小菅努の商品アナリスト日記

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18年の天然ゴム相場、戻り売り対応に優位性

◎〔アナリストの目〕18年の天然ゴム相場、戻り売り対応に優位性=小菅努氏

2018年の天然ゴム先物相場は、おおむね昨年の緩やかなダウントレンドを踏襲する展開だった。1〜11月期の東京ゴムRSSの年間平均価格は1キロ当たり179円53銭で、昨年1年間の227円19銭を21.0%下回っている。年間の高値が216円30銭(1月)、安値が11月の151円20銭。1年を通じて戻り売り対応に優位性が認められる相場環境だった。

マクロな視点では、11年2月の535円70銭をピークとしたゴム相場の高騰局面が、作付面積の急増を促した余波が続いていると評価できる。その当時に作付けされたゴムの樹木が7年前後の生育期間を経てようやくタッピング可能な時期を迎えており、強力な増産プレッシャーがゴム相場の上値を圧迫している。1990年代中盤のゴム相場高騰が、2000年代前半にかけて相場を下押ししたのと同様の現象が発生している。こうした増産傾向は今後数年にわたって続く見通しであり、何らかの政策対応が講じられない限り、ゴム相場は低迷が続きやすい状態にある。

タイ農業当局は、ゴムの農地面積を30%削減する必要性を訴えているが、為替市場では、経常収支、財政収支環境の悪い国の通貨に対して投機売りが膨らみやすい環境にあり、大規模な政策対応が打ち出されることはなかった。東南アジアの国々は、いずれもゴム市況対策に踏み出す財政的な余裕を有しておらず、ゴム相場の低迷状態が放置されている。パーム油、サトウキビ、トウモロコシといった他農産物価格も低迷しているため、現実問題としてゴム生産を止めた際に転作の受け皿となる魅力的な農産物も見当たらなかった。

このタイミングで訪れたのが、最大消費国である中国経済の減速だ。中国はマクロ経済構造の改革中であり、投資から内需主導の経済体質への移行期にあって、景気減速が当局から黙認されている。しかも、米中貿易戦争の勃発によって非鉄金属など他の産業用素材市況も大きく値下がりし、ゴム相場は需要サイドの要因からも上値を圧迫されることになった。

新車市場に限定しても、18年は中国市場で前年実績割れの可能性が高まっている。インド市場も、ノンバンクの信用危機で自動車ローン市場が機能せず、年後半に急速な減速圧力にさらされている。消費環境が良好な米市場がある程度の底固さを見せていることを除くと、世界的に横ばいから漸減傾向が目立ち、強力な増産圧力を吸収するような需要環境は用意できていない。

余剰在庫も解消できず、上海期貨交易所の認証在庫などはむしろ上振れしている。長期ダウントレンドを形成しながらも、需給緩和状態を是正するエネルギーが十分に働いていないことがうかがえる。

◇19年は130〜140円に水準切り下げ
19年も潤沢な供給量が確保される状況に変化が生じる可能性は低い。一方、需要サイドは世界経済の減速から厳しい状態が続く見通し。年間平均価格は18年並みから若干の下振れを想定しておく必要がある。年前半は減産期とあって下げづらいが、その間に政策による供給調整、農家の生産放棄、需要環境の劇的改善などが見られなければ、今年と同様に下期は上値の重い展開が再現されるだろう。コスト論の視点から本格的な値崩れは要求されないが、16年にサポートされた150円水準を下抜くと、支持線は130〜140円近辺まで切り下がると予想する。

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(2018/12/02執筆)
(出所)時事通信社「アナリストの目」2018/12/04

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TOCOMにTSR上場、日本が発信する天然ゴムの国際指標

TOCOMにTSR上場、日本が発信する天然ゴムの国際指標

東京商品取引所(TOCOM)は10月9日、「TSR」を新規上場した。TSRと言われても一般の人(多くの投資家にとっても)には分かりづらいが、自動車タイヤなどに使用される天然ゴムの区分の一つになる。現在、TOCOMのゴム市場にはRSS(Ribbed Smoked Sheet)が上場されているが、これに加えてTSR(Technically Specified Rubber)も上場することで、ラテックスなどを除いた国内に流通する天然ゴムのほぼ全てをカバーできる体制を整えることになる。

RSSとTSRはともに用途としては自動車タイヤが8~9割を占めているが、RSSが「視覚的格付けゴム」、TSRが「技術的格付けゴム」とも言われるように、グレードの格付け手法に違いがある。天然ゴムは、ゴムの樹液から作られるためにどうしても品質にばらつきが生じるが、RSSは国際品質包装規格に準拠した視覚検査によって格付けを行う。一方、TSRは技術的に標準規格が定められており、客観的な技術検査によって格付けを行う。

両者には格付け手法の他に製造過程にも違いがあるが、基本的にはユーザーにとって必ずRSSでなければならない、または、TSRでなければならないといったものではない。しかし、国内メーカーは伝統的にタイ産RSSを志向していたため、日本の商品先物市場において天然ゴム先物と言えば、それはRSSとほぼ同義だった。しかし、近年は国内メーカーのTSRシフトの動きが強くなっており、「国内に流通する天然ゴム」と「TOCOMに上場する天然ゴム」との間に微妙なギャップが発生していた。

具体的な数値でみてみると、2000年時点で国内に流通する天然ゴムはRSSが53%、TSRが31%となっていたが、2017年時点だとRSSが19%、TSRが79%となっており、ほぼ8割がTSRになっている。このため、市場関係者からはTSR上場の必要性を訴える声が強くなっていたが、ついに上場が実現して取引が開始されたのが10月9日である。

■日本が発信する天然ゴムの指標価格
世界には幾つかの天然ゴム先物市場が存在しており、有名なのだと中国・上海期貨交易所(SHFE)とシンガポール取引所(SGX)がある。中国は出来高としては最大のゴム市場になるが、グローバルに解放された市場ではないため、極めて投機色が強いマーケットになっている。一方、SGXはRSSとTSRを既に同時上場しているが、特にRSSの出来高が少なく、指標価格としては疑問の声も強い。

一方、TOCOMの天然ゴム先物は1952年の東京ゴム取引所から続く伝統もあって、国際指標として高い評価を受けている。コモディティ(商品)価格は一般的にニューヨークかロンドン市場に国際指標が存在するが、天然ゴムは日本が国際指標を提示している数少ないマーケットの一つになる。世界のゴム取引はここで形成される価格を指標にしていると言っても過言ではない。こうした中で、TOCOMがRSSに加えてTSRも上場することは、リアルタイムにRSSとTSRの国際指標価格が世界に発信されることを意味する。

世界に向けて指標価格を提示すると同時に、実需や投資家の市場参加を促すことで、RSSとTSRの大きなゴム市場を作り出すことができるか、TOCOMゴム市場の大きな挑戦が始まっている。
【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)TOCOMにTSR上場、日本が発信する天然ゴムの国際指標(Yahoo!ニュース)

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TOCOMにTSRが上場する

TOCOMにTSRが上場する
国内ゴム需給の実勢に合わせる

東京商品取引所(TOCOM)は10月9日、ゴム先物市場にTSR(技術的格付けゴム)を追加上場する。TOCOMでは既にRSS(視覚的格付けゴム)が上場されているが、今後はRSSとTSRの二本立てで国内に流通する天然ゴムのほぼ全量を先物市場がカバーする態勢を整えることになる。

RSSとTSRは品質面で特別に大きな差異を有している訳ではなく、実際に両者をあまり厳格に区別していないユーザーもある。ただ、格付けと生産工程に違いがあり、両者は別の品目として独自の価格形成を行っている。TOCOMのRSS市場は既に国際指標としてグローバルに注目されているが、そこにTSRも追加上場することで、新たな指標価格の提示、ヘッジ・投機の場を提供することになる。
日本では、伝統的にタイ産の天然ゴムが好まれており、このためにゴム輸入もその大半がRSSになっていた。タイでは小規模農家がゴムを生産しているため、大規模な製造工場が必要なTSRよりも、小規模な家族経営でも生産が容易なRSSが志向されているためだ。自動車タイヤには、RSSの方が品質的に好ましいといったユーザー側の評価も影響していた模様だ。

しかし、近年は大規模プランテーションで生産され、価格や安定供給で優位性があるインドネシア産の輸入量が急増しており、昨年の場合だと日本の天然ゴム輸入の67%がインドネシア産、30%がタイ産になっている。そしてこのインドネシアではRSSは殆ど生産されずにTSR生産が大部分を占めているため、必然的に日本に輸入される天然ゴムは、RSSからTSRへと比重がシフトしていた。2000年時点だとRSSが53%、TSRが31%だったのに対して、昨年はRSSが19%、TSRが79%となっており、もはやRSSの市場規模は2割を切った状態にある。こうした中、TOCOMに上場されているゴム先物がRSSだけとなっていることは、国内需給との乖離を生じており、TSRも追加上場されることになっている。

近年、TOCOMでは流動性の欠如が一部商品で深刻化しており、それは天然ゴム市場も例外ではない。このため、ゴム市場をRSSとTSRの二本立てにすることは、流動性の分散によってゴム市場の衰退を招くリスクを抱えている。一方、世界的にみてもRSSよりTSRは取引量が多く、TSRを追加上場して指標価格として育てていくことができれば、国内外の生産者、需要家、投資家などの参入、取引量の拡大を促すことで、ゴム市場全体の活性化を促すことも可能になる。一般的に、新規商品の上場が成功するか否かは、上場直後に一定野取引量を確保できるか否かのスタートダッシュの成否によって決まることが多い。TOCOMは様々な市場振興策を導入して商品先物取引業者にも活発な取引を呼び掛けているが、10月のTSR市場の成否に注目したい。
(2018/10/03執筆)

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)中部経済新聞2018年10月8日「私の相場観」

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天然ゴム、市況対策見送りで安値低迷続く

〔アナリストの目〕天然ゴム、市況対策見送りで安値低迷続く=小菅努氏 

東京ゴムは1キロ=170円水準で、ボックス気味の展開となっている。産地相場の値下がり傾向が続く中、当ぎりは明確なダウントレンドを形成しており、約2年3カ月ぶりに150円の節目を割り込んでいる。しかし、期先は上海ゴム相場の下げ渋りで値崩れに抵抗を示し、上値が重いものの明確なトレンドを形成するには至っていない。当先スプレッドは20円近くに拡大しており、限月間のバランスが大きくゆがんでいる。

産地相場は明確なダウントレンドを形成している。増産期の季節要因から需給緩和圧力が強まり、それが相場を下押しする教科書的な値動きとなっている。タイ中央ゴム市場の未薫製シート(USS)現物相場は、生産コスト割れが警戒される30バーツ台突入さえ警戒される状況にある。しかし、生産国政府の市況対策が望めない状況になっていることが、産地相場の下げをエスカレートさせている。

40バーツ割れ目前の現状は、過去を振り返ってみても、本来であれば価格防衛の議論が活発化してしかるべき状況と言える。ただ、トルコリラを起点とした新興国通貨安が東南アジア通貨にも本格波及する中、東南アジア諸国の政策優先度は「ゴム農家を支援するためのゴム市況対策」よりも「通貨防衛のための財政健全化」になっており、巨額の予算計上が要求される直接的な市場介入は見送られ続けている。

既に、タイ政府は市場介入見送りの方針を公式に確認しており、少なくとも国際協調の枠組みを使った大規模な市況は見送られ続ける可能性が高い。

また、ゴム生産国の現地通貨安は、他国通貨建てゴムの割安感を強めることで、ゴム相場の値下がり要因にもなる。ブラジル通貨レアル安を受けての砂糖やコーヒー相場の急落がシンボリックだが、東南アジアでも例えばマレーシアリンギット建てのパーム油相場が年初来安値を更新する動きをみせている。

ゴム相場は例年10〜12月期に下げ渋る傾向があり、特に12月と翌年1月は上昇リスクが高まる月になる。このため、現行価格水準から一気に値崩れを起こす必要性は乏しい。しかし、季節要因に基づく需給緩和圧力が続き、それを是正する政策調整が見込めない中、下値は150円水準まで見ておく必要があり、リバウンドしても180円水準が上値めどだろう。下振れリスクを残した安値ボックス気味の展開が基本になる。

◇10月9日にTSR追加上場

なお、東京商品取引所(TOCOM)は10月9日にTSRを追加上場し、今後のゴム市場はRSSとTSRの二本立てになる。日本のゴム輸入は伝統的にタイ産RSSに強く依存していたが、インドネシア産TSRへのシフトが進んでいることに対応するものである(ただし、RSS同様にTSRも標準品はタイ産)。

昨年の通関実績によると、日本の生ゴム輸入の78.7%がTSRになっており、RSSは18.9%にとどまっている。TSRはシンガポール市場などにも上場しているが、新たな指標価格とヘッジ、投機の場をTOCOMでも提供できるかが問われることになる。

流動性の分散化に終わってゴム市場全体が縮小するのか、それとも流動性向上に加えて新たな投資対象、裁定機会の提供が可能になるのか、今回のTSR上場は投資家目線でも重要なイベントになる。
【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(2018/09/25執筆)
(出所)時事通信社「アナリストの目」2018/09/26

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低迷が続く天然ゴム相場

低迷が続く天然ゴム相場
対策に動き出した生産国


東京ゴム先物相場は、5月22日の1kg=202円10銭をピークに、7月は170円水準まで値位置を切り下げる展開になっている。減産期入りに伴う需給タイト化圧力がピークを脱する中、季節トレンドに沿う形で値下り圧力が発生している。米中貿易戦争化で資源価格全体に下押し圧力が発生していることもネガティブ材料視されている。上海ゴム相場についても、5月の1トン=1万2000元台に対して、足元では辛うじて1万円の節目水準でサポートされる値動きに留まっている。

天然ゴム生産国連合会(ANRPC)によると、1~5月期の国際需給は57万トンの供給不足であり、季節トレンドを素直に反映した需給タイト化圧力が確認されている。しかし、5月下旬以降の集荷量は明確な増加トレンドにある。6月末から7月初めにかけては、タイ南部のヤラー県でイスラム過激派がゴム農園を狙った爆破テロを仕掛けたが、供給環境に大きな混乱が生じることはなかった。タイ中央ゴム市場のRSSの集荷量をみても、足元では概ね減産期入り前の水準を回復しており、これに伴い5月22日には1kg=52.99バーツを記録した現物相場も、40バーツ台中盤まで軟化している。
この時期はサイクロンなどの異常気象による供給障害に注意が求められるが、このまま安定した集荷量が維持できれば、産地主導の下押し圧力が強まることになる。マクロ需給環境からはゴム相場が本格的なリバウンドを試す必要性は乏しい。

一方で、40バーツ台はコスト割れが警戒される値位置であり、ここ数カ月は沈黙を保っていた生産国政府が漸く動きを見せ始めていることには注意が求められる。7月16日にはタイで副首相と農業協同組合省幹部が協議を行い、補助金交付によるゴム農園の面積削減を検討していることが明らかにされた。1800万~2000万ライ(1ライ=1600平方メートル)のゴム作付面積に対して、年間20万ライのペースで今後5年にわたって面積削減を進めることが検討されている。

過去を振り返ってみると、この種の強制力を伴わない市況対策について、十分な効果は認められない。従来だとパーム油への作替えの動きが目立ったが、足元ではそのパーム油の供給過剰問題が深刻化しており、ゴム生産を容易に中止することはできない。このため、直ちにゴム相場が底入れする必要性は乏しく、なお下値不安が残されよう。

ただ、生産国が市況対策の必要性を認識し始めていることは間違いなく、今後はより強力な施策が打ち出されれば、ゴム相場の値下り傾向にブレーキが掛かる可能性はある。例えば、輸出総量規制などは少なくとも数カ月スパンでゴム相場を押し上げることが多い。これまでの「需給緩和→ゴム相場下落」の流れに対して、「ゴム相場下落→市況対策」の流れが発生し始めている。徐々にダウントレンドから安値保ち合い相場への移行が打診されよう。
(2018/07/18執筆)

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)中部経済新聞2018年7月23日「私の相場観」

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プロフィール
小菅 努(こすげ つとむ)

1976年千葉県松戸市生まれ。筑波大学卒。商品先物・FX会社の営業本部、ニューヨーク事務所、調査部門責任者等を経て、現在はマーケットエッジ(株)代表取締役。商品アナリスト・東京商品取引所認定(貴金属、石油、ゴム、農産物)。貴金属、金属、エネルギー、ゴム、農産物などの商品先物市場全般が主なカバー対象です。商社、事業法人、金融機関向けに分析レポートを配信しています。仮想通貨、為替、株価指数などもカバーしています。

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