小菅努の商品アナリスト日記

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rubber

天然ゴム価格が2年8カ月ぶりの高値更新、コロナ禍でも価格急騰の理由

タイヤなどの原料になる天然ゴム価格が急伸している。大阪取引所の天然ゴム先物相場(RSS)は、10月初めの1㎏=183.10円に対して21日の時間外取引では210円台に乗せ、2018年2月以来の高値を更新している。

新型コロナウイルスの影響で自動車生産・販売が一時停止した4月には138.30円まで値下りしていた相場だが、コロナ禍が深刻化し始める前の200~210円水準を完全に上抜く展開になっている。

背景にあるのは、「需要環境の正常化」と「生産障害」が同時進行していることだ。需要と供給の双方から需給が引き締まっていることが、価格高騰を促している。

新型コロナウイルスは当初、感染被害防止の観点から各国で自動車やタイヤ工場に対して稼働停止を迫った。新車販売が事実上ストップしたこともあり、天然ゴムに対する需要は大きく落ち込んだ。しかし、その後は新車用タイヤ、買い替え用タイヤ需要共に急速に回復し、特に最大市場である中国では安定的に前年同期の水準を上回る需要環境が実現している。

一方、供給サイドではラニーニャ現象の影響が大きい。ラニーニャ現象は東南アジアで豪雨、洪水、台風などの異常気象をもたらしており、その影響で天然ゴムの集荷量も落ち込んでいる。本来だと雨期となるこの時期は天然ゴムの増産期であり、来年の乾季に訪れる減産期に備えて在庫積み増しを進めていく時期になる。しかし、今年は大阪取引所の生ゴム指定倉庫在庫は前年同期のほぼ半分の水準まで落ち込んでおり、十分な在庫手当てを行えないままに増産期が終わりに近づいていることが警戒されている。今年は同じくラニーニャ現象の影響で、トウモロコシ、小麦、大豆などの穀物相場が急伸している影響もあろう(参考:ラニーニャ現象で穀物相場が高騰、世界的不作の恐怖)。

しかも、主産地タイでは首都バンコクを中心に反政府デモが展開されており、政治的混乱も供給リスクとして警戒されている。また、インドネシアやマレーシアでは新型コロナウイルスの新規感染者数が増加しているため、天然ゴム農園で通常の農作業ができるのかも不透明感が強くなっている。

8月には天然ゴム相場が急伸した局面で、農家などが手元在庫の売却を加速させたことで、9月にかけては上げ一服感が広がっていた。しかし、再び集荷量が落ち込む一方で、再度の値上がりでも集荷量が増えない状態になる中、天然ゴム需給のひっ迫化に対する警戒感が一段と強くなっている。

2018年後半以降、天然ゴム相場は210円水準で上値を抑えられる展開が繰り返されているが、ここを上抜くようなエネルギーがあると、更に大相場に発展する可能性も浮上することになりそうだ。

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

※図表はリンク先の記事参照。

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高止まりする天然ゴム相場

高止まりする天然ゴム相場
コロナ禍の影響残る生産

天然ゴム価格が高止まりしている。JPX天然ゴムRSS先物相場は、8月31日の1kg=205.50円で上げ一服となっているが、その後も180円水準ではサポートされる展開になっている。納会値でみると、6月限の135.10円が9月限では217.90円まで値上がりしており、2019年7月限以来の高値を更新している。コロナ禍がゴム需要に大きなダメージを受ける前の値位置を完全に上回っており、ゴム相場の実勢が7月以降に急激に改善していることが確認できる。

今年は2~3月に中国、4~5月に欧米でコロナ禍が深刻化した。新車、タイヤ販売の落ち込みに留まらず、自動車やタイヤ工場の稼働停止が、ゴム需要に対して壊滅的な被害をもたらした。しかし、その後はロックダウン(都市封鎖)などの強力な行動規制は導入されておらず、各国で環境に大きな違いがあるものの、ゴム需要環境は改善傾向にある。欧米のタイヤ販売市場はまだコロナ禍前の水準を回復していないが、中国に関しては逆に前年比で若干のプラス推移になっているとみられる。消費者マインドの改善もあるが、それ以上に政府がインフラ投資を拡大している影響が大きく、トラックなど商用車向けのタイヤ需要が急増している。

足元では欧米やインド、ブラジルなどでコロナ禍が再び深刻化しており、9月には世界の死者が100万人を超えたと報告されている。ただ、各国政府はコロナ撲滅のためのロックダウンはあまりに経済コストが大きいと判断しており、コロナ禍の影響で需要環境が悪化することはあっても、再びタイヤ販売がゼロに近づくような状況になるとは考えられていない。緩やかな需要正常化トレンドが維持されるとみられる。

一方、コロナ禍の影響が強く残されているのが、供給環境である。コロナの感染対策でゴム農場、加工工場の操業が十分に行えていない。また、外国人労働者の帰国などで労働力不足の問題も深刻化している。日本でも海外からの農業実習生の受け入れが困難になっていることが供給制約として問題視されているが、東南アジアでもゴムやパーム油など労働集約型の農産物の供給に混乱が生じている。しかも、今年はラニーニャ現象が発生していることで、生産地では雨がちの天候が報告されており、天候要因からも集荷量が伸び悩んでいる。

タイ中央ゴム市場では、RSSが60バーツ水準まで上昇すると、農家の在庫売却などの動きが強まる傾向にある。一方で、50バーツ台前半では集荷量が急激に落ち込む傾向にあり、産地相場の高止まりが消費地相場も支援する。生産量のトレンドも上向きになっているが、需要環境よりも供給環境の方が、コロナ禍からの正常化プロセスに遅れがみられることが、産地需給にタイト感をもたらしている。これは構造的な問題であり、早期解消は難しいだろう。
(2020/09/30執筆)
【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)中部経済新聞2020年10月05日「私の相場観」

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天然ゴム、コロナ禍からの回復遅れる生産

〔アナリストの目〕天然ゴム、コロナ禍からの回復遅れる生産

天然ゴムの産地相場が急伸している。タイ中央ゴム市場におけるRSS現物相場は、コロナ禍による経済活動の低迷が深刻化した4〜5月にかけて1キロ=40バーツ水準まで下落していたが、8月には50バーツの節目を回復し、昨年7月以来の高値を更新している。

需要環境と供給環境のコロナ禍からの回復力における温度差が、産地で需給タイト感を発生させている。コロナ禍は第2波、第3波が世界各地で観測されているとはいえ、世界全体としてはそのショックが消化される局面にある。中国の7月新車販売台数は4カ月連続で前年比プラス、3カ月連続で2桁増になっている。政府のインフラ投資によって、トラックなどの商業車に特需が発生している影響もあるが、タイヤ販売に関しても新車用、買い替え用ともにコロナ禍前の水準を上回っているとみられる。欧米でもタイヤ販売は4〜5月がボトムであり、6月以降は改善傾向にあるとの報告が目立つ。

一方で、供給環境はこうした需要回復に見合ったペースで改善していない。タイでは干ばつ傾向が依然として強い一方、インドネシアやマレーシアではモンスーンによる豪雨が観測された。今後はラニーニャ現象が発生するとの警戒感も強い。前回のラニーニャ現象が発生した2010〜11年には、天然ゴム以外にも、砂糖やコーヒーなどの農産物価格全体が急伸した経験がある。

また、新型コロナウイルスの影響でゴム農地では労働力不足が深刻化している。特に外国人労働者の職場復帰が遅れており、ゴムのみならずパーム油でも農場経営における大きなリスク要因になっている。さらに新型コロナウイルス対策で農場や工場では新たな操業体制の確立を求められているが、供給環境の正常化には大きな後れが目立つ。

決して供給の絶対量が大きく落ち込んでいるわけではなく、供給量トレンドは上向きである。しかし、需要と供給との間で回復ペースには明確な違いが見受けられる結果、産地需給に対して突然にタイト感が浮上した状態になっている。

◇産地主導の上昇地合い維持か

産地相場の上昇トレンドが確立する中、JPX天然ゴム先物相場RSSも、4月2日の1キロ=138円30銭をボトムに、8月には170円台までコアレンジを切り上げている。中国通貨人民元相場の上昇もあって、上海ゴム相場の値動きの鈍さがJPXゴム相場の上値も抑えているが、産地における需給タイト感が解消されるまでは、産地主導の上昇地合いが維持されよう。決してゴム相場の高騰が要求されるような需要環境にはないが、コロナ禍からの回復プロセスにおける供給環境の相対的な脆弱(ぜいじゃく)性が、ゴム相場を押し上げやすい状況にしている。 
(2020/08/25執筆)
【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)時事通信社J-COM「アナリストの目」(2020年08月25日)

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中国洪水で高騰するパーム油

中国洪水で高騰するパーム油
天然ゴムも期近に上昇圧力

 7月は九州地方で豪雨・洪水被害が観測されたが、中国や東南アジアでも豪雨が観測されている。中国の長江流域では豪雨が止まらず、河川水位の上昇から各地で洪水被害が報告されている。下流域には南京市や合肥市といった大都市が位置しているため、上流域で意図的に堤防を決壊させて、中国全体としての被害を最小限に抑えるための試みも行われている。東南アジアでも、これまでは干ばつ状態が強く警戒されていたが、マレーシアやインドネシアでは豪雨による農作業への影響が報告され始めている。

 今回の中国から東南アジアにかけての洪水被害に対して特に強く反応しているのがパーム油相場だ。本来であれば生産量が最も伸びる時期に向かう局面だが、豪雨の影響で収穫作業に影響が生じており、集荷に遅れが報告されている。しかも、新型コロナウイルスの影響で外国人労働者の入国規制が解除されていないため、パーム油農園では労働力不足が深刻化している。マレーシアでは業界団体が政府に対して対応を求めているが、今後数か月のイールドが最大で25%減少するといった試算も出始めている。MPOCパーム油先物相場は、5月6日の1トン=1939リンギットで底入れし、その後は新型コロナウイルスの収穫による需要環境の改善と歩調を合わせて、2400リンギット水準まで反発して、上げ一服となっていた。しかし、中国と東南アジアで豪雨・洪水被害が発生すると、一気に2600リンギット台まで急伸し、約5カ月ぶりの高値を更新している。バイオディーゼルや食用油価格の上昇が直ちに国内での植物油価格高騰を促す訳ではないが、供給サイドの混乱が目立ち始めていることには注意が求められる。

 これと同じ論理で、天然ゴム価格に対しても押し上げ圧力が発生している。JPXゴム先物相場は、期先限月だと1kg=150円台後半をコアに方向性を欠く展開が続いている。需要が最悪期を脱したとの見方がある一方、依然として新型コロナウイルスの感染被害が拡大し続ける中、上値追いには慎重姿勢が目立つ。

 しかし、期近限月では産地主導の上昇圧力が観測されており、当限は7月上旬の140円台前半に対して、150円台中盤まで値上がりしている。これは約4カ月ぶりの高値更新になる。当先の順サヤ(期近安・期先高)が急速に縮小しており、新型コロナウイルスがもたらした需給緩和圧力が、需要環境の回復と供給不安の同時進行によって、解消に向かっていることが確認できる。

 新型コロナウイルスの感染被害は依然として猛威を奮っているため、需要動向によっては改めて下押し圧力が強まる可能性は残されている。一方で、このまま需要回復に波があっても正常化に向かう一方、天候不順や労働力不足による供給不安が維持されると、ゴム相場も当限に続いて期先限月に対して買い圧力が強まる可能性が高まる。逆サヤへの転換で、現物市場主導の上昇が本格化する可能性も想定しておきたい。
(2020/07/22執筆)
【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)中部経済新聞2020年07月27日「私の相場観」

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緩やかな上昇続く天然ゴム

緩やかな上昇続く天然ゴム
生産環境に混乱残る

 東京天然ゴム先物相場は、4月2日の1kg=138.30円をボトムに、6月入りしてからは150円台中盤から後半まで値上がりする展開になっている。新型コロナウイルスによる需要ショックが想定以上に早く解消に向かう中、安値修正の動きが優勢になっている。

 新型コロナウイルスは、天然ゴムの主要消費先であるタイヤ需要環境にも壊滅的な被害をもたらした。外出規制の影響で新車販売が落ち込むのみならず、自動車工場の稼働も停止したことで、タイヤ工場も操業停止や縮小を迫られた。しかし、中国では2月、欧米では4月が自動車市場のボトムだった可能性が高く、その後は需要環境の改善傾向が、ゴム相場を支援している。

 最大市場である中国では、2月の新車販売が前年同期比で79.1%減少したが、4月には早くも4.4%増とプラスに転じ、5月は更に販売が伸びた模様だ。地方政府が補助金や商品券の交付といった販売奨励策を導入したこと、自動車取得制限を緩和したことなどで、マーケットの想定を大きく上回るペースで販売環境が正常化している。米国でも、4月の新車販売台数はほぼ半減したが、5月には概ね8割水準を回復する動きを見せている。

 5~6月にかけては欧米でも自動車工場の稼働が再開しているが、新車用と買い替え用タイヤの販売はともに改善傾向を見せている。厳しい雇用や所得環境から、タイヤ販売環境が早期に正常化できるのかは疑問視する向きも多い。しかし、少なくとも最悪の状態を脱したとの安堵感はある。

 しかも、今季は供給サイドも大きなリスクを抱えている。例年であれば、乾季の4月が減産期のピークであり、5月以降は雨季への移行に伴い段階的に生産量が拡大し、年末に向けて増産シーズンに向かう。しかし、今季のタイ中央ゴム市場の集荷量は、4月と5月とでほとんど変化がみられず、減産期明けが明らかな遅れを見せている。

 産地気象環境には特段の問題が見られないが、新型コロナウイルスの影響で農業部門も大きなダメージを受けており、供給障害が発生している。特にゴムなどのきつい農作業を求められる業種では外国人の出稼ぎ労働者への依存度が高いが、新型コロナウイルスの影響で入国や就労ビザなどの点でトラブルが発生しており、6月入りした後も供給環境の改善が遅れている。

 このまま新型コロナウイルスの第2波がみられなければ、6月には需要環境が更に改善を見せるのはほぼ確実である。その際に供給環境の改善が見られないと、ゴム相場は上昇ペースが加速する可能性もある。4~5月にかけて膠着状態が続いていた産地相場も、6月入りと前後して上昇傾向を強めている。
(2020/06/04執筆)
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プロフィール
小菅 努(こすげ つとむ)

1976年千葉県松戸市生まれ。筑波大学卒。商品先物・FX会社の営業本部、ニューヨーク事務所、調査部門責任者等を経て、現在はマーケットエッジ(株)代表取締役。商品アナリスト・東京商品取引所認定(貴金属、石油、ゴム、農産物)。貴金属、金属、エネルギー、ゴム、農産物などの商品先物市場全般が主なカバー対象です。商社、事業法人、金融機関向けに分析レポートを配信しています。為替、株価指数などもカバーしています。

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