供給不安を織り込むコーヒー
コロナのもたらす供給制約

 新型コロナウイルスは、コモディティ市場においては需要と供給の双方に対するリスクを高めるイベントになる。経済活動の停滞を促す側面が注目されれば、今年4月にNY原油先物相場が一時マイナス価格を記録したのに象徴されるように、コモディティ価格は下落する。今年は原油以外にも、非鉄金属や天然ゴム、プラチナなどの産業用素材市況が軒並み大きく値下りした。新型コロナウイルスの第2波、第3波が日本を含めた世界各地で観測される中、コモディティ需要の先行き不透明感は強い。

 一方で、新型コロナウイルスは経済活動を広範囲にわたって阻害するため、当然に需要サイドのみならず供給サイドにも影響を及ぼすことがある。例えば、中南米では銅鉱山が操業停止や縮小を迫られたことで、需要ショックで急落していた銅相場は、6月から7月にかけて急伸地合を形成した。金やプラチナ鉱山などでもロックダウン(都市封鎖)が行われると稼働停止のリスクがあるため、コモディティは供給サイドにも大きな不確実性を抱えた状態にある。

 ここにきて、その供給リスクが注目されているマーケットの一つが、コーヒー相場である。NYコーヒー先物相場は、6月から7月中旬にかけて1ポンド=90セント台で取引されていたが、8月入りしてからは120セント台まで急伸している。これまでは、ブラジルを筆頭とした潤沢な供給見通しが上値を圧迫していたが、中南米、更にベトナムやインドネシアといった主要生産国で新型コロナイルスの感染被害が広がりを見せていることで、本当に安定供給が可能なのか、懐疑的な見方が浮上しているのだ。特に、最近ではベトナムの感染被害拡大がコーヒー市場参加者の注目を集めており、同国の保健当局は従来よりも感染力が強くなっていると警告を発している。米国など消費国の在庫水準が抑制されているだけに、統計上は十分な在庫があるものの、実際には市場に対して供給できないリスクが強く警戒されている。

 パーム油や天然ゴムに関しても、これと同様の問題が浮上している。トウモロコシや大豆などの穀物は大規模な農業機械が導入されているため、新型コロナウイルスの直接的な影響は限定される。しかし、コーヒーやココア、天然ゴム、パーム油などは機械化が困難な労働集約型の産業であり、感染対策を重視すると収穫作業や流通に影響が生じるリスクを抱えている。農地での感染被害が限定されても、各国が人の移動を制限すると、外国人労働者の出入国が難しくなり、農地で労働力が不足することになる。

 しかも、中国南部や東南アジアでは、気象環境も不安定化している。インドネシアやマレーシアでは豪雨、タイでは干ばつなど、農業生産全体が大きなリスクを抱えている。ラニーニャ現象への移行が進むとの見方も浮上しており、穀物を除く主要農産物価格に対して値上り圧力が目立つ状況になっている。
(2020/08/05執筆)
【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)中部経済新聞2020年08月03日「私の相場観」

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