原油価格が膠着化している。NY原油先物相場は1バレル=40ドル台前半で小動きに終始している。6月8日に40ドルの節目を回復しているが、その後は約3か月で43ドル水準まで値上がりするのに精一杯の状況にある。その間に、世界的な株高・ドル安が進行したことを考慮すれば、コロナ禍以前の50~60ドル水準を回復する展開を支持する余地もあったが、実際の6月以降は底固いものの値動きの鈍さが目立つ状況が続いている。

コロナ禍の世界経済に対するショックが後退する中、原油需要環境も改善傾向にある。一部の国で新型コロナウイルスの感染第2波が観測されているが、4~5月にみられたような都市封鎖(ロックダウン)に象徴される強力な行動規制の再開は、日本を含む各国が見送っている。当然にロックダウンはコロナ禍終息に大きな効果が認められるが、4~6月期の経済活動の急速な落ち込みを受けて、各国政府はもはやロックダウン再開を有力な選択肢にはできない状況に陥っている。石油輸出国機構(OPEC)の推計では、世界石油需要は4~6月期の日量8,184万バレルが7~9月期には9,210万バレル、10~12月期には9,583万バレルまで回復する見通しになっている。

経済活動がコロナ禍以前の状態を早期に回復するのは困難としても、回復基調を維持できるのであれば、国際原油需給は緩和状態のピークを脱し、正常化に向かうプロセスが原油価格を押し上げるのは当然とも言える。実際に、米原油在庫は7月中旬から5週連続で減少中であり、過剰在庫の削減は着実に進んでいる。5月17日の5億3,660万バレルが、8月21日には5億0,780万バレルとなっている。

また、原油相場と同様に景気動向に強い影響を受ける株式相場は、米国のS&P500とNASDAQ総合指数が早くも過去最高値を更新している。石油輸出国機構(OPEC)プラスも、需給リバランスは可能との判断から8月1日以降は協調減産の規模を日量970万バレルから770万バレルまで大幅に削減している。産油国は、有事対応としての減産について、規模を縮小する出口戦略への着手が可能と考えている訳だ。

それにもかかわらず原油相場が伸び悩んでいるのは、今後の需要環境に対してあまりに多くの不確実性があるためだ。秋から冬にかけて改めてコロナ禍が深刻化すれば、石油需要は容易に大きく下振れする可能性がある。仮にロックダウン再開といった事態になると、4月と同様に再び原油価格がゼロになる事態までも想定しておく必要がある。

実際に、6月下旬以降に米国で新型コロナウイルスの感染被害が広がりを見せ始めると、米国の末端石油需要の回復はほぼ止まっている。米製油所の原油処理量は、前年同期の水準を15.5%下回っている。ガソリン需要も7.5%下回っている。OPECプラスの内部報告書でも、今年の世界石油需要について前年比で日量910万バレル減を基本にしつつも、コロナ禍の動向次第で1,120万バレル減までマイナス幅が拡大し、過剰在庫の減少が進まない可能性も想定していることが明らかになっている。

しかも、米国では夏のドライブシーズンが終わり、今後は需要の端境期に向かうことになる。製油所はメンテナンスシーズンに突入し、コロナ禍の影響を考慮に入れなくても秋にかけて需要が停滞し易い時期に向かうことになる。秋冬のコロナ禍に対する警戒感が杞憂に終わるのであれば、原油相場は世界的な在庫取り崩しの動きと連動して緩やかな上昇地合が支持される。しかし、コロナ禍が深刻化した場合には、これまでの需給リバランスの取組が全て破綻し、改めて過剰在庫が原油相場を大きく下押しするリスクを抱えた状態にある。

全てはコロナ禍が年末時点、そして来年にどのような展開を見せているのかに依存するが、先読みが困難な状況が、過剰在庫の削減が進み、株高・ドル安が進む環境下にあっても、原油相場の膠着化を支持している。
【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

※図表はリンク先の記事参照。

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