高止まりする天然ゴム相場
コロナ禍の影響残る生産

天然ゴム価格が高止まりしている。JPX天然ゴムRSS先物相場は、8月31日の1kg=205.50円で上げ一服となっているが、その後も180円水準ではサポートされる展開になっている。納会値でみると、6月限の135.10円が9月限では217.90円まで値上がりしており、2019年7月限以来の高値を更新している。コロナ禍がゴム需要に大きなダメージを受ける前の値位置を完全に上回っており、ゴム相場の実勢が7月以降に急激に改善していることが確認できる。

今年は2~3月に中国、4~5月に欧米でコロナ禍が深刻化した。新車、タイヤ販売の落ち込みに留まらず、自動車やタイヤ工場の稼働停止が、ゴム需要に対して壊滅的な被害をもたらした。しかし、その後はロックダウン(都市封鎖)などの強力な行動規制は導入されておらず、各国で環境に大きな違いがあるものの、ゴム需要環境は改善傾向にある。欧米のタイヤ販売市場はまだコロナ禍前の水準を回復していないが、中国に関しては逆に前年比で若干のプラス推移になっているとみられる。消費者マインドの改善もあるが、それ以上に政府がインフラ投資を拡大している影響が大きく、トラックなど商用車向けのタイヤ需要が急増している。

足元では欧米やインド、ブラジルなどでコロナ禍が再び深刻化しており、9月には世界の死者が100万人を超えたと報告されている。ただ、各国政府はコロナ撲滅のためのロックダウンはあまりに経済コストが大きいと判断しており、コロナ禍の影響で需要環境が悪化することはあっても、再びタイヤ販売がゼロに近づくような状況になるとは考えられていない。緩やかな需要正常化トレンドが維持されるとみられる。

一方、コロナ禍の影響が強く残されているのが、供給環境である。コロナの感染対策でゴム農場、加工工場の操業が十分に行えていない。また、外国人労働者の帰国などで労働力不足の問題も深刻化している。日本でも海外からの農業実習生の受け入れが困難になっていることが供給制約として問題視されているが、東南アジアでもゴムやパーム油など労働集約型の農産物の供給に混乱が生じている。しかも、今年はラニーニャ現象が発生していることで、生産地では雨がちの天候が報告されており、天候要因からも集荷量が伸び悩んでいる。

タイ中央ゴム市場では、RSSが60バーツ水準まで上昇すると、農家の在庫売却などの動きが強まる傾向にある。一方で、50バーツ台前半では集荷量が急激に落ち込む傾向にあり、産地相場の高止まりが消費地相場も支援する。生産量のトレンドも上向きになっているが、需要環境よりも供給環境の方が、コロナ禍からの正常化プロセスに遅れがみられることが、産地需給にタイト感をもたらしている。これは構造的な問題であり、早期解消は難しいだろう。
(2020/09/30執筆)
【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)中部経済新聞2020年10月05日「私の相場観」

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