原油安に慌て始めた産油国
トランプ政権も介入始める

石油輸出国機構(OPEC)プラスの協調減産体制は、3月末を以て終了した。2018年1月から国際原油需給と価格の安定化に寄与してきた政策だが、3月6日のOPECプラス会合で追加減産を巡る協議が決裂したことを受けて、協調減産体制そのものが崩壊する最悪の状況に陥っている。しかも、現在は新型コロナウイルスの影響で人々の外出が規制されるロックダウンが世界各地で展開されている状況にあり、ガソリンやディーゼル需要が大幅に落ち込む最悪の需要環境にあって、OPECプラスは増産政策への転換を進めることになる。世界の人口の4割が何らかの形で移動制限を受けており、これまでに見たことのないような需要減退圧力に晒されている。

追加減産の必要性が議論される状況にあって、逆に増産政策を展開する以上、4月以降の国際原油需給が強力な緩和圧力に直面するのは避けられない状況になっている。マーケットでは、現状を「価格戦争(price war)」と評価しており、原油相場の急落環境にあってどの産油国が生き残ることができるのか、激しい生存競争が繰り広げられることになる。

このため、高コストの生産者が市場から撤退する形で需給リバランスを目指すことになるが、需要崩壊とも言える状況にあっては、原油安が減産対応を促しても、容易に需給環境が安定化する状況にはない。一方で、過度の原油安は消費者にとっては好ましい現象とも言えるが、その一方でオイルマネーの株式市場からの資金引き揚げ、シェール企業が資金調達を行うハイイールド債の利回り急伸、石油関連企業の倒産など、世界経済や金融市場に強いストレスを与えているため、対策を巡る議論も活発化している。

当初、ロシアはOPECプラスの枠組みで協調減産体制の維持を模索したが、サウジアラビアのロシアに対する反発は極めて強く、ハイレベル協議を行えないほどに二国間の関係は悪化している。このため、ロシアは対立関係にある米国に対しても原油安への対応で共同歩調を取ることを要請し、米ロ間で対応が協議され始めている。ロシアとしては、OPECプラスと米国との協調の形で改めて協調減産を実施することを模索している模様だが、現段階ではサウジアラビアに対して政策転換を迫る見通しが立たない状態にある。

トランプ政権は原油需給・価格安定化のための新たな枠組みの検討を始めており、ロシアの代わりにOPECと米国の協調減産体制も含めた、様々な協調体制案も浮上している。まだ議論は初期段階だが、これまで原油「高」を批判し続けていたトランプ政権さえも、もはや放置することができないレベルの原油安が実現している。いずれにしてもサウジアラビアを協調減産体制に取り込まない限りは、当面の原油需給を安定化させることは困難であり、長い時間をかけて各国に対して生産調整を促すか、サウジアラビアの協調減産体制回帰が、原油安是正の必要条件になろう。
(2020/04/02執筆)
【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)中部経済新聞2020年04月06日「私の相場観」

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