小菅努の商品アナリスト日記

金、プラチナ、原油、天然ゴム、穀物、農産物などのコモディティ市場をメインに、為替、株価指数などもカバーしています。

金融機関、商社、事業法人、ベンダー様向けにマーケット分析情報の配信業務を行っています。コモディティ市場のレポート配信サービス(法人向け)、寄稿・講演のご依頼などは、下記E-Mailまでお問合せ下さい。

マーケットエッジ株式会社 https://www.marketedge.co.jp/
E-mail  kosuge.tsutomu@outlook.com

gold/silver

ベネズエラ中銀から金が流出している意味

 政治的な混乱が続く南米のベネズエラで、中央銀行の金庫から金8トンが秘密裡に運び出されたと報じられている。「米国による経済制裁に苦しむ中、外貨調達に向けて国外に売却するとみられている」(ロイター)とされている。

 公式な確認が取れていないために真偽は不明だが、今年に入ってから中央銀行の金が運びだされているとの報道は、1月と2月に続いて3回目のことであり、ベネズエラにおいて金を巡る動きが活発化しているのは間違いなさそうだ。

 ベネズエラでは1月、グアイド国会議長が暫定大統領への就任を宣言し、マドゥロ大統領と対立する政治的混乱が続いている。米政府は、グアイド暫定大統領への支持を表明しており、マドゥロ政権の資金源を断つためにベネズエラの主要産業である石油産業への経済制裁を強めている。決定打となっているのは、国営石油会社PDVSAを狙い撃ちとした制裁であり、米国は原則としてベネズエラ産原油の輸入を禁止し、収入源を失ったベネズエラ経済は危機的状況に陥っている。現在は、第三国企業に対してもベネズエラ産原油取引への制裁が検討されている。

 こうして外貨獲得手段が失われて手元流動性(=資産を貨幣に変える可能性)の確保が難しくなる中、マドゥロ政権が目を付けているものの一つが、中央銀行の保有する金という訳だ。ボルトン米大統領補佐官は、1月に金15トンが中東のUAEの買い手に売却されたと報じられると、「ベネズエラ国民から盗んだ金や石油、他の商品を取引すべきではない」として、ベネズエラからの金流出を強くけん制した。しかし、その後も年初から合計30トンの金が中央銀行から運び出されていると推計されており、既に海外でユーロやドルなどのハードカレンシーに交換されている可能性が高まっている。まだベネズエラ国内だけでも中央銀行の金は100トン程度残されているとみられているが、このまま外貨準備が失われ続けると、全ての金がベネズエラ国外に流出する可能性もある。

■独裁者でも金なら流動性を確保できる

 以上の一連の動きは、金が安全資産と言われる理由を明確に物語っている。世界から独裁者と批判されるマドゥロ大統領の視点では、現在は米国や欧州諸国などの制裁によって流動性を確保できない危機的状態に陥っている。仮に株式や債券などを保有していても、マドゥロ大統領と取引してくれる相手方を見つけ出すのは極めて難しい情勢になっている。

 一方で、金であれば例えばマドゥロ大統領でも流動性を確保できる可能性があるのだ。金は他の金融資産と異なり発行体が存在せず、信用ではなく現物に価値の裏付けがあるため、売買の匿名性を確保することが可能である。

 しかも、比重が高いためにその価値と比較して容量が小さく運搬コストが低く、かつ、小さく分割、溶解しても価値に変化は生じない。品質・純度・重さなどから世界のどこでも容易に本物か偽物かの判断を下すことも可能であり、資産価値の目減りを気にせずに容易に売却することが可能な特殊性を有した資産になる。極端なことを言えば、マドゥロ大統領がベネズエラ中央銀行から持ち出した金が日本に運ばれて宝飾品などに加工されても、誰も分からないのである。

 だからこそ、経済・金融危機が発生するたびに金が注目され、いつでも流動性を確保できるという意味で安全通貨や安全資産と言われている。政治経済危機が発生したベネズエラで中央銀行が静かに保管し続けてきた金が突然に注目を集めていることは、金が安全資産であることの象徴的な出来事と言えよう。独裁者にとって持つべき資産は金であり、普通の市民にとっても経済・金融危機に備えて金を保有する意味があろう。2008年の世界同時金融危機のようにリスク資産が総売り状態の時でさえ、金は買い手を見つけ出すのに困ることはなく、危機が発生した時にこそ、金は安全資産として輝きを増すことになる。

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)ベネズエラ中銀から金が流出している意味(Yahoo!ニュース)

******************************************

マーケットエッジ(株)では、コモディティ市場と金融市場のレポート配信の他、講演のご依頼も承っています。まずはご相談下さい。

【お問合せ先】
マーケットエッジ株式会社 https://www.marketedge.co.jp/
E-mail  kosuge.tsutomu@outlook.com 


ベネズエラ中銀が金準備を売却か?


The government source said the central bank’s reserves had fallen by 30 tonnes since the start of the year before U.S. President Donald Trump tightened sanctions, leaving the bank with around 100 tonnes in its vaults, worth more than $4 billion.

At that rate of decline, the central bank’s reserves would nearly disappear by the end of the year, leaving Maduro’s government struggling to pay for imports of basic goods.

出典:Reuters

ベネズエラ中央銀行が金準備8トン、年初からだと30トンを売却したとの政府筋の発言が報告されています。2月にもこれ同様の動きが報告されていましたが、米政府の経済制裁で原油輸出などの外貨獲得手段が乏しくなる中、金準備の売却によって外貨を獲得しようとしている模様です。

米政府はこうした動きに神経を尖らせており、2月にはボルトン大統領補佐官がベネズエラ国民から「盗まれた」金は宝石などの売買に携わらないようにトレーダーに警告していました。その際は、米国からの圧力を受けて、中東の取引会社がベネズエラ中銀の金取引から手を引きました。しかし、金は匿名性の高い資産であり、どうやら売却に成功している模様です。

ベネズエラ経済の崩壊が最終段階に差し掛かっていることが確認できると同時に、金の安全資産性が再確認できるイベントでもあります。ベネズエラでさえ、金を売却すれば外貨の獲得には困らないのです。独裁者であるほどに、持つべき安全資産は金ですね。

Quarterly official gold reserves














(画像出所)WGC

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

******************************************

マーケットエッジ(株)では、コモディティ市場と金融市場のレポート配信の他、講演のご依頼も承っています。まずはご相談下さい。

【お問合せ先】
マーケットエッジ株式会社 https://www.marketedge.co.jp/
E-mail  kosuge.tsutomu@outlook.com 




PBOCは4ヵ月連続で金準備拡大


China’s on a bullion-buying spree. The world’s second-largest economy expanded its gold reserves for the fourth straight month, adding to optimism that central banks globally will continue to build holdings.

The People’s Bank of China raised reserves to 60.62 million ounces in March from 60.26 million a month earlier, according to data on its website. In tonnage terms, last month’s inflow was 11.2 tons, following the addition of 9.95 tons in February, 11.8 tons in January and 9.95 tons in December.

出典:Bloomberg

中国人民銀行(PBOC)の金準備保有高ですが、3月末時点で6,062万オンスと報告されています。前月末から36万オンスの増加であり、トン計算だと1,874.297トンから1,885.494トンまで11.197トンの増加になります。これで中国人民銀行の金購入は昨年12月から4ヵ月連続になり、トレンドとして確立したとみて良いでしょう。

昨年12月の購入再開時点では一時的な動きか否か意見が割れましたが、4ヵ月累計で42.9トン、月平均だと10.7トンの購入は高く評価できます。このペースを維持できれば、年間金需要は120トン前後となり、昨年との比較だと110トンの需給引き締め圧力が発生します。

ここにきて米連邦準備制度理事会(FRB)の独立性を巡る議論も活発化していますが(FRBの独立性の危機、金需要が後押しされる動き)、現在の購入ペースを維持するだけでも金需給インパクトは極めて大きなものになります。昨年に続いて公的部門の金需要が金価格を下支えしそうです。

2018/12 9.95トン増
2019/01 11.80トン増
2019/02 9.95トン増
2019/03 11.20トン増

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

******************************************

マーケットエッジ(株)では、コモディティ市場と金融市場のレポート配信の他、講演のご依頼も承っています。まずはご相談下さい。

【お問合せ先】
マーケットエッジ株式会社 https://www.marketedge.co.jp/
E-mail  kosuge.tsutomu@outlook.com 

記事検索
 
sponsored link
QRコード
QRコード
プロフィール
小菅 努(こすげ つとむ)

1976年千葉県松戸市生まれ。筑波大学卒。商品先物・FX会社の営業本部、ニューヨーク事務所、調査部門責任者等を経て、現在はマーケットエッジ(株)代表取締役。商品アナリスト・東京商品取引所認定(貴金属、石油、ゴム、農産物)。貴金属、金属、エネルギー、ゴム、農産物などの商品先物市場全般が主なカバー対象です。商社、事業法人、金融機関向けに分析レポートを配信しています。為替、株価指数などもカバーしています。

【URL】
マーケットエッジ株式会社

【E-mail】
kosuge.tsutomu@outlook.com

【SNS】
Twitter

【連絡先】
E-mailでお願い致します。相場動向に関する質問への個別対応は行っていませんのでご了承下さい。
小菅努のコモディティ分析
小菅努のコモディティ分析 ~商品アナリストが読み解く「資源時代」

会員制の有料メルマガです。コモディティの基礎知識から専門的な分析まで提供しています。1,944円/月、週2回以上の発行です。

詳細や購読のお申し込み方法は
http://foomii.com/00025
をご覧下さい。
アナリストの視点
Yahoo!ニュース コモディティアナリストの視点

Yahoo!ニュースに不定期で寄稿しています。

過去のレポートはこちら をご覧下さい。
sponsored link
Twitter
amazon.co.jp