場は合意文書への署名が行われる直前の1Bu=935~950セント水準に対して、910セント台(1月23日移転)まで大きく値位置を切り下げる展開になっている。

背景にあるのは、中国が実際に米国産農産物の購入に踏み切るのか、依然として不透明感が残されていることだ。マーケットでは、通商合意と同時に中国が大規模な輸入再開に踏み切るとの期待感が広がっていたが、実際には合意署名から一週間が経過しても、大口の輸出成約は一切報告されていない。中国の劉副首相は、農産物の購入は市場原理に基づいて行われることを強調しており、合意への署名が行われたものの、無条件で輸入拡大を進める意図を有していないことを明らかにしている。

そもそも大豆に関しては、中国は米中貿易戦争の激化で国内での増産を進め、海外からの輸入を抑制するための対応を進めている。しかも、海外からの輸入もブラジルやアルゼンチンなど南米産の調達を増やすことで、米国産大豆がなくても需給環境を安定化させるための仕組みを作り上げている。更に、近年はアフリカ豚コレラの影響で豚の飼育頭数が減少している結果、大豆を圧搾して得られる飼料・大豆ミールの需要も落ち込んでいる。このため、マーケットではそもそも中国は米国産大豆の輸入拡大を必要としていないのではないかとの疑念が広がっている。

現状では、中国が米国産大豆の調達を増やすのか増やさないのかは不明だが、マーケットでは改めて大豆相場を押し上げるためには、中国の買い付けを確認することが必要との見方が強い。900セント台を大きく割り込むような必要性は乏しいが、このまま上値の重い展開を続けるのか、安値修正局面に移行するのか、中国次第のマーケット環境が続く。
(2020/01/23執筆)
【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)中部経済新聞2020年01月27日「私の相場観」

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収穫期に豪雪被害か、米国産トウモロコシに不作の脅威

トウモロコシ価格が約2ヵ月ぶりの高値を付けている。北半球では春先に作付けされたトウモロコシが収穫期を迎えている。しかし、世界最大のトウモロコシ生産国である米国において、気象環境が不安定化していることで、予想されていた収量を確保できなくなる可能性が浮上しているためだ。

指標となるCBOTトウモロコシ先物価格は、10月8日の取引で1Bu=396.50セントと400セント台乗せを窺う展開になっているが、これは直近安値を付けた9月9日の352.25セントから12.6%の値上がりになる。

米農務省(USDA)によると、10月6日時点の収穫進捗率は15%となっており、まだ未収穫のトウモロコシが大量に農地に残された状態にある。しかし、9月下旬には記録的な豪雨で収穫作業が進まなかったことに加えて、今週は穀倉地帯北部からカナダにかけて記録的な豪雪が観測されるとの予報が出ていることで、品質や収量に対して更に大きな被害が生じる可能性が浮上している。

10月入りしてからの寒波の影響で、前週時点でもノースダコタ州で今季初の降雪が観測されるなど、気象環境は不安定化していた。しかし、今週は冬型の嵐が穀倉地帯を直撃する見通しであり、最大で60センチ程度の降雪が観測される可能性も指摘されている。

実際にどの程度の生産障害が発生するのかは不確実だが、トウモロコシ相場は受粉期を終え、天候要因での不確実性を抱えたいわゆる「天候相場」は終ったとの評価に傾いていただけに、季節外れの豪雪予報がトウモロコシの供給不安を高めている。

今季は春先にも豪雨が観測されたことで作付け作業に遅れが生じ、例年と比較して厳しい作柄環境に置かれている。しかも、その影響で収穫作業が終わる時期も例年より遅れることになるが、それだけに例年よりも早く降霜や降雪といった冬型の気象環境になると、生産高見通しの下方修正を迫られ易くなっている。その意味では、春の作付け環境悪化の余波がまだ続いているとの評価も可能だろう。

10日にはUSDAの月例需給報告(WASDE)が発表されるが、9月1日時点の四半期在庫が既に大幅に下方修正されているだけに、今回は新穀、旧穀ともに在庫見通しの大幅な下方修正が確実な情勢にある。しかも、新穀のイールド予想が楽観的に過ぎたのではないかとの議論も浮上しているタイミングで、新たな天候リスクを抱えていることに対する警戒感は強い。需給バランスは適度にひっ迫化する見通しとあって、トウモロコシ価格は上昇し易い環境にあったが、今週の雪嵐(snow storm)の被害状況によっては、一段と堅調な値動きが続き易くなる。

国内では、安倍首相が米国産トウモロコシの購入について「米国と合意していない」と発言したことが話題になっているが、そもそも米国において輸出用のトウモロコシが大量に余る事態は回避される可能性も浮上しているのが現状である。トランプ政権は、貿易相手国に対する輸入拡大要請に加えて、バイオ燃料政策の見直しなどトウモロコシの需要喚起に動いているが、不作によって大量の在庫を抱える事態が回避されるシナリオが現実味を増している。

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プロフィール
小菅 努(こすげ つとむ)

1976年千葉県松戸市生まれ。筑波大学卒。商品先物・FX会社の営業本部、ニューヨーク事務所、調査部門責任者等を経て、現在はマーケットエッジ(株)代表取締役。商品アナリスト・東京商品取引所認定(貴金属、石油、ゴム、農産物)。貴金属、金属、エネルギー、ゴム、農産物などの商品先物市場全般が主なカバー対象です。商社、事業法人、金融機関向けに分析レポートを配信しています。為替、株価指数などもカバーしています。

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