FRBの緊急利下げで金堅調
金利無き世界への回帰進む

米連邦準備制度理事会(FRB)は3日3日、0.50%の緊急利下げを決定した。17~18日に定例の米連邦公開市場委員会(FOMC)開催を控えているが、新型コロナウイルスの感染被害で実体経済やマーケット環境のリスクが高まる中、前倒しで利下げ対応を実施する必要があると判断した模様だ。声明文では、「米経済のファンダメンタルズは依然として強い」として、基調判断に大きな修正の必要性は認めなかった。ただ、リスクが高まっていることに対しては強い警戒感を示しており、昨年と同様に予防的観点からの利下げ対応が必要と判断したのだろう。

こうしたFRBの決定を受けて、米長期金利は1.0%の節目も割り込む異常事態になっている。現在の期待インフレ率は0.5%程度を推移しており、実質ベースではマイナス金利の深掘りが進むことになる。金相場は実質金利と強力な逆相関関係を形成しているが、特にマイナス金利環境においては無金利・無配当資産である金のパフォーマンスは大きく向上する傾向にある。

しかも、FRBの利下げは今回に留まらない可能性が高く、仮に今後2週間のマーケット環境に大きな混乱がみられると、定例会合でも追加利下げが実施される可能性も十分にある。3月中の追加利下げが見送られても、今後は断続的な利下げ対応を迫られる可能性が高まっている。

一方で、フェデラル・ファンド(FF)金利の誘導目標は1.00~1.25%しか残されておらず、今後の利下げ余地は多くない。新型コロナウイルスが早期に終息すれば問題は限定されるが、仮に長期化する事態になると、政策の手詰まり感が強く警戒される状況に陥る。パウエルFRB議長も、利下げは感染被害の終息には効果がないとしているが、利下げによる対処療法を続ける間に、新型コロナウイルスを収束に向かわせ、経済活動やマーケット環境の正常化が実現しないのであれば、ゼロ金利政策から量的緩和政策への展開といった、2008~09年の世界同時金融危機の際にみられた金融政策環境に近づくことになる。

FRBが利下げに踏み切った以上、今後は世界の中央銀行が一斉に金融緩和スタンスを強化することになる。その際は、政策対応の余地が乏しい日本銀行や欧州中央銀行(ECB)が大きく動く余地は乏しく、特にドル建て金価格が大きく上昇し易くなる。

株価動向次第では、2月28日にみられたような流動性確保のための持ち高調整の動きが、改めて金相場を押し下げるリスクは残されている。金市場では、依然として投機筋の買いポジションが大量に存在している。ただ、世界的な金融緩和圧力の強化は「金利無き世界」への逆戻りを促すことになり、金相場の基調は一段と強化されることになる。1700ドル台へのコアレンジが早期に実現する可能性も想定しておきたい。
(2020/03/05執筆)
【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)中部経済新聞2020年03月09日「私の相場観」

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