新型コロナで供給不安も浮上
突然に供給が急減するリスク

新型コロナウイルスの感染被害は依然として拡大中だが、コモディティ市場に対する影響については微妙な変化が観測され始めている。当初の「需要リスク」中心の議論から「供給リスク」についても関心を払う必要性が高まっているのだ。

新型コロナウイルスは経済活動に深刻な被害を及ぼすため、コモディティ市場では需要がどこまで下振れするのかが最大の関心事になっていた。ヒトやモノの移動が制限されれば輸送用エネルギー需要が大きなダメージを受けることになり、ガソリン価格は急落している。また、消費者マインドの悪化で新車販売が落ち込めば、排ガス触媒用のプラチナ、タイヤ用の天然ゴム価格が下落することになる。1月以降はこうした需要サイドのリスクを織り込む動きが、コモディティ相場を断続的に下押ししてきた。これと同様の現象は、2008~09年の世界同時金融危機の際にも観測されたが、需要がどこまで落ち込むのか分からないという不安心理が、パニック的とも言える相場急落をもたらした。

一方、世界同時金融危機と今回の新型コロナウイルスで大きく異なるのは、新型コロナウイルスは需要環境と同時に供給環境にも大きなリスクをもたらすことだ。例えば、現在は世界各地で感染被害の拡大を防止するためのロックダウン(都市封鎖)が行われているが、中南米では農産物輸出への影響が警戒されている。農業や輸送インフラ系の業務はロックダウンの対象から外されることが多いが、感染リスクの高まりから収穫や輸送、更には港湾業務にも影響が生じ始めている。例えばブラジルが主産地となるアラビカコーヒーの場合だと、ブラジルの出荷が止まるリスクに備えて在庫手当を強化する動きも報告されており、潤沢な国際供給環境にありながらも、短期需給ひっ迫リスクが強く警戒されている。また、南アフリカもロックダウンの影響で鉱山の操業停止が警戒されており、プラチナやパラジウムの供給が3週間にわたって完全停止するリスクが浮上している。金や非鉄金属などの鉱山でも同様のリスクが高まっており、供給が突然にストップするリスクを抱えた状態になっている。

 これまでは、新型コロナウイルスの「需要リスク」だけを議論しておけば十分だったが、感染被害が一段と深刻化する中、突然に「供給リスク」の存在感が増し始めている。経済活動の停滞が、消費環境から生産環境にも波及し始めていることが明確に確認できる状況になっている。

 現状では、世界的に食糧供給が途絶えるようなパニック状態を引き起こすリスクが高まっている訳ではない。世界全体で食糧生産、輸送が一斉に停止するような状況は現実的ではない。しかし、特に労働集約型の産業である鉱物資源や天然ゴム、コーヒー、ココア、パーム油などの供給に関しては、突然に下振れするようなリスクを想定しておく必要が浮上している。
(2020/03/26執筆)
【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)中部経済新聞2020年03月30日「私の相場観」

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