需要不安を織り込む原油相場
原油需要拡大のピーク論も

 NY原油先物相場は、1バレル=40ドルの節目を割り込む展開になっている。4月以降は、コロナ禍からの経済活動の正常化を先取りする動きが優勢になり、緩やかなペースで価格水準を切り上げていた。新型コロナウイルスは第2波、第3波といった動きも各国で報告されているが、トレンドとしてみれば各国は感染対策を継続しながら経済活動を再開する方向性にあり、需要環境も正常化に向かうとの期待感が、素直に原油相場を押し上げる展開が続いていた。しかし、9月入りと前後して需要環境の評価が急激に悪化し、6月中旬以来の安値を更新する展開になっている。

 背景の一つは、季節要因である。北半球は夏季休暇のドライブシーズンが終了し、需要の端境期に突入している。製油所は冬の暖房用エネルギーの増産を前に定期修理に突入することになり、9~10月は季節要因から需給が緩み易い時間帯になる。こうしたトレンドは毎年みられるものだが、今季はコロナ禍の影響で需要の絶対水準が低いだけに、需要端境期の需給の緩みが例年以上に深刻化するのではないかとの危機感が強い。

 もう一つは、需要回復ペースの鈍さである。マーケットでは、経済活動が再開され正常化に向かえば、輸送用エネルギー需要も正常化に向かうとの楽観的な見方が優勢だった。しかし実際には、経済活動を再開しているとは言え、テレワークやビデオ会議など移動を伴わない業務形態が広がりを見せている。また、新型コロナウイルスの感染リスクに対する警戒感、各国の入国規制の影響もあって、航空業界は依然として深刻なダメージを受けている。このため、航空機用のジェット燃料需要の回復が遅れており、中間留分需給全体に緩みが目立つ状況にある。

 英石油メジャーBPは、世界の原油需要が既にピークを過ぎた可能性を指摘している。コロナ禍による経済環境の悪化、更には行動様式の変化を受けて、原油需要がコロナ禍以前の水準には永久に戻らない可能性を指摘している。各国の環境政策や技術開発動向によっては、再生可能エネルギーへの転換が急速に進み、原油需要は18年の日量9980万バレルから30年には9250万バレル、50年には3060万バレルまで更に落ち込む可能性もあるとしている。

 現時点では原油需要のピークが19年だったとの見方は、一般的とは言えない。新型コロナイルスのワクチンが開発され、経済活動が正常化に向かえば、21年にも需要環境は急激に改善するとの見方も強い。ただ、足元では想定されていた需要回復が見られないのも事実であり、国際エネルギー機関(IEA)や石油輸出国機構(OPEC)も需要見通しの下方修正を迫られている。石油会社・商社が、供給のだぶつきに備えて備蓄用の大型タンカーを傭船するような動きも報告されている。冬の需要期が始まるまでは、30ドル台中盤から後半で上値の重い展開が続き易い。
(2020/09/16執筆)
【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)中部経済新聞2020年09月21日「私の相場観」

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