協調減産でも上がらない原油
あまりに大きな需要ショック

石油輸出国機構(OPEC)プラスは3月12日、協調減産を再開することで最終合意した。5~6月に日量970万バレル、7~12月に770万バレル、2021年1月~22年4月に580万バレルと、過去に経験したことのない大規模な減産を向こう2年にわたって実施することになる。6月の状況次第では、追加減産にも含みを持たせており、原油需給・価格環境の不安定化に終止符を打つ強い意志をみせた。

一方、20カ国・地域(G20)エネルギー相会合では、石油市場安定化のための取組を確認するも、減産の数値目標などを設定することはできず、各国に判断が委ねられることになった。原油相場の急落によって米国やカナダなどの産油量は減少する見通しだが、実際にどの程度の減産圧力が発生するのかは、先行きが見通せない状況になっている。

それでも世界原油供給量の1~2割を削減する動きは、原油需給環境の安定化に一定の貢献が期待できる。少なくとも、需要減少に伴う在庫積み増し圧力を軽減することは可能になる。しかし、これで需要を供給とのバランスを均衡化させることができるかは別問題であり、マーケットでは少なくとも短期的には供給過剰状態が在庫積み増しを促す展開が続くとの見方が優勢になっている。

国際エネルギー機関(IEA)は、石油市場にとって2020年は過去最悪の年、2020年4月は過去最悪の月になったとの評価を下している。新型コロナウイルス対策のために各国で移動規制が行われ、経済活動が停滞した結果、石油需要は過去に経験したことのない落ち込みを見せているためだ。前年同月比だと、4月は2900万バレル減、5月は2600万バレル減が予想されている。6月にはある程度の回復が見込まれているが、それでも1500万バレル減と厳しい需要環境が続く見通しになっている。

これはOPECプラスの協調減産、米国などの自然減産、消費国の戦略備蓄増強などの動きを以てしてもカバーするのが難しい規模の需要喪失が発生していることを意味する。足元では新型コロナウイルスの収束期待が浮上し始めているが、経済活動の正常化によって需要環境の改善を促していくまでは、原油需給の緩和状態を解消することは難しく、油田閉鎖を促すための安値誘導を継続する必要性が高い。
NYMEX原油先物相場のサヤをみても、5月限と6月限が期先限月に対して大幅にディスカウントされた強力な順サヤ(期近安・期先高)が形成されており、マーケットでも需給バランスが安定化し始めるのは最短で7~9月期になるとみている向きが多いことが示されている。

 需要環境が回復し始めれば、これまでの原油安で供給量が大幅に落ち込んでいるだけに、需給バランスは安定化に向かうことになる。ただ、現在発生している需要ショックの解消には多くの時間が必要であり、原油相場の安値修正プロセスは必然的に長期化する。

(2020/04/16執筆)
【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)中部経済新聞2020年04月20日「私の相場観」

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