原油高に一服感が強まる
伸び悩む精製マージン

 NY原油先物相場は、1バレル=40ドル水準で上げ一服感が広がっている。4月下旬以降は急ピッチに安値修正を進めてきたが、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて急落する前の値位置(50~60ドル水準)に近くづく中、改めて上値が重くなりつつある。

 国際原油需給環境は、着実に正常化に向かっている。需要は回復傾向を維持する一方、石油輸出国機構(OPEC)プラスの協調減産は着実に実行されている。投資不足から米国のシェール産業でも減産圧力は強くなっており、今年は上期の大幅な供給超過状態を、下期に解消に向かわせる流れが想定されている。このまま需要環境の改善傾向に変化がなければ、国際需給は供給不足化が本格化し、在庫の取り崩しが進むことが、原油相場のコアレンジ切り上げを促そう。

 それにもかかわらず40ドル水準で上値が重くなっている背景にあるのは、精製マージンの回復が遅れていることだ。原油は製油所での精製処理を経て、石油製品として市場に流通することになる。この製油所の収益を決定づけるのが原油と石油製品の価格差(クラックスプレッド)になるが、このクラックスプレッドが歴史的低迷状態にあるのだ。

 これは石油製品相場に対して、原油相場が過剰に値上がりしていることを意味する。すなわち、末端実需動向とかい離した高値形成が行われた状態になっている。原油に遅れる形で石油製品相場が急伸すれば、クラックスプレッドの安値修正が進み、製油所の活動も活発化することになる。しかし、仮にこのまま石油製品相場の上昇ペースが原油相場と比較して抑制された状態が続くと、製油所の活動が十分に正常化せず、過剰在庫の解消が十分に進まない可能性がある。

 この問題を解決するには、末端の石油製品需要を更に押し上げ、原油相場に対して石油製品相場を大きく押し上げれば良い。クラックスプレッドが拡大すれば、製油所の原油処理量は増加し、必然的に原油在庫の取り崩しが本格化する。しかし、クラックスプレッドが歴史的低迷状態にあることは、依然として石油製品需要が十分に回復していない一方、原油価格が将来の需給環境改善を見込んで必要以上の値上がりを進めた状態にあることを意味する。

 しかも、このタイミングで改めて新型コロナウイルスの感染被害が世界各地で広がりつつある。現段階では世界経済の正常化が阻害されるとまでは評価されていないが、新型コロナウイルスの脅威は未だ消え去ってはいないことが再確認されている。仮にロックダウンといった強力な感染対策が講じられると、改めて輸送用エネルギー需要が大きく落ち込む可能性もある。

 原油需要が「V字型」の回復ではなく「W字型」の波乱含みの回復軌道をたどるのであれば、ここから更に原油高を進める道のりは平たんではない。
(2020/07/01執筆)
【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)中部経済新聞2020年07月06日「私の相場観」

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