原油は底入れも先高感は弱い
需要環境は最悪期を脱する

NY原油相場が安値からの切り返しを進めている。4月21日の1バレル=6.50ドルをボトムに、5月入りしてからは20ドル、25ドルと、節目となる価格水準を次々に突破し、中心限月ベースでは4月17日以来の高値を更新している。背景にあるのは、原油需要環境が最悪期を脱したとの評価が広がりを見せていることだ。

新型コロナウイルスは有効な治療薬が存在しない以上、唯一の解決策が外出・移動を抑制することで、感染経路を強引に経つことだった。国内では外出自粛要請が行われたが、海外ではより拘束力の強いロックダウン(都市閉鎖)も実施され、輸送用エネルギーである原油需要は過去に経験したことのないレベルの大きなダメージを受けた。例えば、米ガソリン消費量は3月13日時点の日量970万バレルから、4月3日には507万バレルまで、僅か3週間で48%減少した。しかし、直近の5月1日時点では666万バレルまで回復しており、需要環境の悪化はピークを脱したとの安堵感が広がりを見せている。

米国以外でも、欧州などを中心に外出規制の緩和・解除を進める動きが強くなっており、今後は供給過剰幅の圧縮が進むとの楽観的な見方が勢いを増している。まだ需要環境が正常化する見通しは立っておらず、供給過剰状態が在庫積み増しを促すトレンドにも変化はみられない。ただ、需給緩和状態の解消が予想よりも早いペースで始まったとの評価が、原油相場の反発を促している。

また、供給環境の劇的な変化も、原油相場を下支えしている。石油輸出国機構(OPEC)プラスの協調減産が5月1日から始まっているが、それと同時に米産油量が大きく落ち込んでいる。急激な原油安で収益環境が著しく悪化する中、生産計画を見直す動きが活発化している。

米石油リグ稼働数は、3月13日時点の683基から、5月1日時点の325基まで、僅か7週間で半減している。4月には原油相場が一時マイナス価格化した影響もあり、1~3月期決算発表と前後して、石油各社は投資計画の見直しを進めている。米産油量は既に日量100万バレル規模の減少となっており、中規模の産油国が一つ失われたのと同様の状態にある。原油需要環境の改善と、供給の急激な落ち込みが進んでいることが、原油相場を下支えし始めている。

ただ、需要回復のプロセスには多くの時間が必要であり、需給均衡化、そして在庫の取り崩しによる過剰在庫の解消までも、1カ月や2カ月といったタイムスパンで実現するような議論ではない。今後も過剰在庫環境の上値圧迫は続くことになり、原油相場はボトムを確認した可能性が高まるものの、その後の安値修正の動きは極めて緩やかなペースでしか進まないだろう。急落前の40ドルや50ドルといった価格水準を回復するのであれば、中東の地政学リスクが暴走するなど、需給環境に想定外の混乱が生じることが求められる。
(2020/05/07執筆)
【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)中部経済新聞2020年05月11日「私の相場観」

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