パラジウム相場の高騰再開
根強い供給不足への危機感

NYパラジウム相場が過去最高値を更新している。新型コロナウイルスの影響で中国では自動車生産・販売環境に大きな混乱が見受けられ、自動車排ガス触媒用の貴金属需要は下振れリスクが強く警戒される状況になっている。しかし、パラジウム市場では昨年に続く需給ひっ迫化に対して根強い警戒感があり、押し目買い優勢の地合が維持されている。年初の1オンス=1912ドルに対して、2月19日には2700ドルを突破する急伸地合が形成されている。

直接的なきっかけとしては、英精錬大手ジョンソン・マッセイが、2020年のパラジウム需給のひっ迫状態が続くとの見通しを示した影響が大きいだろう。中国や欧州などの排ガス規制が強化される中、ガソリン車用触媒の平均充填量は増加するとみられている。自動車業界では高価なパラジウム消費量を削減するための試みも始まっており、一部自動車メーカーは猿人からの排出物質を削減するための新たなプラットフォーム導入などによって、充填量の削減に成功している。ただ、排ガス規制強化に加えて、欧州では実路走行(RDE)試験の基準対応という新たな課題にも直面する中、自動車触媒用のパラジウム需要の急増傾向には歯止めが掛からない見通しになっている。欧州に関しては、1台当たりの充填量が二桁増になるといった推計もある。

電子部品分野でもパラジウム相場の高騰は問題になっており、金やニッケルなどの代替素材での対応も検討はされている。ただ、技術面で乗り越えるべきハードルが高いことに加えて、仮に代替素材を使う場合には工場のライン変更など大規模な設備投資が要求されることになり、価格高騰がパラジウム需要を抑制する動きは限定される見通しになっている。歯科分野では、パラジウム合金からセラミックなどへの需要シフトの動きも北米を中心に報告されているが、総需要に対する影響は限定される。
パラジウム相場の高騰を受けて、増産計画も増えているが、鉱山会社の合理化の動きから生産量の大幅な伸びは想定されていない。パイプライン在庫の放出なども継続するが、需要拡大圧力をカバーできるだけの供給量を確保できるのかは不透明感が強い。二次供給も昨年に大幅に増加していたため、伸び悩むとみられている。

通常、コモディティ価格が高騰すると、在庫売却の動きが活発化し、相場は鎮静化することになる。しかし、パラジウムに関しては十分な余剰在庫が存在していない。近年はパラジウム上場投資信託(ETF)から現物の引き出しが行われており、ロシアも政府在庫の一部を売却しているとみられる。ただ、価格が高騰しても在庫売却量は限定され、鉱山生産量が早期に大きく上振れすることも想定しづらい。価格が高騰しても供給不足状態の解消目途が一向に立たないことが、異常な高騰相場を正当化している。未経験の需給ひっ迫環境となっているだけに、どこが適正価格なのか、誰も把握できない状態に陥っている。
(2020/02/20執筆)
【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)中部経済新聞2020年02月24日「私の相場観」

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