小菅努の商品アナリスト日記

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天候不順で農産物全面高

天候不順で農産物全面高
ラニーニャ現象の余波続く

気象庁は10月9日に公表した最新の「エルニーニョ監視速報」において、「夏からラニーニャ現象が発生しているとみられる」、「今後冬にかけて、ラニーニャ現象が続く可能性が高い(90%)」との報告を行っている。ラニーニャ現象とは、南米沖の海面温度が基準値よりも低い状態になると発生する異常気象であり、グローバルな天候不順を引き起こす傾向が強い。今年は、中国南部で大規模な洪水被害が発生し、日本でも豪雨や洪水被害が多発しているが、いずれもラニーニャ現象の影響が指摘されている。

ラニーニャ現象が発生すると日本では冬の間に厳しい寒波が観測され易いが、東南アジアでは海水温度が高めに推移するため、積乱雲の発生から台風や豪雨被害が発生し易い。実際に今年は東南アジア全域で洪水被害が報告されており、天然ゴムやパーム油の供給不安が高まっている。2011年にはタイで自動車工場が大規模な洪水被害に見舞われたが、農地や道路の冠水被害が報告されると、供給不安から急伸地合が形成される可能性が高まる。中国でも洪水や台風の影響で農産物の収穫量が減少しており、米国産などの調達量を増やしている。

一方、南米のブラジルやアルゼンチンでは乾燥懸念が強くなっている。現在、南米はトウモロコシや大豆の作付け期になるが、最高気温が40度近くに達する一方で、週間降水量がゼロの地域も多く、作付け作業の遅れが警戒されている。作付けが失敗に終わるリスクから、降雨による土壌水分の改善が待たれているが、このままホット・アンド・ドライ(高温乾燥)傾向が続くと、不作のみならず作付け放棄のリスクも浮上することになる。ロシアやカザフスタン、フランスなどでも熱波が報告されている。2020年度産が収穫期目前に大きなダメージを受け、更には冬小麦の作付けに対する影響も警戒されている。米国でもメキシコ湾でハリケーンが頻発し、今年は原油や天然ガス、綿花生産などが大きなリスクに晒された。

農産物価格が歴史的な高騰相場を形成するパターンを振り返ると、概ねエルニーニョ現象発生後のラニーニャ現象発生となっている。二つの異常気象が連続して発生すると、高い確率で農産物供給全体に大きな混乱が生じ、異常ともいえる高騰相場が形成されることになる。近年では2010/11年度、06/07年度、1997/98年度などがそのパターンだが、今回のラニーニャ現象もエルニーニョ現象の終息後に発生している。

まだラニーニャ現象は夏場に発生したばかりとみられるが、これが長期化して来年の作付け期にまで持ち越されるような事態になると、深刻な供給懸念が農産物相場を強く刺激しよう。特にコロナ禍で労働力や輸送、輸出などサプライチェーンは大きなリスクを抱えているだけに、そこに天候リスクが加わることに対する警戒感は強い。ラニーニャ現象が一時的なものに留まるか否かに注目したい。

(2020/10/14執筆)
【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)中部経済新聞2020年10月19日「私の相場観」

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ラニーニャ現象で穀物相場が高騰、世界的不作の恐怖

シカゴ穀物相場が高騰している。CBOTトウモロコシ先物相場は8月の1Bu=320セントをボトムに、10月15日の取引では404.25セントまで急伸している。約2か月で26.3%の上昇率であり、昨年8月以来となる1年2カ月ぶりの高値を更新している。小麦は5年ぶり、大豆は2年7カ月ぶりの高値を更新しており、コロナ禍の中で穀物相場は全面高とも言える展開になっている。

背景にあるのは、ラニーニャ現象が発生していることだ。日本の気象庁によると、今年は夏からラニーニャ現象が発生しており、90%の確率で冬にかけて続くとの見通しが示されている。ラニーニャ現象とは、日付変更線付近から南米沿岸にかけて海面水温が平年より低い状態が続く現象である。海面水温が平年よりも高い状態が続くエルニーニョ現象と並び、世界的な異常気象の要因になり得ると考えられている。

今年は、このラニーニャ現象が世界の穀物生産に大きな混乱をもたらしている。例えば中国では豪雨・洪水・台風被害が頻発しており、収穫期を迎えたトウモロコシが大きなダメージを受けたと報告されている。中国政府は備蓄放出など混乱の終息を働きかけているが、中国国内相場が急騰しているため、中国がこれから世界各地でトウモロコシの調達量を増やすのではないかとの警戒感が広がっている。

また、南半球の南米ではトウモロコシや大豆の作付けシーズンを迎えているが、最高気温が40度近くに達する一方、降雨が殆ど観測されていないため、作付け作業の遅れが警戒されている。このままホット・アンド・ドライ(高温乾燥)状態が続くと、不作のリスクが高まるとみられている。

ロシアやウクライナ、フランス、米国などでは冬小麦の作付け期を迎えているが、乾燥状態が警戒されている。各国政府が生産高見通しの引き下げを断続的に行っており、予想されていた収量が得られなくなるとの警戒感は強い。

本来だと、現在は北半球で春先に作付けされた穀物の収穫期であり、ハーベスト・プレッシャー(収穫期の売り圧力)が穀物相場の値下がりを促し易い時期になる。農家が在庫を売却することで、需給が緩み易い時期になる。しかし、今年はラニーニャ現象の発生が供給不安を著しく高めていることが、収穫期の穀物相場高騰を促している。

過去にもラニーニャ現象は不作による穀物相場の高騰を数年起きに引き起こしているが、ラニーニャ現象が長期化・深刻化すると、穀物価格が更に高騰するリスクが高まることになる。特に今年はコロナ禍の影響で穀物サプライチェーンが大きなリスクを抱えているだけに、価格を安定させることが難しくなっている。


【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

※図表はリンク先の記事参照。

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ドイツでアフリカ豚熱が確認されると、シカゴのトウモロコシ相場が急伸した

欧州で発生したアフリカ豚熱(ASF)が、シカゴのトウモロコシ先物相場を約5カ月ぶりの高値圏まで押し上げている。

ドイツは欧州で最大の豚肉生産国であるが、9月10日にブランデンブルク州のポーランド国境付近でイノシシの死骸からアフリカ豚熱の感染が確認されたと当局が発表している。夏に入ってからポーランドで感染被害の広がりが報告されていたが、ドイツでも既に感染が広がっている可能性が指摘されている。

ドイツは中国向けの主要な豚肉供給国であるが、アフリカ豚熱が発見された以上、中国はドイツ産豚肉の輸入制限に踏み切らざるを得ない状況になっている。日本も9月11日、ドイツからの生きた豚、豚肉等の輸入を一時停止する措置を講じている。どの程度の期間にわたるのかは不透明だが、豚肉の国際流通に大きな影響が生じかねない動きになる。

しかも、今季は中国国内の豚肉供給が不足していることで、同国では国内の増産・輸入を急いている最悪のタイミングに、ドイツ産豚肉の供給にトラブルが発生した格好になる。豚肉価格の高騰は中国国内で社会問題化しており、当面はドイツ産以外の調達量を増やさざるを得ない状況になる。こうした中、米中通商合意の履行のために米国産品の輸入を増やす必要がある政治的要請もあり、マーケットでは米国産豚肉に対する需要が急増するのではないかとの観測が浮上している。

9月10日にCMEの赤身豚肉先物相場は、前日比で5.0%の急伸地合になっている。中国向け需要の急増を先取りする動きを見せた訳だ。こうして豚肉価格が急伸すれば、当然に畜産業者の増産意欲は強まることになる。米国内で豚の畜頭数が増えれば、必然的に飼料需要も増えることになる。また、仮に中国が国内で豚肉の増産体制を一段と強化すれば、飼料そのものを一段と多く輸入する可能性も浮上することになる。

このため、CMEトウモロコシ先物市場では国内飼料用の需要、もしくは輸出需要の拡大期待を織り込む動きが優勢になった。もともと、最近の熱波の影響で作柄悪化リスクを織り込む形で底固い展開になっていたが、飼料需要急増の思惑から、約5カ月ぶりの高値を更新している。

「欧州でアフリカ豚熱が発生したこと」と「シカゴトウモロコシ相場が急伸したこと」は一見すると無関係だが、中国の旺盛な豚肉需要をどのように消化するかという視点が介されたことで、この二つの現象がリンクされている。
【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

※図表はリンク先の記事参照。

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急増が予想されるコーン在庫

急増が予想されるコーン在庫
28年ぶりの需給緩和状態か

米農務省(USDA)は、2020/21年度の米国産トウモロコシ期末在庫が、前年度の20.98億Buから33.18億Buまで急増するとの見通しを示した。在庫率は、前年度の15.2%から22.4%まで急伸する見通しになるが、これは1992/93年度以来の需給緩和状態が想定されていることを意味する。

米中貿易摩擦の影響を受けづらく、価格が比較的安定していることで、農家の作付け意欲が著しく高まるとみられている。作付面積は、前年度の8970万エーカーから9700万エーカーまで8.1%の急増見通しであり、トレンドイールドが実現すると、生産高は前年度の136.63億Buから159.95億Buまで急増する見通しになる。

米中通商合意、新型コロナウイルスの需要ショックの一巡などを受けて、総需要は前年度の138.30億Buから148.00億Buまでの増加見通しだが、大規模な不作が発生しない限りは、トウモロコシ需給に対する緩和圧力は一段と強まる可能性が高い情勢になっている。

では、今季の生産環境はどのような状態にあるかと言えば、豊作を期待させる状況になっている。この時期は作付け進捗率が注目されるが、5月10日時点では67%と、前年同期の28%、平年の56%を上回っている。散発的な寒波も報告されているが、全体としては適温・適雨が観測されており、トレンドイールドを大きく下回るようなリスクは限定される。

USDAは、20/21年度の農場平均価格を1Bu=320セントと、前年度の360セントから更に下落するとの見通しを示している。在庫積み増し圧力を阻止するのは難しい状況が、相場を圧迫し続ける見通し。

足元では、新型コロナウイルスの感染被害が一服し、経済活動の再開が模索されている。ガソリン需要が回復すれば、ガソリンに添加されるエタノール需要も回復する。また、トランプ米大統領が食肉加工工場の操業継続を命じたことで、飼料用需要の落ち込みに対する警戒感も後退している。農家が安値での売り渋り傾向を強めていることもあり、300セントの節目を大きく割り込むようなリスクは限定されている。

しかし、19/20年度の期末在庫見通しも2カ月連続で上方修正中であり、3月時点の18.92億Buが、4月には20.92億Bu,5月には20.98億Buまで、一気に引き上げられている。
また、新型コロナウイルスの責任論、米中通商合意の履行状況を巡って、米中間の対立が激化している。トランプ米大統領は、対中制裁関税の可能性も示唆しており、仮に米国と中国との間の穀物取引が大きなダメージを受ける事態になると、穀物相場全体に急落圧力が発生するリスクは残されている。
(2020/05/14執筆)
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有事の小麦買い? 小麦先物価格が3日で10%上昇

小麦の国際価格が、突然に急伸し始めた。シカゴ小麦先物価格(中心限月)は、3月16日に1Bu(ブッシェル、1Bu=27.215kg)=492.00セントと昨年10月11日以来の安値を更新していたが、19日の取引では一時541.00セントまで、僅か3日で最大10.0%の急伸地合になっている。

今年は潤沢な国際供給環境、また株価や原油価格急落による投資環境の悪化もあり、小麦価格はほぼ一貫して値下りしていた。原油価格急落の影響でエタノール需要減少の思惑からトウモロコシ価格が急落したこともあり、小麦価格も値下り傾向が目立っていた。しかし、今週に入ってから突然に安値修正の動きが強まり、主要なマーケット価格が軒並み急落する中で、小麦価格は際立って異常な値動きをみせている。

その背景として指摘されているのが、新型コロナウイルスの感染被害拡大を受けて、消費者が小麦を原料とする食料品を買いだめしている影響だ。新型コロナウイルスの感染被害の中心が中国から欧米に移動する中、欧米諸国は入国規制の強化と同時に、国内でも外出規制の動きを強め始めている。例えば米ニューヨーク州では3月15日にレストラン、バー、カフェなどの18:00以降の営業禁止が決められ、外食産業が壊滅的被害を受けている。

こうした中、消費者は食料品や日用品などの買いだめを進める動きを強めている。欧米では、その買いだめ行動の対象にパスタやパンがあり、短期的に原料である小麦の需要が急増するとの観測が広がっているのだ。

供給には問題がないと各国政府や食品各社が発表しているが、店頭での需要が短期的に急増する中、品薄感が更に需要を押し上げる状況になっている。正確な統計はないが、パスタ売上高が突然に100%増えたといった報告も目立つ。日本で、数週間前にみられて漸く終息に向かっているトイレットペーパーの買いだめに近い現象が観測されている。

コモディティ市場では、「有事の金買い」という言葉があるが、足元の金価格は投資家のキャッシュを求める動きから急落している。穀物や農産物市場にとっても、基本的には経済環境の不安定化はネガティブ材料と評価される傾向が強い。しかし、現在は「有事の小麦買い」とも言える異常な現象が観測されている。過去にはあまり見たことのない値動きであり、新型コロナウイルスの感染被害がコモディティ市場に与える影響の特殊性が、よく窺える状況になっている。

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プロフィール
小菅 努(こすげ つとむ)

1976年千葉県松戸市生まれ。筑波大学卒。商品先物・FX会社の営業本部、ニューヨーク事務所、調査部門責任者等を経て、現在はマーケットエッジ(株)代表取締役。商品アナリスト・東京商品取引所認定(貴金属、石油、ゴム、農産物)。貴金属、金属、エネルギー、ゴム、農産物などの商品先物市場全般が主なカバー対象です。商社、事業法人、金融機関向けに分析レポートを配信しています。為替、株価指数などもカバーしています。

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