◎〔アナリストの目〕天然ゴム、割安評価だが反発時期は不透明=小菅努氏 

1月中旬以降のマーケットでは、新型コロナウイルスへの対応に終始する時間帯が続いている。東京商品取引所(TOCOM)天然ゴム先物市場も例外ではなく、投資環境と実体経済(ゴム需要)にどの程度の影響が生じるのか、思惑先行の不安定な相場展開を強いられている。マーケットの目線では、この種の未知の感染症は過去の経験則からリスクを計量することが極めて難しくなるため、必然的に不確実性の強い投資家マインドが唯一の指標となり、今後も感染被害の数的、地理的な広がりの度合いに応じて悲観と楽観とが交錯する不安定な展開が続きやすい。

国際分業が進んだグローバルエコノミーにおいては、局地的な生産トラブルがサプライチェーンの混乱を通じて、思いがけないショックを生じさせることになる。近年、首都圏で鉄道の相互乗り入れが進んだ結果、わずかなトラブルが鉄道網全体を揺るがす大惨事になることをイメージすると分かりやすいだろう。

中国においては新規感染者数がピークアウトしており、このままコントロールが続けばいずれは終息に向かうことになる。しかし、既に中国以外にも感染者は広がりを見せており、各国がヒトやモノの移動を制限すれば、自動車生産の混乱状態が続くことになる。また、未知のウイルスは消費者マインドに対しても甚大な影響を及ぼすことになる。マスクなど衛生関連商品への需要は急増するが、緊急性の低い自動車(タイヤ)など耐久財に対する需要は抑制されやすい。

格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスは、2020年の世界自動車販売台数が前年比で2.5%減少するとの見通しを示しているが、サプライチェーンの混乱と消費者マインド悪化の影響は、どこまで織り込めば良いのか、誰も判断できない状況に陥っている。

◇コスト視点から150〜160円水準でサポート

過去の感染症を受けてのリスクオフ環境を振り返ると、総じてオーバーシュート気味の安値が形成され、その後は感染症の収束見通しが優勢になる動きと連動して、安値修正局面に移行する。しかし、足元では株価急落で損失を被った投資家が、流動性確保のために安全資産である金さえも売却する08年の世界同時金融危機以来となるパニック状態に陥っており、リスクオフ圧力の巻き戻しがいつ発生するのかは、新型コロナウイルスの感染被害の状況次第という不確実性の高いマーケット環境が続くことになる。

供給サイドに目を向ければ、タイ、ベトナム、ラオス、カンボジアなどでは干ばつ傾向が強く、消費地相場と比較して産地相場は下げ渋っている。TOCOM・RSS市場では当、先の順ざや(期近安・期先高)がほぼ解消され、減産期に向かうタイミングで逆ざや形成も警戒される状況になっている。「供給不安」よりも「需要不安」の消化が優先されており、供給サイドのリスクを手掛かりに安値修正を進めるのは難しい。

わずかなポジティブ材料は、この急落環境にあっても海外ファンドの売却意欲は一向に高まらず、若干のネットロング状態にあることだ。ただ、逆に押し目買いを本格化させるような動きは見られず、個人投資家の売り主導の値下がり局面になっている。

基本的には、パニック状態に伴い割安な価格形成が行われている局面との評価になる。数カ月後に振り返れば、現行価格は「割安だった」「物色妙味が大きかった」との評価になる可能性が高い。各国が一斉に財政・金融政策の出動を進める中、感染被害が終息方向に向かい出せば、強力な反発エネルギーが発生するのが、過去の同様の事例から得られている経験則である。

TOCOM・RSSは、コストの視点から150〜160円水準でサポートされると考えているが、底打ちの時期に関しては、感染被害の収束時期について専門家も十分な知見を有していないだけに、無理な予測を行わない方が良いだろう。


(2020/03/02執筆)
【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)時事通信社J-COM「アナリストの目」(2020年03月03日)

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