マイナス価格から回復続く原油
需給リバランスで30ドル回復

NY原油先物価格は、4月20日に1バレル=マイナス40.32ドルを記録したが、5月下旬には30ドル台を回復する展開になっている。新型コロナウイルスの感染被害がもたらした強力な需給緩和圧力が、約1カ月をかけて是正されつつあることが窺える。新型コロナウイルスの感染被害が広がる前の50ドル台から大きく値下りした状態に変化はみられないが、原油価格が極めて緩やかなペースではあるものの、通常の取引環境に回帰しつつあることが確認できる。

最大の要因は、新型コロナウイルスの需要環境に対するショックが、想定よりも早く解消に向かっていることだ。新型コロナウイルスは各国で外出・移動規制の導入を迫り、ガソリンやディーゼル、ジェット燃料といった輸送用エネルギー需要の急激な減少を促した。しかし、4月に入ってからは欧米で段階的に経済活動の正常化が打診されており、既に需要環境は最悪の状態を脱したとの安堵感が広がっている。

国際エネルギー機関(IEA)は最新の月報において、2020年の世界石油需要見通しを4月時点の前年比で日量930万バレル減から、860万バレル減までマイナス幅を縮小する修正を行っている。過去最大規模の需要減少圧力が発生することに変わりはないが、欧米の外出規制の動きが予想よりも早く進展し、中国の経済活動も正常化に向かう中、当初予想されていた程には、需要が落ち込まない可能性が高くなっている。

また、供給サイドの変化も無視できない。OPECプラスは5月1日から世界の原油供給の約1割に相当する日量970万バレルを削減する協調減産を開始しているが、初期段階のデータでは高いレベルの合意遵守率が報告されている。サウジアラビアとUAE、クウェートは自主的に減産規模を積み増す動きも見せており、他産油国に対しても協調を呼びかけている。本来は、7月以降に減産規模を縮小する計画になっていたが、需給リバランスの流れを決定的にし、かつ、その流れを加速させるために、5~6月の減産規模をそのまま維持する議論も始まっている。

更に、米国やカナダなど協調減産に参加していない国々でも、大規模な減産圧力が報告されている。急激な原油安と需要環境の悪化を受けて、石油メジャー各社は20年の投資計画を概ね3割程度削減する動きを見せている。

このまま需要環境の改善、OPECプラスの協調減産合意遵守、OPECプラス以外の産油国の減産が着実に進展すれば、年後半には需給バランスが供給「不足」に傾き、過剰在庫の取り崩しが開始されるとみられている。それでも、年前半に積み上がった在庫の全てを解消することは困難とみられているが、需給緩和状態がピークを脱し、正常化プロセスに移行しているとの見方が、原油相場の安値修正を促している。需給リバランスの流れが阻害されない範囲内の原油高の限界がどこにあるのかが、今後の焦点になる。
(2020/05/21執筆)
【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)中部経済新聞2020年05月25日「私の相場観」

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