経済再開で白金が安値修正
需要と供給の双方が激変

 NY白金先物相場は、3月16日の1オンス=562.00ドルをボトムに、5月下旬には一時900ドル台を回復するなど、底固く推移している。急落前の1000ドル水準を回復するには至っていないが、概ね2月下旬以来となる約3か月ぶりの高値を更新している。

新型コロナウイルスは他の産業用素材と同様に白金需要に対しても大きなダメージをもたらし、需給緩和圧力が白金相場を大きく下押しした。各国で行動制限が行われた結果、自動車販売のみならず自動車生産にも壊滅的と言える被害が生じ、自動車排ガス用の触媒需要は大きく落ち込んだ。また、中国では宝飾品販売店の休業が進んだこともあり、価格が下落しても宝飾需要も伸び悩んだ。工業関連需要に関しても、各種プラント建設がストップしたことで、白金の需要計画に大きな影響が生じている。頼みの綱と言える投資需要も、投資家の関心は安全資産である金に集中し、需給緩和が決定的となった白金に関しては、割安感や下げ過ぎ感が強まったものの、買いを入れる動きは鈍かった。

ワールド・プラチナ・インベストメント・カウンシル(WPIC)の調査では、今年1~3月期の世界白金需要は164.9万オンスと、昨年10~12月期の174.2万オンスから大きく落ち込んでいる。

ただ、中国では3月、欧米でも4~5月にかけては行動制限を解除する動きが始まり、白金需要環境の改善期待が、白金相場の反発を促している。直ちに通常の需要環境に回帰できる訳ではないが、経済が動き始めていることで、需要の落ち込みは最悪期を脱したとの評価が優勢になっている。これは原油や非鉄金属相場などにも共通したテーマであり、「需要低迷」よりも「需要の回復傾向」が高く評価されている。

 もはや新型コロナウイルスの感染が広がる前のような需要環境に回帰しないといった見方もあるが、これからどのようなペースで需要環境の回復を進めていくことが可能かが、白金相場の反発力を決定づけることになる。

 一方、新型コロナウイルスは供給環境にも大きなダメージを与えた。白金鉱山(特に南アフリカの高深度鉱区)の操業はマンパワーに強く依存しており、新型コロナウイルスの感染対策で操業停止を迫られた地域も多い。更に、南アフリカでは一部鉱山会社で精錬施設の爆発事故が発生したこともあり、1~3月期の世界鉱山生産は128.3万オンスと、 昨年10~12月期の162.7万オンスを大きく下回っている。

 鉱山においても操業再開の動きが広がっているが、再び新型コロナウイルスの感染が広がるような事態になると、突然に供給が止まるリスクを抱えることになる。また、感染被害防止のために新たな操業体制の模索も求められている。需要ショックからの立ち直りの速さの背景には、こうした供給環境の急激な変化も影響している模様だ。
(2020/05/28執筆)
【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)中部経済新聞2020年06月01日「私の相場観」

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