先行き不透明感で金は堅調
株価と関係なく買われる

 金相場が騰勢を強めている。NY金先物相場は1オンス=1700ドル台前半をコアとした膠着状態が続いていたが、6月下旬に入ってから上昇傾向を強め、年初来高値を更新している。スポット市場では約8年ぶりの高値が更新されており、1800ドル台乗せも意識される状況になっている。
 背景にあるのは、新型コロナウイルスの「第2波」に対する警戒感が強くなっていることだ。各国はロックダウンなどで新型コロナウイルスの封じ込めを進め、中国では3月、欧米では5月以降に経済活動の正常化を進める動きが強くなっている。しかし、6月入りしてからは米南部や中国北京などで改めて新規感染者数の増加が報告されており、本当に経済活動の正常化が可能なのか、先行き不透明感が強くなっている。

 株式市場では、景気トレンドの波はあっても、経済正常化のプロセスに変化が生じることはないとの楽観ムードも目立つ。米国株は乱高下を繰り返しながらも緩やかな安値修正プロセスを維持しており、6月のNASDAQ総合指数に至っては過去最高値を更新している。このため、リスク資産買い・安全資産売りの動きも十分に想定できる状況にあるが、実際には「リスク資産の株式」と「安全資産の金」が同時に上昇する展開になっている。

 米連邦準備制度理事会(FRB)が強力な金融緩和策を展開していることもあり、株式市場では投資家のリスク選好性が維持されている。しかし、金市場では株価がファンダメンタルズとかい離した投機的な高値を形成しているのではないかとの警戒感が強く、株高が逆に金に対するヘッジニーズを創出する状況になっている。現在のマーケット環境では、経済正常化期待から株式を買い進む動きがみられても、市場環境不安定化のヘッジとして金も買い進むことが選択されている。これは世界同時金融危機後に見られたのと同じ現象である。

 経済活動が最悪期を脱した可能性が高いことは間違いないが、米金融当局者は過度の楽観ムードを強くけん制している。新型コロナウイルスの感染被害は未だに終息した訳ではなく、ワクチンや治療薬の開発が順調に進み、市民が社会活動や経済活動に対する不安を払拭できるのかは、依然として不透明感が強いためだ。

 特に雇用環境の改善は遅れがちであり、マイノリティーや低所得者などの弱者程に、新型コロナウイルスの経済的ダメージが大きいことは、最近の黒人抗議デモの影響もあって、重大な関心事になっている。経済正常化が想定よりも遅れる可能性も高く、議会は追加的な財政出動、FRBは追加金融緩和の議論を継続している。

新型コロナウイルスを起点とした経済リスクは依然として膨張を続けており、安全資産に対する投資ニーズ軽減が可能な状態にはない。金上場投資信託(ETF)も、ほぼ一貫して投資残高の拡大を進めている。1800ドル台へのコアレンジ切り上げが打診されよう。
(2020/06/25執筆)
【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)中部経済新聞2020年06月29日「私の相場観」

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