〔アナリストの目〕天然ゴム、コロナ禍からの回復遅れる生産

天然ゴムの産地相場が急伸している。タイ中央ゴム市場におけるRSS現物相場は、コロナ禍による経済活動の低迷が深刻化した4〜5月にかけて1キロ=40バーツ水準まで下落していたが、8月には50バーツの節目を回復し、昨年7月以来の高値を更新している。

需要環境と供給環境のコロナ禍からの回復力における温度差が、産地で需給タイト感を発生させている。コロナ禍は第2波、第3波が世界各地で観測されているとはいえ、世界全体としてはそのショックが消化される局面にある。中国の7月新車販売台数は4カ月連続で前年比プラス、3カ月連続で2桁増になっている。政府のインフラ投資によって、トラックなどの商業車に特需が発生している影響もあるが、タイヤ販売に関しても新車用、買い替え用ともにコロナ禍前の水準を上回っているとみられる。欧米でもタイヤ販売は4〜5月がボトムであり、6月以降は改善傾向にあるとの報告が目立つ。

一方で、供給環境はこうした需要回復に見合ったペースで改善していない。タイでは干ばつ傾向が依然として強い一方、インドネシアやマレーシアではモンスーンによる豪雨が観測された。今後はラニーニャ現象が発生するとの警戒感も強い。前回のラニーニャ現象が発生した2010〜11年には、天然ゴム以外にも、砂糖やコーヒーなどの農産物価格全体が急伸した経験がある。

また、新型コロナウイルスの影響でゴム農地では労働力不足が深刻化している。特に外国人労働者の職場復帰が遅れており、ゴムのみならずパーム油でも農場経営における大きなリスク要因になっている。さらに新型コロナウイルス対策で農場や工場では新たな操業体制の確立を求められているが、供給環境の正常化には大きな後れが目立つ。

決して供給の絶対量が大きく落ち込んでいるわけではなく、供給量トレンドは上向きである。しかし、需要と供給との間で回復ペースには明確な違いが見受けられる結果、産地需給に対して突然にタイト感が浮上した状態になっている。

◇産地主導の上昇地合い維持か

産地相場の上昇トレンドが確立する中、JPX天然ゴム先物相場RSSも、4月2日の1キロ=138円30銭をボトムに、8月には170円台までコアレンジを切り上げている。中国通貨人民元相場の上昇もあって、上海ゴム相場の値動きの鈍さがJPXゴム相場の上値も抑えているが、産地における需給タイト感が解消されるまでは、産地主導の上昇地合いが維持されよう。決してゴム相場の高騰が要求されるような需要環境にはないが、コロナ禍からの回復プロセスにおける供給環境の相対的な脆弱(ぜいじゃく)性が、ゴム相場を押し上げやすい状況にしている。 
(2020/08/25執筆)
【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)時事通信社J-COM「アナリストの目」(2020年08月25日)

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