中国洪水で高騰するパーム油
天然ゴムも期近に上昇圧力

 7月は九州地方で豪雨・洪水被害が観測されたが、中国や東南アジアでも豪雨が観測されている。中国の長江流域では豪雨が止まらず、河川水位の上昇から各地で洪水被害が報告されている。下流域には南京市や合肥市といった大都市が位置しているため、上流域で意図的に堤防を決壊させて、中国全体としての被害を最小限に抑えるための試みも行われている。東南アジアでも、これまでは干ばつ状態が強く警戒されていたが、マレーシアやインドネシアでは豪雨による農作業への影響が報告され始めている。

 今回の中国から東南アジアにかけての洪水被害に対して特に強く反応しているのがパーム油相場だ。本来であれば生産量が最も伸びる時期に向かう局面だが、豪雨の影響で収穫作業に影響が生じており、集荷に遅れが報告されている。しかも、新型コロナウイルスの影響で外国人労働者の入国規制が解除されていないため、パーム油農園では労働力不足が深刻化している。マレーシアでは業界団体が政府に対して対応を求めているが、今後数か月のイールドが最大で25%減少するといった試算も出始めている。MPOCパーム油先物相場は、5月6日の1トン=1939リンギットで底入れし、その後は新型コロナウイルスの収穫による需要環境の改善と歩調を合わせて、2400リンギット水準まで反発して、上げ一服となっていた。しかし、中国と東南アジアで豪雨・洪水被害が発生すると、一気に2600リンギット台まで急伸し、約5カ月ぶりの高値を更新している。バイオディーゼルや食用油価格の上昇が直ちに国内での植物油価格高騰を促す訳ではないが、供給サイドの混乱が目立ち始めていることには注意が求められる。

 これと同じ論理で、天然ゴム価格に対しても押し上げ圧力が発生している。JPXゴム先物相場は、期先限月だと1kg=150円台後半をコアに方向性を欠く展開が続いている。需要が最悪期を脱したとの見方がある一方、依然として新型コロナウイルスの感染被害が拡大し続ける中、上値追いには慎重姿勢が目立つ。

 しかし、期近限月では産地主導の上昇圧力が観測されており、当限は7月上旬の140円台前半に対して、150円台中盤まで値上がりしている。これは約4カ月ぶりの高値更新になる。当先の順サヤ(期近安・期先高)が急速に縮小しており、新型コロナウイルスがもたらした需給緩和圧力が、需要環境の回復と供給不安の同時進行によって、解消に向かっていることが確認できる。

 新型コロナウイルスの感染被害は依然として猛威を奮っているため、需要動向によっては改めて下押し圧力が強まる可能性は残されている。一方で、このまま需要回復に波があっても正常化に向かう一方、天候不順や労働力不足による供給不安が維持されると、ゴム相場も当限に続いて期先限月に対して買い圧力が強まる可能性が高まる。逆サヤへの転換で、現物市場主導の上昇が本格化する可能性も想定しておきたい。
(2020/07/22執筆)
【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)中部経済新聞2020年07月27日「私の相場観」

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