新型コロナで高騰する金
景気見通しの不確実性増す

 内外の金価格が高騰している。NY金先物相場は6月下旬に1オンス=1800ドルの節目を突破し、2011年9月以来の高値を更新している。また、東京金先物相場は年初の1グラム=5303円に対して6200円台まで上昇している。東京金先物取引開始後の最高値を更新し続けている。

 7月入りしてからの急伸地合に関しては、改めて新型コロナウイルスの感染被害が拡大している影響が大きい。国内でも新規感染者数が増加に転じているが、特に米国では南部から西部にかけて深刻な感染被害の広がりが報告されている。連日のように新規感染者数が急増しており、経済見通しに不確実性が強くなっている。

 従来は、感染被害の終息に伴い経済活動は正常化に向かい、景気はV字型の切り返しに向かうとの楽観的な見方が優勢だった。しかし、感染対策で改めて経済活動を抑制せざるを得ない状況に陥る中、景気見通しが急激に悪化する可能性が高まっている。短期経済指標の悪化が報告されており、複数の米金融当局者が、景況感の急激な悪化を報告し始めている。

 新型コロナウイルスの感染状況が景気回復ペースを決定づける状況になる中、セントルイス連銀ブラード総裁やダラス連銀カプラン総裁は、マスク着用など公衆衛生面での対策強化を強く訴えている。新型コロナウイルスのワクチンや治療薬開発には依然として時間が必要なため、当面の最も効果が得られる可能性がある衛生対策はマスク着用になっている。そして、それは同時に最大の景気対策にもなっている。トランプ米大統領も、これまで拒否し続けてきたマスク着用を開始している。

 7月28~29日には米連邦公開市場委員会(FOMC)が開催されるが、金融緩和政策の強化が決定される可能性がある。前回会合では、インフレ率と失業率が目標に達するまで金融緩和措置を継続する方針を示すフォワード・ガイダンス強化について、協議が行われていたことが確認されている。改めて金利低下圧力が強まれば、金市場に対する資金流入傾向は維持され易い。

 一方、株価は高止まりし、ボラティリティ指数(恐怖指数)は抑制されており、投資家のリスク選好性は必ずしも大きく損なわれていない。このため、リスク資産売りの受け皿として金が買われている訳ではない。しかし、マーケットでは新型コロナウイルスのリスクを十分に消化できていないのではないかとの危機感が強く、株高・低ボラティリティ環境が、逆に金に対する投機マネー流入の動きを促している。国際通貨基金(IMF)も実体経済とリスク資産との乖離が過去最大に達しているとして、将来の金融環境の不安定化につながるリスクを強く警告している。1800ドル台到達で短期的な目標達成感もあるが、持ち高調整をこなしながら一段高を打診する展開が維持されよう。
(2020/07/15執筆)
【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)中部経済新聞2020年07月20日「私の相場観」

******************************************

マーケットエッジ(株)では、コモディティ市場と金融市場のレポート配信の他、講演のご依頼も承っています。まずはご相談下さい。

【お問合せ先】
マーケットエッジ株式会社 https://www.marketedge.co.jp/
E-mail  kosuge.tsutomu@outlook.com