新型肝炎で金相場は上値追い
世界的な低金利化が加速する

安全資産の代表格である金相場が堅調だ。年初の1オンス=1521ドルに対して、1500ドル台中盤から後半の値位置を保っている。中東の地政学リスクの高まりを受けての買い圧力は瞬間的なものに留まったが、その後は中国を中心に新型コロナウイルスの感染被害が拡大し、世界経済や投資環境の先行き不透明感が強くなっていることが、金相場を強力に支援している。ここにきて、中国政府の専門家トップからは、2月中に感染被害はピークを脱し、4月にも終息している可能性があるといった楽観的な見通しも示されているが、専門家でさえも予見可能性が殆ど存在しない状況が続くことになる。

こうした不安定な投資環境ながらも、米国株は過去最高値を更新しており、投資家のリスク選好性は寧ろ高まっている。有事への対応で2月入りしてからタイ、ブラジル、フィリピン、ロシアなどが相次いで利下げに踏み切り、流動性供給が強化されている結果である。中国に関しても20日の政策金利発表で利下げを実施する可能性もあり、リスク資産に対する資金流入が加速しがちになっている。

このような状況は「バブル」とも批判されているが、株式市場においては実体経済や企業業績よりも金融政策環境が重視されており、過剰とも言える流動性が株価高騰を促している。こうした流動性供給環境は、金融政策の影響を受け易い金相場に対してもポジティブである。このため、通常では株高環境では金相場は値下がりすることになるが、同じ理由で株価と金相場が同時に上昇する珍しい相場環境が創出されている。

米連邦準備制度理事会(FRB)は依然として利下げに慎重であり、パウエルFRB議長も11日の議会証言において見通しの大幅な修正がない限り、現在の金利政策は適切との認識を示している。しかし、マーケットでは早ければ6月、遅くても9月前後には追加利下げが避けられないとの見方を織り込んでおり、米長期金利は株高環境でも一向に上昇せず、逆に低下するような場面も目立つ状況にある。米10年債利回りは1.5~1.6%水準を推移しているが、これは期待インフレ率を下回っており、実質金利はマイナス化している。金相場は昨年に続いて株価やドル相場よりも金利との逆相関を重視する傾向が強くなっており、実質金利がマイナス化する環境において、大幅な値下がり対応を迫られるリスクは限定される。

株高やドル高がドル建て金相場に対してネガティブ材料であることは否定できないが、世界的な低金利環境が維持され、特に実質金利がマイナス化するような状態が続くのであれば、金相場は堅調地合を維持する可能性が高い。この状況で仮に株安やドル安圧力が発生すると、一気に1600ドル台を回復する可能性も十分にある。FRBとマーケットの金利見通しに大きなギャップが生じていることは、今後のマーケット環境に波乱をもたらす可能性があるものの、金相場を取り巻く環境は一段と強気に傾斜している。
(2020/02/13執筆)
【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)中部経済新聞2020年02月17日「私の相場観」

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