小菅努の商品アナリスト日記

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原油売りに脅しかけるサウジ

原油売りに脅しかけるサウジ
リビア出荷再開で需給緩む

サウジアラビアのアブドルアジズ・エネルギー相は、原油市場で空売りを行っているトレーダーに対して、「地獄のような痛手」を負うことになるだろうと警告した。原油需要の先行き不透明感から価格水準が切り下がる中、石油輸出国機構(OPEC)プラスによる需給安定化の試みの失敗を予測するような動きを強くけん制した格好になる。

NY原油先物相場は、9月に入ってから1バレル=40ドルの節目を割り込む場面が増えている。北半球でドライブシーズンが終了して需要の端境期に入っている季節要因に加えて、コロナ禍の脅威が再び高まっていることで、需要見通しの不確実性が増していることが警戒されているためだ。例年、9~10月にかけてはガソリン需要が低迷し、製油所のメンテナンスシーズン入りによって原油需給は緩む傾向にある。今年は特に、航空機の飛行距離が抑止されていることに加えて、リモートワークやビデオ会議の普及が進んでいるため、輸送用エネルギー需要の低迷が強く警戒されている。

しかも石油メジャーBPは、原油需要の拡大サイクルが既に終了した可能性も指摘している。新型コロナウイルスによって人々の行動様式が大きく変わったことに加えて、環境規制強化の動きが加速する中、再生可能燃料シフトが従来想定されていたよりも早いペースで進展するとの見通しを示している。マーケットでは、石油需要のピークが2030年ころに訪れるとの漠然としたコンセンサスがあるが、仮にコロナ禍が終息しても原油需要が従来のような拡大基調に回帰できないリスクが、原油相場の地合悪化を促している。

ただ、OPECプラスとしては改めて原油需給が緩み、価格低迷が再開されることは許容できるものではない。8月には需要回復傾向を受けて協調減産の規模を日量970万バレルから770万バレルまで縮小したばかりだが、サウジアラビアは原油安が更に進むようであれば、10月にも改めて追加減産を行う可能性を示唆している。追加減産カードを誇示することによって、原油の空売りをやめるように圧力を掛けている。

しかし、これは追加減産の検討を開始しなければならない程に、原油需給見通しの緩和リスクが高まっていることを意味する動きである。OPECプラスとしては、年末を以て減産規模を更に縮小することで、生産体制の正常化を進めることを計画している。しかし、仮に改めて減産規模の拡大を迫られる状況になると、半永久的に協調減産から抜け出せなくなる可能性も浮上する。

しかも、北アフリカのリビアでは東西勢力の停戦合意が実現し、原油輸出が再開され始めている。リビアは内戦によって原油輸出がほぼ停止していたが、このまま停戦合意が守られると、早期に日量100万バレル規模の追加供給が行われる可能性もある。これは協調減産合意の影響を受けないため、リビアの生産動向によってはOPECプラスが直ちに追加減産の協議を迫られる可能性もありそうだ。
(2020/09/23執筆)
【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)中部経済新聞2020年09月28日「私の相場観」

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需要不安を織り込む原油相場

需要不安を織り込む原油相場
原油需要拡大のピーク論も

 NY原油先物相場は、1バレル=40ドルの節目を割り込む展開になっている。4月以降は、コロナ禍からの経済活動の正常化を先取りする動きが優勢になり、緩やかなペースで価格水準を切り上げていた。新型コロナウイルスは第2波、第3波といった動きも各国で報告されているが、トレンドとしてみれば各国は感染対策を継続しながら経済活動を再開する方向性にあり、需要環境も正常化に向かうとの期待感が、素直に原油相場を押し上げる展開が続いていた。しかし、9月入りと前後して需要環境の評価が急激に悪化し、6月中旬以来の安値を更新する展開になっている。

 背景の一つは、季節要因である。北半球は夏季休暇のドライブシーズンが終了し、需要の端境期に突入している。製油所は冬の暖房用エネルギーの増産を前に定期修理に突入することになり、9~10月は季節要因から需給が緩み易い時間帯になる。こうしたトレンドは毎年みられるものだが、今季はコロナ禍の影響で需要の絶対水準が低いだけに、需要端境期の需給の緩みが例年以上に深刻化するのではないかとの危機感が強い。

 もう一つは、需要回復ペースの鈍さである。マーケットでは、経済活動が再開され正常化に向かえば、輸送用エネルギー需要も正常化に向かうとの楽観的な見方が優勢だった。しかし実際には、経済活動を再開しているとは言え、テレワークやビデオ会議など移動を伴わない業務形態が広がりを見せている。また、新型コロナウイルスの感染リスクに対する警戒感、各国の入国規制の影響もあって、航空業界は依然として深刻なダメージを受けている。このため、航空機用のジェット燃料需要の回復が遅れており、中間留分需給全体に緩みが目立つ状況にある。

 英石油メジャーBPは、世界の原油需要が既にピークを過ぎた可能性を指摘している。コロナ禍による経済環境の悪化、更には行動様式の変化を受けて、原油需要がコロナ禍以前の水準には永久に戻らない可能性を指摘している。各国の環境政策や技術開発動向によっては、再生可能エネルギーへの転換が急速に進み、原油需要は18年の日量9980万バレルから30年には9250万バレル、50年には3060万バレルまで更に落ち込む可能性もあるとしている。

 現時点では原油需要のピークが19年だったとの見方は、一般的とは言えない。新型コロナイルスのワクチンが開発され、経済活動が正常化に向かえば、21年にも需要環境は急激に改善するとの見方も強い。ただ、足元では想定されていた需要回復が見られないのも事実であり、国際エネルギー機関(IEA)や石油輸出国機構(OPEC)も需要見通しの下方修正を迫られている。石油会社・商社が、供給のだぶつきに備えて備蓄用の大型タンカーを傭船するような動きも報告されている。冬の需要期が始まるまでは、30ドル台中盤から後半で上値の重い展開が続き易い。
(2020/09/16執筆)
【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)中部経済新聞2020年09月21日「私の相場観」

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「北浜投資塾」原油相場の見方を解説

大阪取引所の「北浜投資塾」で、原油相場の見方を解説しました。
約10分の動画が全7本になります。


※下の画像をクリックすると「北浜投資塾」の該当ページに飛びます。

無題






















産金株の隆盛、石油株の衰退

産金株の隆盛、石油株の衰退
資源株のトレンドが変わる

著名投資家ウォーレン・バフェット氏の率いるバークシャー・ハサウェイは、今年4~6月期に米銀行株を大量に売却する一方、産金大手バリック・ゴールドの株式2090万株、約600億円相当を購入していたことが明らかになった。

バフェット氏は、マーケットでは金嫌いで知られている人物の一人であり、従来から金には「有用性はない」として、利益を生み出す優良企業に対して、できるだけ多くの金額を長期にわたって投じる必要性を訴え続けていた。こうした中、金価格の動向に強い影響を受ける産金株に対する本格投資に踏み切ったことが注目を集めている。

今回投資したのは金上場投資信託(ETF)ではないため、金に対する直接投資を行っている訳ではない。あくまでも産金事業でバリック・ゴールドが収益を上げることを想定しての投資行動になる。しかし、米経済成長の最も大きな恩恵を受ける業種の一つである銀行株を大量売却して、その資金を産金株に投じたことで、マーケットではバフェット氏が新型コロナウイルスによる米経済の長期停滞、低金利環境を想定し、産金事業がある程度の長期にわたって高い成長率を持続する厳しい状況を想定しているのではないかとの見方が広がっている。バフェット氏は、金に対する従来の否定的な見解を変えたのか明らかにしていないが、今後の発言によっては新たな「援軍」、「応援団」を得た状態になるのかもしれない。

一方、アメリカの代表的な株価指数であるダウ工業平均株価を算出するS&Pダウ・ジョーンズ・インディシーズは、ダウ工業平均株価から石油大手エクソン・モービルを除外すると発表した。ダウ工業平均株価は僅か30銘柄で米株式市場全体の動向を反映できるように構成されているが、現在の30銘柄では最も古い1928年から採用されてきたエクソン・モービルが、8月31日付けでダウ工業平均株価から除外されることになる。

現在のダウ工業平均株価では、エクソン・モービルの他にシェブロンが組み込まれており、石油会社は30銘柄中の2銘柄を占める状態が長期にわたって続いていたが、ついに1銘柄の時代に移行することになる。

脱化石燃料の動きに加えて、ESG投資に象徴される環境に配慮した企業投資を求めるブームもあり、石油株は投資家から敬遠される傾向が強くなっている。エクソン・モービルは「石油の世紀」を象徴する銘柄の一つだったが、もはや主要30銘柄の地位を維持できなくなっている。

しかも、事実上はエクソン・モービルの代替でダウ工業平均株価に新たなに正用されることになったのが、ソフト大手セールスフォース・ドットコムである。クライドによる顧客管理システムなどを主力にしており、米経済の軸足が「石油」から「データ」に移行していることを象徴する動きの一つと言えるかもしれない。
(2020/08/26執筆)
【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)中部経済新聞2020年08月3日「私の相場観」

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株高・ドル安・在庫減少でも上がらない原油価格の謎


原油価格が膠着化している。NY原油先物相場は1バレル=40ドル台前半で小動きに終始している。6月8日に40ドルの節目を回復しているが、その後は約3か月で43ドル水準まで値上がりするのに精一杯の状況にある。その間に、世界的な株高・ドル安が進行したことを考慮すれば、コロナ禍以前の50~60ドル水準を回復する展開を支持する余地もあったが、実際の6月以降は底固いものの値動きの鈍さが目立つ状況が続いている。

コロナ禍の世界経済に対するショックが後退する中、原油需要環境も改善傾向にある。一部の国で新型コロナウイルスの感染第2波が観測されているが、4~5月にみられたような都市封鎖(ロックダウン)に象徴される強力な行動規制の再開は、日本を含む各国が見送っている。当然にロックダウンはコロナ禍終息に大きな効果が認められるが、4~6月期の経済活動の急速な落ち込みを受けて、各国政府はもはやロックダウン再開を有力な選択肢にはできない状況に陥っている。石油輸出国機構(OPEC)の推計では、世界石油需要は4~6月期の日量8,184万バレルが7~9月期には9,210万バレル、10~12月期には9,583万バレルまで回復する見通しになっている。

経済活動がコロナ禍以前の状態を早期に回復するのは困難としても、回復基調を維持できるのであれば、国際原油需給は緩和状態のピークを脱し、正常化に向かうプロセスが原油価格を押し上げるのは当然とも言える。実際に、米原油在庫は7月中旬から5週連続で減少中であり、過剰在庫の削減は着実に進んでいる。5月17日の5億3,660万バレルが、8月21日には5億0,780万バレルとなっている。

また、原油相場と同様に景気動向に強い影響を受ける株式相場は、米国のS&P500とNASDAQ総合指数が早くも過去最高値を更新している。石油輸出国機構(OPEC)プラスも、需給リバランスは可能との判断から8月1日以降は協調減産の規模を日量970万バレルから770万バレルまで大幅に削減している。産油国は、有事対応としての減産について、規模を縮小する出口戦略への着手が可能と考えている訳だ。

それにもかかわらず原油相場が伸び悩んでいるのは、今後の需要環境に対してあまりに多くの不確実性があるためだ。秋から冬にかけて改めてコロナ禍が深刻化すれば、石油需要は容易に大きく下振れする可能性がある。仮にロックダウン再開といった事態になると、4月と同様に再び原油価格がゼロになる事態までも想定しておく必要がある。

実際に、6月下旬以降に米国で新型コロナウイルスの感染被害が広がりを見せ始めると、米国の末端石油需要の回復はほぼ止まっている。米製油所の原油処理量は、前年同期の水準を15.5%下回っている。ガソリン需要も7.5%下回っている。OPECプラスの内部報告書でも、今年の世界石油需要について前年比で日量910万バレル減を基本にしつつも、コロナ禍の動向次第で1,120万バレル減までマイナス幅が拡大し、過剰在庫の減少が進まない可能性も想定していることが明らかになっている。

しかも、米国では夏のドライブシーズンが終わり、今後は需要の端境期に向かうことになる。製油所はメンテナンスシーズンに突入し、コロナ禍の影響を考慮に入れなくても秋にかけて需要が停滞し易い時期に向かうことになる。秋冬のコロナ禍に対する警戒感が杞憂に終わるのであれば、原油相場は世界的な在庫取り崩しの動きと連動して緩やかな上昇地合が支持される。しかし、コロナ禍が深刻化した場合には、これまでの需給リバランスの取組が全て破綻し、改めて過剰在庫が原油相場を大きく下押しするリスクを抱えた状態にある。

全てはコロナ禍が年末時点、そして来年にどのような展開を見せているのかに依存するが、先読みが困難な状況が、過剰在庫の削減が進み、株高・ドル安が進む環境下にあっても、原油相場の膠着化を支持している。
【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

※図表はリンク先の記事参照。

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プロフィール
小菅 努(こすげ つとむ)

1976年千葉県松戸市生まれ。筑波大学卒。商品先物・FX会社の営業本部、ニューヨーク事務所、調査部門責任者等を経て、現在はマーケットエッジ(株)代表取締役。商品アナリスト・東京商品取引所認定(貴金属、石油、ゴム、農産物)。貴金属、金属、エネルギー、ゴム、農産物などの商品先物市場全般が主なカバー対象です。商社、事業法人、金融機関向けに分析レポートを配信しています。為替、株価指数などもカバーしています。

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