小菅努の商品アナリスト日記

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oil

米国が世界最大の産油国となる日

米エネルギー情報局(EIA)によると、7月13日時点の米産油量は前週の日量1,090万バレルから1,100万バレルまで増加しました。米石油史上、1,100万バレル台乗せは初めてのことです。ロシアの産油量が日量1,120万バレル程度のため、いよいよ米国が世界最大の産油国となるカウントダウンが始まった格好です。

【米産油量】
chart (3)



















(出所)EIA

無題



















2008年の世界同時金融危機後の産油量をみてみると、2008年9月26日の384万バレルがボトムになります。その後を見てみると、09年1月16日に505万バレル、12年3月20日に605万バレルと、下の図のように増加しています。13~14年代は、100万バレルの増産を行うために40~50週の時間が要求されましたが、1,000万バレルから1,100万バレルまでは僅か21週でした。週に約5万バレルの増産です。

無題












ロシアが減産解除中ですが、仮にロシアの産油量が一定であれば今後1~2カ月で米国とロシアの産油量が逆転します。ロシアの増産を考慮に入れても、3ヵ月以内に逆転現象が見られそうです。世界最大の石油消費国と産油国を兼任する時代が近づいています。

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ゴールドマンが高ボラティリティの原油価格を予測する意味

シェール革命以降、原油相場は低ボラティリティの時代を迎えたと言われていました。供給不足が発生してもシェールオイルが短い生産サイクルを生かしてカバーできるため、従来型の急騰相場はもはや必要ないという訳です。

しかし、どうもその状況が変わってきたのではないかというのが、米金融大手ゴールドマン・サックスの分析になります。同社は在庫水準が抑制される一方で需要が堅調に推移する中、供給障害の発生や米政策の不確実性が、ファンダメンタルズを不安定化差せていることに注意を喚起しています。


更なる供給障害や、リビア産原油に対する制裁状況によっては需給がタイト化する一方、大きな障害がなくサウジアラビアなどの増産が進めば、逆に供給過剰になる可能性もあるという訳です。

基本的には在庫が抑制される中で供給不安を抱えるため、ブレント原油価格ベースで1バレル=70~80ドルと強気姿勢は維持されています。ただ特に供給環境が読みづらくなる中、高めのボラティリティが想定されています。

絶対に深刻な供給不足は発生しないとの信頼感が、崩れ始めていることは、従来型の原油価格環境に回帰する兆候と言えるのかもしれません。

【CBOE Crude Oil Volatility Index】
無題











(出所)Reuters

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戦略石油備蓄放出の狙いは心理効果

トランプ米大統領が石油輸出国機構(OPEC)に対して増産要請を行っても思うような回答が得られない中、戦略石油備蓄(SPR)放出を巡る議論が浮上しています。公式な発表ではありませんが、7月入りしてから各種メディアが複数の関係者の発言として、SPR放出が検討されていると報じています。


SPRは元々は中東からの供給障害に対応するためのものであり、国際エネルギー機関(IEA)は加盟国対して輸入量の90日分以上の在庫を備蓄することを義務付けています。米国の場合だと6億6,000万バレルが備蓄されています。ただ、最近だと中東情勢への対応というよりも、ハリケーンなどの突発的な供給障害発生時に、需給の混乱を回避するために放出される傾向にあります。

このSPRですが、あくまでも有事対応とあって需給に対する劇的な影響が想定されている訳ではありません。もともと、米国内で原油在庫が不足している訳ではなく、仮に数百万バレルのSPRが放出されたとしても、原油価格には何ら影響が生じない可能性もあります。トランプ政権が期待しているのはガソリン価格の値下りですが、このSPRは原油の形で供給されるため、ガソリン需給緩和のためにはガソリン増産というもう一つの作業ステージが求められます。ただ、心理的なインパクトは間違いなく存在するため、カードの一つとして検討されている模様です。

価格抑制目的のSPR放出は法的に認められませんが、イランやベネズエラなどの供給障害を理由にすれば、不可能ではありません。もともと、トランプ政権はシェール革命でSPRの重要性は低下しているとして試験売却を進めているため、この機会にSPRの規模削減と原油価格鎮静化の「一石二鳥」を狙う可能性もありそうです。

ちなみに、SPRで備蓄されている原油の平均価格は29.70ドル/バレルです。財政的にも売却収入は魅力的です。また、大統領の決定から13日後に市場に供給されます。最大で日量440万バレルの供給能力があります。

【米戦略石油備蓄】
chart (2)



















(出所)EIA

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トランプ大統領の原油高批判

トランプ大統領の原油高批判
増産は簡単だができない理由

6月22日の石油輸出国機構(OPEC)総会をきっかけに、原油高が再開されている。OPECや過剰減産解消の形で事実上の増産対応に踏み切ったが、年後半の需給タイト化圧力を阻止するには不十分との見方が広がっているためだ。加えて、米政府が各国にイラン産原油取引の停止を要請する一方、カナダでは停電によるオイルサンドの生産停滞、リビアでは港湾における武装勢力の活動、ノルウェーでは労使トラブルなどで、短期供給障害の発生が状況を深刻化させている。特にカナダのアルバータ州で生産されるオイルサンドは、パイプラインを通じて米国向けに輸出されており、WTI原油先物の受け渡し場所であるオクラホマ州の在庫減少圧力に直結すると、必要以上の値上がりを促しかねない。

実際にWTI原油先物は期先物に対して期近物が急伸する急激な逆サヤを形成しており、短期需給ひっ迫懸念が原油価格を押し上げていることが明確に確認できる。カナダの生産障害は7月いっぱい続く見通しが示されており、ドライブシーズン中の供給不足は短期スパンで異常な高値形成を促す可能性がある。過熱感は間違いなく強いが、80ドル水準にトライする可能性も想定しておく必要があろう。

一方、こうした原油高に対してトランプ米大統領の動きが活発化している。自らの対イラン、ベネズエラ政策が原油価格の高騰を招いているとの批判が強まる中、OPECに対して増産要請を強めている。トランプ大統領としては、米国が中東産油国をイランの脅威から守る中、OPECは増産で協力して原油高を阻止すべきとの認識がある模様だ。7月4日には今年に入ってからツイッターで4度目となる原油(ガソリン)高批判を行い、「今すぐ引き下げろ!」と従来にない強いトーンで増産対応を迫っている。

トランプ大統領は日量200万バレルといった具体的な数値もあげて増産要請を行っている。しかし、OPECサイドとしてはこうした要請に安易に応えることはできない。確かに、サウジアラビアは200万バレル規模の生産余力を有しており、大規模増産を行うことは不可能ではない。実際に6月にはOPEC総会で減産遵守率引き下げを合意したことを受けて、70万バレル規模の増産に踏み切った可能性が指摘されている。

しかし、200万バレルの増産はサウジアラビアの生産余力がなくなることを意味し、原油市場は逆に不安定化しかねない。今後はイランやベネズエラ産原油の供給が一段と落ち込む可能性が高い一方、リビアやナイジェリアなどでも突発的な供給障害が発生し易く、将来の供給障害への対応力をゼロにすることに対しては強い警戒感がある。マーケットでも、ここでサウジアラビアが大規模増産に踏み切れば、逆に原油価格は高騰するとの見方も強い。トランプ大統領の原油高批判は激しさを増しているが、必要なことは無理な増産ではなく、生産能力を拡充して供給不安に備えることである。しかし、過去数年の原油相場低迷は投資不足を深刻化させており、今はその代償を支払っている時間帯となる。(2018/07/11執筆)

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)中部経済新聞2018年7月16日「私の相場観」

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IEAも生産能力欠如を警告、投資不足のツケを払う時

国際エネルギー機関(IEA)は7月12日に公表した7月月報において、生産余力の限界を指摘しました。
Some of these supply issues are likely to be resolved, but the large number of disruptions reminds us of the pressure on global oil supply. This will become an even bigger issue as rising production from Middle East Gulf countries and Russia, welcome though it is, comes at the expense of the world's spare capacity cushion, which might be stretched to the limit. 
供給障害が発生する中で中東産油国やロシアが増産を行っていることを歓迎するとする一方、こうした増産は生産余力を犠牲にしたものであるとして、既に生産余力が「限界まで伸びきった(might be stretched to the limit)」可能性が指摘されています。

供給不足のリスクがあるのであれば増産すれば良いのは当然ですが、増産のためには投資を行って生産能力を向上していくことが求められます。もっと言えば、現在の生産水準を維持するためだけでも、自然減を相殺するだけの投資が必要です。しかし、2014年の原油相場急落以降、産油国は必ずしも積極的な投資を行っておらず、それは2017年、今年に入っても大きな変化は見られません。さすがに投資規模はプラスに転換していますが、十分な投資を行ってこなかったツケを払う時を迎えているようです。

イランやリビア、ベネズエラなどの生産トラブルがなければ、それでも直ちに生産能力不足が問題視されることはなかったはずですが、現実には大小様々な供給障害が発生し続けており、IEAはこうした状況が続くとしています。原油価格高騰でも新たな供給は確認できず、目先の問題解決策としては短期供給が可能なタイトオイルの増産を促すこと位しかなさそうです。当限だけの急伸ではなく、期中から期先ゾーンの値上がりが求められます。

【上流部門の投資金額】
upstream














(出所)IEA

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プロフィール
小菅 努(こすげ つとむ)

1976年千葉県松戸市生まれ。筑波大学卒。商品先物・FX会社の営業本部、ニューヨーク事務所、調査部門責任者等を経て、現在はマーケットエッジ(株)代表取締役。商品アナリスト・東京商品取引所認定(貴金属、石油、ゴム、農産物)。貴金属、金属、エネルギー、ゴム、農産物などの商品先物市場全般が主なカバー対象です。商社、事業法人、金融機関向けに分析レポートを配信しています。仮想通貨、為替、株価指数などもカバーしています。

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