トランプ米大統領の仲介によって、主要産油国が協調減産の再開を模索し始めているが、合意が形成されるのかは、なお予断を許さない状況が続いている。サウジアラビアは4月5日に石油輸出国機構(OPEC)緊急会合の開催を要請したが、実際に緊急会合を開催できるかも含めて、産油国間の調整が難航しているためだ。

過度の原油安が経済や金融環境に対しても大きなリスク要因になる中、トランプ米大統領が対立を続けるサウジアラビアとロシアとの間で協議再開の働き掛けを行い、交渉のテーブルにつく方向での調整が始まっていることは大きな進歩である。一方で、トランプ大統領の主張する世界石油供給の約1割に相当する日量1,000万バレル、更には1,500万バレルといった大規模な協調減産の再開で合意できるのかは、依然として不透明感が強い。

当初は4月6日にもOPECプラスのテレビ会談が開催されると産油国間での調整が進んでいたが、現在は9日や10日開催で再調整が行われている。3月6日のOPECプラス会合では、サウジアラビアとロシアの協調減産延長を巡る協議が決裂したことで、協調減産体制そのものが崩壊した反省もあり、特にサウジアラビアは緊急会合開催前に事実上の合意形成を望んでいる模様だ。しかし具体的にどのような内容の協調減産であれば各国が合意できるのか、協議が難航している。

新型コロナウイルスの影響で、多数の産油国が対面ではなくTV中継で会談を行うため、実際の会談では突っ込んだ議論はできないとの思惑もあるのだろう。緊急会合はセレモニー的な内容になる可能性が高く、事前の合意形成が重視されている。

ロシアのプーチン大統領は4日、日量1,000万バレル規模の協調減産に理解を示し、原油価格について1バレル=42ドル前後が望ましいとして、具体的な価格ターゲットにも言及している。その一方で、原油相場の急落はサウジアラビアが協調減産から離脱し、ディスカウント販売を行っている影響が大きく、サウジアラビアに責任を取らせるといった挑発的な発言も行っている。サウジアラビア外務省は、プーチン大統領の発言を事実ではないと反発するなど、ロシアとサウジアラビアとの関係性は依然として緊張状態にある。

■米国にも減産参加の貢献を求める声が強い

より重要なポイントは、新しい協調減産体制には、従来のOPECプラス以外の産油国にも参加が要請されていることだ。世界的な危機状態とあって、全ての産油国に対して原油需給バランス安定化への貢献が求められている。具体的には、米国、カナダ、ブラジル、ノルウェーなどである。特に、原油安是正のための仲介を主導している米国に対しては、OPECとロシアの双方から協調減産への参加を求める声が高まっている。

米国では反トラスト法の影響で、国内石油会社に対して直接的な減産指示を行うことはできないとされているが、自主的な生産調整など何らかの形で、供給過剰状態を解消するための貢献を求める声が強い。現時点で、米政府高官からは否定的な発言が相次いでいるが、カナダ、ノルウェー、ブラジルなどは協調減産参加が法的、政治・経済的に可能なのか調整が進められており、主要産油国が一致して原油安に対抗する姿勢を打ち出すことができるかが問われている。

ただ、国際エネルギー機関(IEA)のビロル事務局長は、仮にOPECプラスが日量1,000万バレルの協調減産を実施しても、4~6月には日量1,500万バレルの在庫積み増しが行われるとして、いずれにしても供給過剰状態の解消は難しいとの認識を示している。協調減産合意が実現すれば、無理な原油安によって各国で油田のシャットダウンを促すような必要性は薄れるが、それが国際原油需給・価格の安定化に十分な規模といえるのかは、全くの別問題になる。それだけ、新型コロナウイルスの原油需要に対するショックは厳しいものになっているということだ。
【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

※図表はリンク先の記事参照。

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