金相場は2000ドル時代へ
新冷戦への警戒感も織り込む

 NY金先物相場は、1オンス=2000ドルの節目に迫る展開になっている。過去最高値を更新し、未経験の価格ゾーンに突入している。新型コロナウイルスの影響で米景気回復見通しに対する不確実性が高まっており、改めて政策対応の強化が模索されている。議会は追加景気対策、米連邦準備制度理事会(FRB)は金融緩和策の強化を進めることになる。しかし、新型コロナウイルスの感染被害が終息に向かわない以上、景気の腰折れを回避するのに精一杯の状態であり、このまま財政赤字を積み増し続ける一方で、通貨供給量の増大を続けても問題がないのか、不安視する向きが増えている。

 為替市場では、ドル安傾向が鮮明になっている。従来は「有事のドル買い」と言える動きが観測されていたが、実質金利が過去最低を更新する中、ドル建て資産に対するマーケットの評価は厳しさを増している。もはやドルが安全性を求める投機資金の受け皿として機能しなくなる中、金市場に対する資金流入傾向が加速している。

 しかも、米中間では香港の自治、台湾の独立、ウイグルやチベットの人権問題、中国の海洋進出などを巡って、対立がエスカレートしている。両国が互いに総領事館の閉鎖を命じる事態は、「戦争前夜」を意識させ、金価格の高騰を後押ししている。米政府は、自由主義諸国に対して対中政策の協調を求めており、既にオーストラリアは米国との防衛・外務の2+2会合において、対中強硬姿勢を鮮明にしている。これまでは、中国との経済的結びつきを重視して、中国の海洋進出を黙認する状態にあったが、極めて重要な政策転換を行っている。インドネシアなども、中国を念頭に入れた軍事演習を展開している。米中の「新冷戦」を巡る対立構造は、いよいよ各国に対して立場を明確化することを求め始めている。日本でも、「Tiktok」など中国発アプリの制限を巡る議論が活発化しており、尖閣諸島や沖ノ鳥島を巡る防衛などでも、従来よりも踏み込んだ対応が検討されている。

 経済環境の不確実性が著しく高まり、政策対応が過去に経験したことのないような規模で展開される中、通貨や国債といったペーパー資産に対する信頼感が急速に失われている。金と同時に暗号資産(仮想通貨)ビットコインが急伸していることは、国の信用に基づく資産に対して、投資家が信頼を維持できるのか疑問視し始めていることを示唆している。

 米金融大手ゴールドマン・サックスは、2000ドル到達は時間の問題であり、向こう12カ月で2300ドルまで上昇するとの強気の見通しを示している。過去最高値を更新していることに加えて、2000ドルの節目に近づく中、短期的には大規模な持高調整が行われる可能性も想定しておく必要がある。一方で、財政赤字が膨張し、実質金利は過去最低レベルまで低下し、地政学リスクが高まり、米国内の政治・社会環境が不安定化している現状は、金相場の2000ドルは通過点に過ぎない可能性を強く示唆している。高値波乱の展開を繰り返しながら、上昇トレンドを維持しよう。
(2020/07/29執筆)
【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)中部経済新聞2020年08月03日「私の相場観」

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