金相場の先高感は維持される
FRBの新戦略で上昇確認

 NY金先物相場は、8月7日の1オンス=2089.20ドルで上げ一服となったが、その後も1900~2000ドルの高値圏を維持している。7月下旬から8月上旬にかけては連日のように過去最高値を更新する急伸地合が形成されたが、その反動から持高調整の動きが上値を圧迫している。しかし、1900ドル水準では押し目買いを入れる動きが強く、明確な方向性を打ち出すには至っていない。金上場投資信託(ETF)も急ピッチな資金流入は一服しているが、持ち高を売却するような動きが広がっている訳ではなく、本格的な値崩れは支持されていない。

 金相場の急伸地合に調整が入ったとは言え、金相場を取り巻くマクロ環境は依然として強気である。実質金利はマイナス1%水準を維持しており、無金利・無配当である金保有の機会コストが消滅した状態に変化はみられない。

米連邦準備制度理事会(FRB)は8月27日、一時的にインフレ目標を上回ることを容認する新戦略を発表した。当面はインフレよりも雇用環境に対する対応が優先されることになり、金融緩和策の限界を引き上げることになる。また、インフレ期待の情勢を通じて、実質金利の引き下げ余地を拡大することも意図している模様だ。

 9月15~16日の米連邦公開市場委員会(FOMC)において、新戦略を実現するための追加金融緩和策が発表される可能性は低い。米大統領選を控えていることで、政策調整は11月もしくは12月になる見通しだ。ただ、それまでに資産買い入れプログラムやフォワードガイダンス強化の議論が進展する見通しであり、金相場を取り巻く環境は一段と強気に傾く可能性が高い。FRBの意図している通りに、インフレ期待の上振れと名目金利押し下げが同時に施行するのであれば、実質金利は最近のマイナス1%水準から更に下振れすることになる。

 世界的に新型コロナウイルスの新規感染者数は減少に転じ始めているが、経済に生じたショックを解消するプロセスは長期化が必至の状況にある。米議会では断続的に追加景気対策の議論を迫られる状況が続いているが、最終的に財政赤字がどこまで拡大するのか、見通しが経たない状況が続く。債務の膨張は通貨に対する信認を低下させるが、民間部門では対象発行された国債を消化できるのか不透明感が高まる中、FRBは強力な資産購入プログラムを長期にわたって展開せざるを得ない状況にある。

 新型コロナウイルスのワクチン開発に成功すれば、経済活動は徐々に正常化に向かうことになる。しかし、膨張した財政赤字とマネーストックの正常化に着手するまでには、まだ年単位の多くの時間が要求されることになる。通貨の購買力低下が警戒される状況に変化はなく、金相場は息の長い上昇相場における調整局面との評価になる。実質金利低下、ETF買いの再開がみられると、買い安心感が強まる。(2020/09/02執筆)
【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)中部経済新聞2020年09月07日「私の相場観」

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